Permutative Distorsion “Die Brückenkopf Im Niemandsland”

Permutative Distorsionは、Mainzの実験ロックバンドP.D.が分裂して出来たバンドで、Joachim Stender (ヨアヒム・シュテンダー)とJochen Pense (ヨッヘン・ペンゼ)をコアとし、袂を分かったはずのRalf Wehowsky (ラルフ・ヴェホヴスキー)も参加しているバンドです。StenderとWehowskyは、それまで、Wahrnehmungen (ヴァールネームンゲン)と言うレーベルを運営しており、このレーベルは、独国内でも有名な実験ロック等、実験音楽を主に扱っていました。それで、Stenderがもっと実験ロックをやりたいと思い、袂を分かった訳で、その第一弾EPが、本作品” Brückenkopf Im Niemandsland (ブリュケンコッフ・イム・ニーマンズランド)”となります。その後、１枚のアルバムを出していますが、後が続かず、消滅したようです。反対に、残った人々の方は、グループ名をP16.D4として、更にレーベル名もSelektion (ゼレクチォーン)と改めてて、Frankfurtを拠点に、独ノイズ界で、段々と注目を集めていきます。こちらの方は、以前にバイオグラフィーを書いてありますので、ご参照下さい。
　それで、このEPに参加しているメンバーは、Joachim Stender (Perc, Synth, Vo), Jochen Pense (Perc, Tapes), Ralf Wehowsky (G, Synth), Kasperle Killerpilz (Vln)で、中々、興味深い演奏を本作品に刻み込んでいます。両面共４曲ずつ収録されていますので、各曲について、ご紹介ししていきましょう。

★A1 “Keine Träume”は、グルグルした低音シンセにチープなシンセのメロディと語り口Voから成る小曲です。
★A2 “Brückenschlag”は、モアモアしたシンセに不正確なPercと引き攣ったヴァイオリンとVoから成る曲で、ヴァイオリンの音色がいつまでも残ります。結構、バックはミニマルです。
★A3 “Pioniere Im Einsatz”は、轟々とした不明瞭なノイズ塊をバックにシンセとVoが、ユニゾンのメロディを奏でる小曲です。
★A4 “Permutative Distorsion”は、全然ノレないリズムにピアニカとVoが被り、最後にほんのちょっと違う音が入ってきます。
★B1 “Brückenkopf Im Niemandsland”は、LFOのシンセ音と単調なPercに、シンセのリフとVoが乗る曲ですが、間奏に痙攣するヴァイオリンが唐突に挿入されます。
★B2 “Virtuelle Räume”は、通奏低音のシンセと簡素なPercに、シンセのパルス音が時に挿入される曲で、後半には呪文のような低音Voも聴取できます。
★B3 “Auf Der Suche Nach Der Blauen Lagune”は、またまたウニョウニョしたシンセと太鼓のようなPercに、シンセのメロディ？らしき音とちょっとは語気を強めたVoが入る曲で、フリーキーなGらしき音も入り、ちょっとしたカオスになります。
★B4 “Science-Fiction-Welt”も、通奏低音なシンセ持続音に、何とも頼りないPercと、ラジオから聴こえるようなVoと何とも間延びしたヴァイオリンから成る曲ですが、バックはミニマル風です。

　袂を分かったP16.D4がどんどんマニアックなサウンド・コラージュに向かったのに対して、このPermutative Distorsionは、分裂前のP.Dがやっていた、いわゆる「実験ロック」を推し進めたようなサウンドを目指していたように思えます。ただ、この方向が面白くなるか？と言うと、どうもそうではなかったようで、ここでは、「一種の実験」と言うよりも、「サボりたい大学の実習」のような音楽になっています。恐らく、もっと機材があれば、もっと面白くなったのではないでしょうか？そんなことを感じさせてくれるEPでした。

https://youtu.be/c7JxWCXxoow?si=AoS-EiRJoi4aroUn

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