V.A. “Silberland Vol 2: The Driving Side Of Kosmische Musik (1974-1984)”

0

またまた、やってくれました!良質なジャーマン・ロックのアルバムを再発し、継承を手助けしてくれる独レーベルBureau Bが、Silberlandシリーズの第2段として、1974年〜1984年と言う括りで、”Kosmische Musik (Cosmic Music)”のコンピ・アルバムを2枚組のヴォリュームでドーンっと出してくれました(因みに第1弾は”Psychedelik Musikのコンピでした)。これらの曲をコンパイルしたのは、Gunther Buskies氏で、クラウトロックからNDWまで結構、幅広く集めたのではないでしょうか!それでは、各アーティストと各曲について簡単に紹介していきましょう。
【LP1】
★A1 Harald Grosskopfは、WallensteinやAshra或いはKlaus SchulzeのソロアルバムでDrsを担当しており、1981年〜1983年にはNDWバンドLilli Berlinでも活動している人物で、一方でソロ活動もしており、ファーストソロアルバム”Synthesist”では大々的に電子音楽をやっています。ここでは、1986年作セカンド・ソロアルバム”Oceanheart”からの曲“Eve On The Hill (抜粋)”で、四つ打ちキックにシーケンスと伸びやかなシンセ・メロで、英国ニューウェーブっぽくにも聴こえる。余り独っぽくはないかな?
★A2 Clusterはマルチ奏者Dieter MoebiusとHans-Joachim Roedeliusのデュオで、1971年、Berlinで結成されていますが、シンセポップとアンビエントの両方の源流とされている最重要バンドです。ここでは、1979年作のアルバム”Grosses Wasser”からの曲“Prothese”で、ヘンテコなシーケンスとDrsの同期演奏にGや奇声のような合いの手Voからなります。
★A3 Conrad Schnitzlerも、ご存知、独逸音楽界の切っての奇人変人で、多作家としても知られ、またカセット・コンサートでも有名です。ここでは、メジャーレーベルRCAが1980年に出した12インチEP “Auf Dem Schwarzen Kanal”からの曲“Elektroklang”で、彼らしいミニマルなシーケンスとマシンリズムに変調Voが語りのように乗っかり、時にシンセSEが挿入されています。遊び心に溢れています。
★A4 Youは電子音楽を目指して、1977年にUdo Hanten (Synth)とUli Weber (G)で結成されたデュオで、別名Yourovisionとも呼ばれます。その後、Albin Meskes (Synth)が加入し、最終的にはHagenとMeskesのデュオになりました。また、アルバムには先述のHarald GrosskopfがDrsでも参加しています。ここでは1980年作のファーストアルバム”Electric Day”からの曲“Son A True Star (抜粋)”で、中々アップテンポでミニマルなシーケンスに多層化する泣きのシンセから成ります。ドラムは生Drsかな?
★A5 Thomas Dingerは、お馴染みKlaus Dingerの弟で、Neu!やLa Düsseldorfに在籍していますが、ソロアルバムは”Für Mich”だけです。ここでもそのアルバムからの曲“Für Dich (抜粋)”で、お馴染みのNeu!等直系のハンマービートに簡素なシーケンスとシンセと言う多幸感に溢れたトラックですが、彼は49歳で夭折しているんですよね(何か運命の悪戯っぽい?)。
★B1 Asmus Tietchensは独音楽界の生き証人で、1965年からシンセとテープループで実験音楽を始め、1980年代初頭には、エレクトロ似非ポップをアルバムを出し、またその後は、音響系、アンビエント、インダストリアル、ミュージック・コンクレート等のあらゆる実験音楽作品を出しています。ここでは1982年作”Spät-Europa”からの曲“Bockwurst Á La Maîtresse”で、マシンリズムにフランジャーを効かせたシンセから成り、やや不穏な雰囲気です。所謂、似非シンセ・ポップ!
★B2 Moebius, Plank, Neumeierも、Clusterのシンセ奏者Dieter Moebius、Guru GuruのドラマーMani Neumeier、独音楽界の稀代のプロデューサーConny Plankによる大傑作アルバム”Zero Set”からの曲“Search Zero (抜粋)”で、タイトな生Drsや打楽器を中心に、SE的なシンセやGなどの音が入り、不明瞭なメロディも聴取できます。また少しダブ的ミックスも!音の録音はPlank色が強いです。
★B3 Heiko Maileは豪州生まれの独逸人ミュージシャン/映像作家で、1983年にはシンセポップバンドCamouflageを結成していますが、ソロ活動も行っています。ここでは、未発表曲のセルフ・コンピ・アルバム”Demo Tapes 1984-86”からの曲“Beat For Ikutaro (Tape 52) (抜粋)”で、これまた宅録的シンセ・ウェーブっぽいです。簡素なリズムマシンに線の細いシーケンスとSE的シンセ音です。
★B4 Lapreは1983年に、Peter Preuß (G)とRudolf Langer (Synth)によって結成されたデュオで、独地下音楽界で活動し、1984年に2本のカセット作品(”Flokati”と”Tedan”)を残しています。ここでは、カセット作品”Flokati”からの曲“Flokati”で、こちらも宅録っぽい感じで、低音はBなのかな?ちょっとメジャー寄りなメロディと言うか弾きまくってます。勿論、リズムマシンとシーケンスはミニマルですが。
★B5 Adelbert Von DeyenはBerlin Schoolのエレクトロ・ポップミュージックとPink Floydの音楽、両方に影響を受けて、1970年代にDieter Schützとのセッションを繰り広げてきたBerlin在住のミュージシャンで、ファーストアルバム”Sternzeit"を1978年にSky Recordsから出しています。ここでは、1980年作のサード・アルバム”Atmosphere”からの曲“Time Machine”で、結構、アップテンポで、ミニマルなベースライン及び生ドラムと朗々としたシンセとの対比が面白いです。
【LP2】
★C1 Günter Schickertは、1962年にトランペットを学び、その後、1967年にギターに転向、1971年にはフリージャズをやり始め、1973年にエコーギターのセッションをやり、1976年にAxel StruckとMichael LeskeとでGAMを結成。ここでは、1979年にSky Recordsより出したファーストソロアルバム”Überfällig”からの曲“Puls (抜粋)”で、Gをドラムマシンに合わせてミニマルに弾いており、時にスネアが入ったり、テープ音やリードGが入ったりで、ちょっと異色ですね。
★C2 Faustはもう何も言うことはない程、有名ですが、ここでは、Giorgio Moroderのスタジオで1974年に録音した未発表曲を集めたアルバム”Punkt.”に収録されている曲“Juggernaut”で、これも異色曲で、GとDrsとBのジャムセッションから成ります。パックで唸るようなシンセ音がKosmische Musikなのかな?
★C3 Moebius & PlankもClusterのDieter Moebiusと名将Conny Plankががっしり組んで、1980年にSky Recordsより出たアルバム”Rastakraut Pasta”からの曲“Feedback 66 (抜粋)”で、Gのやや重いリフとミニマルな生Drsから成り、そこにシンセ?G?のメロディが挿入されて、薄らヴォイスも!?
★C4 Roedeliusも超有名なアンビエントの源流とも言われるClusterの片割れです。ここでは、Farfisa製オルガンとRevox-A77 テープエコー、それに借り物のシンセ1台だけで録音した曲“Band 068 3 Bock Auf Rock (Nicht Verwendetes Stück)”で、リズムマシンにエレピ〜チェンバロ的シンセの禁欲的なミニマルな演奏から成ります。
★C5 Serge Blennerは仏生まれで、作曲とハーモニーをMulhouse音楽院で学び、1975年に独に移住、多くの作品を残しています。ここでは、1981年作の彼のセカンドアルバム”Magazin Frivole”からの曲“Phonique”で、再び、力強いマシンリズムに上下するシーケンスと明瞭でメロディアスなシンセがイかすシンセ・ウェーブ的音楽です。
★D1 Moebius & Beerbohm。ClusterのDieter Moebiusとベース奏者のGerd Beerbohmのコラボ作品は2つ(“Strange Music”と”Double Cut”)ありますが、ここでは1982年作のファースト・コラボアルバム”Strange Music”からの曲 “Subito”で、いきなり生Drsの強烈なビートとシンセ音で始まり、弾けています。簡素なBのリフも聴こえます。
★D2 Tyndallは先述のLapreの片割れRudolf LangerがJürgen Krehanと1980年から始めたデュオで、当時は典型的な電子音楽と言う認識で、4枚のアルバムを残しています。ここでは、1980年作ファースト・アルバム”Sonnenlicht”からの曲“Wolkenlos (抜粋)”で、またまたアップテンポな宅録シンセウェーブ風な曲です。ベース・シーケンスとマシンリズムに、大胆で美しいシンセ音がオーロラのように被っています。
★D3 Pyrolatorもご存知だと思いますが、本名Kurt Dahlkeで、Der Planの頭脳にしてシンセ奏者で、ソロアルバムもコンスタントに出しています。ここでは、1981年作セカンド・ソロアルバム”Ausland”からの曲“180°”で、如何にもPyrolator的なユーモアに満ちたマシンリズムとシーケンスとシンセのリフから成るアップテンポな曲です。また女性の喘ぎ声入りです。
★D4 Die Parteiは、The WirtschaftswunderやSiluetes 61で活躍しているNDW界の奇人変人Tom Dokoupilと画家/写真家/サウンドアーティストのWalter Dahnのデュオで、ここでは、1981年作の唯一のアルバム”La Freiheit Des Geistes”からの曲“Guten Morgen In Köln”で、リズムマシンとベース・シーケンスとGからなりますが、そのバックではかなり無茶なオルガンも聴取できます。実はミニマルですね。
★D5 Deutsche Wertarbeitは、1970年代から活動している独プログレ・バンドStreetmarkの女性シンセ奏者/Kbd奏者のDorothea Raukesのソロユニットで、ここでは、1981年にSky Recordsより出た唯一のアルバム”Deutsche Wertarbeit”からの曲“Auf Engelsflügeln (抜粋)”で、心地よいシーケンスと包み込む分厚いシンセ音に、リズムマシン音が加わっていき、やがてピアノの調べや合唱(?)も! 

 聴き通してみて、個人的には、面白かったのですが、レーベル側が意図した”Kosmische Musik”への架け橋になっているか?と言うと、ちょっと違うんじゃないかな?とも思えました。確かに、電子音楽系クラウトロックからNDWまでカバーしていますが、そのミッシングリングとなるkey groupは余りはっきりしていないようです。しかしながら、この時期の独の音楽シーンを俯瞰できたと言う意味では大変面白かったです❗️なので、プログレとかニューウェーブとかのジャンル分け関係無しに、シンセとかによる電子音楽の成り立ちに興味がある方は是非一聴してみて下さい‼️楽しめると思いますよー。

LP1:
A1 Harald Grosskopf “Eve On The Hill (抜粋)”
A2 Cluster “Prothese”
A3 Conrad Schnitzler “Elektroklang”
A4 You “Son A True Star (抜粋)”
A5 Thomas Dinger “Für Dich (抜粋)”
B1 Asmus Tietchens “Bockwurst Á La Maîtresse”
B2 Moebius, Plank, Neumeier “Search Zero (抜粋)”
B3 Heiko Maile “Beat For Ikutaro (Tape 52) (抜粋)”
B4 Lapre “Flokati”
B5 Adelbert Von Deyen “Time Machine”
LP2:
C1 Günter Schickert “Puls (抜粋)”
C2 Faust “Juggernaut”
C3 Moebius & Plank “Feedback 66 (抜粋)”
C4 Roedelius “Band 068 3 Bock Auf Rock (Nicht Verwendetes Stück)”
C5 Serge Blenner “Phonique”
D1 Moebius & Birthday “Subito”
D2 Tyndall “Wolkenlos (抜粋)”
D3 Pyrolator “180°”
D4 Die Partei “Guten Morgen In Köln”
D5 Deutsche Wertarbeit “Auf Engelsflügeln (抜粋)

LP2: D2 Tyndall “Wolkenlos (抜粋)”
https://youtu.be/lvg8SG7Dwm0?si=I4GN2uGBHHXp-UUL

[full album]
https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_kaYxQSGAS-rEFQtHmQrMggph75CjOIW_I&si=oukTyY_DMngcouPc

#VariousArtists #SilberlandVol.2 #TheDrivingSideOfKosmischeMusik #1974-1984 #German #Krautrock #NeueDeutscheWelle #Electronic #CosmicMusic #HaraldGrosskopf #Cluster #ConradSchnitzler #You #ThomasDinger #AsmusTietchens #MoebiusPlankNeumeier #HeikoMaile #Lapre #AdelbertVonDeyen #GünterSchickert #Faust #Moebius&Plank #Roedelius #SergeBlenner #Moebius&Beerbohm #Tyndall #Pyrolator #DiePartei #DeutscheWertarbeit

Default