David Cunningham “Grey Scale”

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今まで散々紹介してきたFlying LizardsのコンポーザーDavid Cunninghamのソロとしてはファーストに当たるのが、このアルバム”Grey Scale”です。今回は2023年に再発された盤を紹介しますが、これが最初にリリースされたのは、約45年前の1977年でした。彼は、既に、Flying Lizardsでポップ・ミュージック界ではある程度の成功を収めていましたが、ソロも結構、ぶっ飛んだ内容になっています。簡単に彼のバイオグラフィーを書いておきます。Cunninghamはアイルランド生まれで、Londonで育ち、Flying Lizardsのシングル”Money”で大ヒットを記録していますが、現在は、ニューキャッスル芸術大学で、ファイン・アートのAHRB研究員をやっています。彼の作品は、スタジオでの作業及びループと音の加工に特化しており、それはポップ・ミュージックから画廊でのインスタレーション(TV, 映像、現代ダンス)までに及び、数多くのヴィジュアル・アーティストとのコラボもやっています。1976年に、Cunninghamは、本作品でもあるファースト・ソロ・アルバム”Grey Scale”をリリースして以来、作曲家/プロデューサーとして活動してきており、それは、ロック・グループ(This HeatやOwada)から即興演奏家(David ToopやSteve Beresford)或いはPeter Greenaway作の映像作品のMichael Nymanによるサントラとかまで、多種多様で、Ute Lemperともコラボしたりしています。また、 Ian Spinkから依頼された”Canta”は、1980年代を通して、彼がやってきたダンスとパフォーマンスの一連のシリーズてあり、またそれ以降もGoro Namerikawaからも同様の依頼をされています。Bill T. JonesとArnie Zaneやフィンランドの振付師ともTiina Huczkowskiともコラボをやっており、同様に、John Cage, Kathy Acker, Michael Nyman, Peter Gordon, Pan sonic, Michael Giles, Scannerともコラボを行なっています。映像やテレビの音楽では、Ken McMullenによる”Zina”とか”Ghost Dance”では、Michael GilesとJimie Muirともコラボをやっています。更に、テレビ番組でのヴィジュアル・アーティストとのコラボでは、John Latham, David Hall, Stephen Partridge, Bruce McLeanらと一緒に作業しています。それに関係する作品には、インスタレーション用のサウンドの作製や加工もやっており、特に、Sam Taylor-Wood, Susan Hiller, João Penalva, Gillian Wearingらとのコラボも行なっています。1993年以降、Cunninghamは、1998年のシドニー・ビエンナーレでの作品”The Listening Room”のように、リアルタイムで音響を操作する一連のインスタレーションを開発してきており、またロンドンの確立美術館でのThe Tate Triennial of Contemporary British Artでの2つのインスタレーション作品"Days Like These"や、もっと最近では、東京ICCやバーミンガムIkonでのインスタレーションも手掛けています。
 と言うのが、David Cunninghamのバイオグラフィーになりますが、その最初のソロ・アルバムである”Grey Scale”では、エラー・システムと言う手法を用いています。これは、演奏者が反復するフレーズを弾き続けて、もし、ミスをしたら、そのミスをそのまま直さないで弾き続けると言う手法で、これによって、演奏者自身が制御不能になるまで、演奏される音を変化されていくと言うコンセプトに基づいています。つまり、故意にミスをして音を変化させる訳でないとのことです。一言で言うと、エラーをし続けると言うことです。この作品ては、水とギターの音は、この演奏過程によく似ているが、それは自動的で、使用される機器によって固有の音像を作り出せるとのことです。しかしながら、このエラーシステムは、実際に演奏してみると、意外に難しかったようです。B面のB1“Ecuador”とB6”Bolivia”では、11221111223332112222331112332233331122232 と言う数のシーケンスを3回繰り返します。また
B2”Water Systemised”とB4”Guitar Systemised”では、ロング・テープ・ディレイも使われており、意図的にミスを誘発する曲になっています。なお、このエラーシステムは、1976年にMaidstone College of Artに在学中に思い付いたらしいです。まあ、そんな難しいことは考えずに聴いてみていきましょう。楽曲の紹介には、演奏者のクレジットも書いておきます。
A1 “Error System (BAGFGAB)” : David Cunningham (Piano, Glockenspiel, Synth, Perc): ここでは1人で多重録音していることもあって、どんどんミスが起こり、更にはテンポまでズレていきます。
A2 “Error System (C Pulse Solo Recording)”: David Cunningham (Vln, Piano, B, Glockenspiel): ここでは、更に単純なCの音だけを演奏しての多重録音であり、最早合っているかどうかも不明です。
A3 “Error System (C Pulse Group Recording)”: Stephan Reynolds (Glockenspiel), Alan Hudson (B), Derek Roberts (Piano), David Cunningham (Vln): A2を各パート別の演奏者でやっていますが、やはりテンポとかは合いませんね。どんどんズレていく様が面白いです。
A4 “Error System (E Based Group Recording)”: Alan Hudson (Perc), Michael Doherty (Perc), Derek Roberts (Glockenspiel), Stephan Reynolds (Piano): これまた、合っていません!が、しかし、途中で合っているようにも聴こえるから不思議です。
A5 “Error System (EFGA)”: David Cunningham (G, Synth, Glockenspiel): これまた1人での多重録音なので、テンポはバラバラですが、何となく「曲」っぽく聴こえますね。
B1 “Ecuador”: David Cunningham (Perc, Glockenspiel, Synth, Recorder): この曲も1人多重録音ですが、先述のように多少の規則性があるようですが、やはり崩れていきます。
B2 “Water Systemised”: David Cunningham (Tape Recorder, Water): テープに録音した様々な水の音を重ねており、具体音である為か、不自然な感じはしませんが、何だか生き物のような音楽になっています。
B3 “Venezuela 1”: David Cunningham (Piano, Vln, G, Perc): 何とも「下手」な演奏になっています。それぞれのパートは、固有のフレーズがあるようです。
B4 “Guitar Systemised”: David Cunningham (Tape Recorder, G): これも、全く同期していない「ヘタウマ」な曲のようにも聴けますね
B5 “Venezuela 2”: Derek Roberts (Glockenspiel), Stephan Reynolds (Synth), David Cunningham (Perc)も同様ですが、Percが何とかテンポ・キープしていますが、その他はバラバラと散らばっていきます。
B6 “Bolivia”: David Guitar Systemised (Piano, Perc, Synth, Strings, others): もピアノが比較的しっかりしているので、何か1人だけ上手いピアニストがいるグループの演奏のようにも感じます。
 と言う訳で、David Cunninghamのソロ・アルバムでしたが、あの1980年代のヘタウマと言われた日本の漫画、特にガロとかの作品を思い浮かべました。それと、大阪のスーパーボールって言うバンドとか。どうしてもテンポとかが合わないのですが、それがその時代の「新たな価値観」みたいなものを現出させているようで、時代背景などを考えると興味深いです❗️あと、全体の雰囲気は、Flying Lizardsとも共通点があるように感じました。

A1 “Error System (BAGFGAB)”
A2 “Error System (C Pulse Solo Recording)”
A3 “Error System (C Pulse Group Recording)”
A4 “Error System (E Based Group Recording)”
A5 “Error System (EFGA)”
B1 “Ecuador”
B2 “Water Systemised”
B3 “Venezuela 1”
B4 “Guitar Systemised”
B5 “Venezuela 2”
B6 “Bolivia”

[original full album]
https://youtu.be/NYEIjLj85oM?si=aEsbElXSJoRToMwK

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