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Saboten (サボテン) “Floor Et Satie (フロアとサティー)”
サボテン、覚えている方はいるでしょうか?1980年代初頭の日本で、「サティーをエレキバンドで弾いたらどうなるか」を実践したデザイン/美大生の女子4人によるロックは、当時は衝撃的であった/衝撃的な程「下手な」バンドであったと思います。彼女らは、1982年にはファースト・アルバム”サボテン”を突然段ボールのレーベルFloorから出し、その後、1984年に、自身のレーベルSabot RecordsからEP “いつもある”を、1992年にもSabot Recordsからセカンド・アルバム”目覚める”を、2002年にはいぬん堂からサード・アルバム”つづく夢”をリリースしています。とDiscogs上は記載されていますが、コンピ等への参加や海外でのリリースなどを含めると録音物はもっとあるようです。実は、英国を代表する即興Sax奏者Lol Coxhillとの共演(その一部は、仏NATOのErik Satieのカバー集にも収録)や、英国出身米国在住のFred Frithによるプロデュースでのコンピ・アルバムへの参加も果たしており、また、突然段ボールの故蔦木栄一主催の日本カセット・テープ・レコーヂングからも、彼女達の自信作でもあるカセット作品”Let’s Satie”を出しています。と言う訳で、このセルフ・コンピ・アルバムが出たのが、もう既に10年前な訳ですが、私自身は何故、このアルバムを購入する気になったのかは忘却の彼方です。なので、知識の整理も兼ねて、ライナーノーツなどから、サボテンのバイオグラフィーを先ず書いてみます。元々は、法政大学哲学科在学中に絵の学校にも通っていた松本里美と武美大デザイン科在籍の田邊厚子が知り合って、お互いが先ず、楽器(松本はGを、田邊はDrs)を購入したことから端を発します。その後、田邊の中学時代の同級生で、日芸彫刻科在籍の宮川いづみがBで加入。3人共、ピアノは弾けますし、楽譜の読み書きもできましたが、宮川の加入で、彼女が弾くErik Satieの”Sports Et Divertissements (スポーツと気晴らし)”に触れ、Satieをピアノじゃなくてエレキバンドで演った方が、Satieの面白さに繋がると決断し、分担譜面割りを始めます。その後、早稲田大の風間正江 (G)と知り合い、4人組として、オリジナルのインスト曲も作り始めます。この頃はまだバンド名も無かったようですが、宮川の知り合いの突然段ボールの故蔦木栄一にデモテープを聴かせたところ、偉く気に入られ、1981年の突段企画のオールナイト・コンサートに出演を誘われ、その際にバンド名がサボテンになったとのことです。その時には、サボテンは通常の4ピース・ロックバンドの形態でしたが、全ての楽器をメロディ楽器として演奏、また歌詞も松本が書いていたようです。その後、先述のように、1982年にファースト・アルバムをリリースしています。当時の彼女達の演奏は、ストイックに楽曲をプレイしているのですが、時にはステージに背を向けて輪になって演奏したり、スカスカの音や変拍子でノン・グルーヴの特有のリズム感などを体現しており、The SlitsとかThe Raincoats或いは、ESGやCaptain BeefheartやThe Shaggsなどが引き合いに出されていました。しかし、彼女達は初めからコピーバンドでは無かったので、突然変異だったのでしょう。ただ、当時は下手くそバンドと揶揄されていたようですが、後のオルタナ/Lo-Fiバンドの先取りをしていたのかもしれませんね。その後、風間が脱退し、3人で録音したのが、EP “いつもある”で、更に、田邊が脱退し、代わりにグンジョーガクレヨンの宮川篤がDrsで参加して、2002年にアルバム”つづく夢”を出しています。
と言うのが、サボテンのバイオグラフィーになりますが、本作品では、過去の音源をKoichi Hara氏がミックスし直して、リマスタリングしており、オリジナルとはまた異なった感触に仕上がっているとのことです。それで、先ず各面のクレジットについて、先に表記しておきます。LP1はファースト・アルバム”サボテン”全曲を収録しており、メンバーは、松本里美 (G, Lead-Vo, Back-Vo), 宮川いづみ (B, Synth [Korg]), 田邊厚子 (Drs), 風間正江 (G, Lead-Vo & Back-Vo [A1-A3, B1-7])で、ゲストに蔦木俊二 (G [A1, A2, A4, B4], Perc [B1])が参加しています。LP2C面は、カセット作品”Let’s Satie”からで、メンバーは、松本里美 (G, Harmonica), 宮川いづみ (B, Piano), 田邊厚子 (Drs), 風間正江 (G [C3, C5])で、ゲストにLol Coxhill (Sax [C3, C5])が参加しています。録音場所/日時は、ややこしいですが、C1前半とC3後半が1992年録音で、C1後半が1985年4月4日渋谷屋根裏で、C3前半が1982年録音で、C2とC4が1983年9月29日早稲田大学で、C5が1981年荻窪Misty Music Studioでの録音となっています。なお、C面は、C3前半”Enteraku”を除いて、全てErik Satieの曲です。LP2D面の内、D1とD2はEP “いつもある” (1984年: Studio 246)からで、D3はアルバム”Non Position” (2002年: Gok Studio[1984年録音])からで、D4とD5は、アルバム”目覚める”(1992年作: Studio Parkside)からコンパイルされており、メンバーは、松本里美 (G, Vo), 宮川いづみ (B, Synth [Korg]), 田邊厚子 (Drs)となっています。D3はFred Frithのプロデュースです。また、LP1A/B面とLP2D面の内、D2だけがErik Satie作曲で、残りは全てオリジナル曲です。では、各曲を簡単に紹介していきますね。
LP1: From “Saboten”(1982)
A1 “エメラルドの山彦 (Emerald Echo)”は、そんなに下手だとは思わなかったです。Voも元気一杯だし。
A2 “ヘビ使いのうた(The Snake Charmer's Song)”は独逸語/日本語の歌詞と曲の構成が面白い!
A3 “低い椅子 (The Low Chair)”では、シンセの単音弾きのイントロから、何だか不思議な構成とミックスの曲が始まります。Voもキュート。
A4 “余計な予感 (Useless Foresight)”でも同様に、GもBもDrsも歌っており、曲の構成も緻密で秀逸!インスト部分が特に良い。
B1 “Accel”は、一転、何だか各楽器が緩〜く崩しての演奏によるインスト曲です。テンポも段々速くなります。
B2 “日の丸 (The Rising Sun)”も インスト曲で、それぞれの音の構成とミックス・バランスが不安定です。
B3 “エテンラク (Etenraku)”は、元は雅楽の演目「越天楽」で、ダブっぽいけど、レゲエ調ではないファットなBとそれぞれが主張を繰り広げるインスト曲です。
B4 “Knee Guitar”も、Bに導かれ、何かベンチャーズっぽいインスト曲ですが、決定的に何かが違います!
B5 “彼女 (She)”では、シンセの大胆な導入もあるのですが、各人が勝手に弾いているような錯覚に陥ります。
B6 “ヨロコビ (Pleasure)”は、てんでバラバラな印象のインスト曲で、即興では?と勘違いしそう!
B7 “馬(Horses)”は、本作では珍しく、Bのリフが延々と刻まれるインスト曲で、意外な一面です。
LP2: From “Let's Satie!” (1992)
C1 “食欲をそそらないコラール~インプロヴィゼーション (Choral Inappétissant/Unappetizing Chorale – Improvisation)”は、ハーモニカのイントロから、いきなりフリーキーな即興演奏に移行していく短い曲です。
C2 “ブランコ (La Balançoire/In A Swing)”では、規則的なリズムの上に、Coxhillの素っ頓狂なSaxに乗りますが、フリーキーなGやのほほんとしたピアニカが良い塩梅です!
C3 “エテンラク~海水浴 (Etenraku – Bain De Mer/Sea Bathing)”は、同じ曲とは思えない程のカッコ良いビート曲に連続して、ピアノの演奏へと交代。
C4 “競馬 (Les Courses/Race)”は、B7をモチーフにしたような一定のBのリズムの上に、CoxhillのSaxが跳ねていますが、中盤のGとの掛け合いは必聴!しかし、これ、本当にSatieの曲か?
C5 “タンゴ (Tango)”は、ラジカセ録りなのか、荒い印象ですが、割とBがしっかりしてます。そして段々テンポは速くなります。
その他:
D1 “未来の記憶 (Memory Of The Future)” (1984)では、最早、意味不明なインスト部分を含んで、落ち着いたVoの聴ける楽曲になっていますが、やはり全体の構成は凄いです!
D2 “ゴルフ (Golf)” (1984)は、Satieの曲とは思えない位、ナンセンスかつ複雑な曲構成になっています。これは必聴!
D3 “箱庭 (Miniature Garden)” (1984)は、複雑に聴こえる曲構成に漸く演奏能が追いついてきた感もあり、拍子の変化や転調が凄いです。そこにキュートなVoも。
D4 “自転車 (Bicycle)” (1992)は、アンビエントかつミニマルな曲で、Voのメロディは全くフリーです!
D5 “島の生活(Island Life)” (1992)も、Voの無い部分では、各パートは全くフリーの如く演奏しています。
ふーぅ、やっと本作品をレビューしてみました。個人的には、インスト曲の方が好みかな? とにかく、演奏能力が乏しいにも関わらず、曲の構成は複雑で、これを全部譜割して演奏しているのか❗️と思うとちょっとビックリしてしまいます。Satieの曲自体よりも面白いかも!
LP1: From “Saboten”(1982)
A1 “エメラルドの山彦 (Emerald Echo)”
A2 “ヘビ使いのうた(The Snake Charmer's Song)”
A3 “低い椅子 (The Low Chair)”
A4 “余計な予感 (Useless Foresight)”
B1 “Accel”
B2 “日の丸 (The Rising Sun)”
B3 “エテンラク (Etenraku)”
B4 “Knee Guitar”
B5 “彼女 (She)”
B6 “ヨロコビ (Pleasure)”
B7 “馬(Horses)”
LP2: From “Let's Satie!” (1992)
C1 “食欲をそそらないコラール~インプロヴィゼーション (Choral Inappétissant/Unappetizing Chorale – Improvisation)”
C2 “ブランコ (La Balançoire/In A Swing)”
C3 “エテンラク~海水浴 (Etenraku – Bain De Mer/Sea Bathing)”
C4 “競馬 (Les Courses/Race)”
C5 “タンゴ (Tango)”
その他:
D1 “未来の記憶 (Memory Of The Future)” (1984)
D2 “ゴルフ (Golf)” (1984)
D3 “箱庭 (Miniature Garden)” (1984)
D4 “自転車 (Bicycle)” (1992)
D5 “島の生活(Island Life)” (1992)
[LP1 “Saboten”オリジナル・アルバム]
https://youtu.be/LVTLtkhHyts?si=copfvux2-5jFCZik
LP1 A1 “エメラルドの山彦 (Emerald Echo)”
https://youtu.be/sRdv-LWbvBE?si=iAmDeUVu1o9YnMG4
LP2 D2 “ゴルフ (Golf)” (1984)
https://youtu.be/JxOag0Q4m_s?si=s7uAkIBAOLpUcZy2
LP2 D3 “箱庭 (Miniature Garden)” (1984)
https://youtu.be/fZvi00MSyDQ?si=XvB0ef_ZZ4XXr5F_
LP2 D4 “自転車 (Bicycle)” (1992)
https://youtu.be/GFMVDjlMbUY?si=5iTS_eqwnj9jAyUi
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4AD
2023/11/01 - 編集済みオリジナルLP バナナレコードで売却しました。
その頃はあまり貴重品扱いされてませんでしたが 僕の好みではなかったので後悔してません。
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Dr K2
2023/11/01まあ、私も好みではないのですが、取り敢えず聴いてみないとと思って取り上げました。
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