050 蒼鉛

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※今回は科学のお話が少々。厳密な意味で言うと間違っている内容もあるかもしれません。ご容赦を!それでは…

学生の頃に集めたかった、ただどうしても手が出せなかった物…。

それは「鉱物」

私が鉱物に惹かれたのはその形や豊かな色彩、目に見えない時間を大きさで感じさせてくれるからだ。

当時の私は収集したい欲求(欲に負けて何点か購入した)を抑えるために図書館で鉱物の写真集をよく借りていた。水彩の練習も兼ねてそれらを模写し、石達の持つ複雑でその深い色彩に静かに感動した。
その鉱物の本の中でも個人的に異物として捉えていたのが…そう「ビスマス結晶」だ。タイトルの蒼鉛とは自然ビスマスの日本名だそうだ。

その異質さは大きいものになると四面が規則的な段々で、なによりもその色彩が複雑で色の移り変わりの部分は無限のグラデーション。意識を引きずり込まれそうになる。まるでラヴクラフトの世界からこちらに吐き出されたか…等と思っていた。

さて、そんな変なものを目にしてスルーできるはずもなく文明の利器を利用して知識を収集すると…

ビスマスとは以下のような特性を持つらしい…と書こうと思ったが高難度の呪文だったので興味がある方はwikiや専門書で知識を得てほしい。
ただ、その難しい呪文の中で私にも解読できる部分があった…「自宅で作成できる」

え?自宅で作れる?こんな美しいものを?

そう、自宅でチップを溶かして結晶化させることができるのだ!テンションが上がってきた!
ビスマスはチップ状で材料屋で売っていて、それを溶かすとその形と色合いが図鑑にあるような結晶となる。
そもそもビスマスの融点は271.3度、大体ガスコンロの温度が1700度。なるほど溶けます。
さて、どうしても結晶を作ってみたい…実際に結晶を傍においておきたい私はすぐさま材料を揃え始めた。
まずはビスマスのチップを手に入れねば。チップはwebの材料屋で購入するが…このチップ非常に高い。ただ量は結構必要なので当時は1~2kgは購入した。(1万円以上はしたと思う、学生には痛い出費…)尚、形はまるでアイスのピノの様な形をしている。溶ける様もピノ。
お次は耐熱性のステンレスのカップをハンズで購入。そのカップ※1を素手で持つことは出来ないので固定用、そして溶けたビスマスの中から結晶を取り出すためのペンチを購入。
※1 カップは取っ手が無いものをおすすめ。取っ手がビスマスの重さに耐えられず大惨事を引き起こす恐れ有り。
基本の機材はこれだけで充分。(私が作業した時は)
材料、機材を揃えた私はお楽しみ…結晶化の作業へ。
カップにピノ…ではなくビスマスチップをいれてコンロのごとくに配置。
火をつけて数分でチップはドロドロに溶け、カップから立ち上る熱と上昇気流を顔面に感じる。あぁ、これは非常に危険…と思いつつ火を止める。
熱を冷ましつつ表面に膜がはるのでそれを取り除く。
少しして固まってない液体の部分にゆっくりとペンチを差し入れると…ペンチの先が中でコツッ、と結晶に当たるのを感じる。
それを取り出すと…結晶が出来ている、出来ているぞー!!っと一人キッチンで声を上げて喜んだ。
中から同じ要領で次々と結晶を引き上げる。
出来た結晶で気に入ったものと気に入らないものを選別し、入らないものはもう一度カップへ。(熱すると再度溶けて素材となる)
出来たものをしばらく冷まして、ソファに座り改めて結晶を眺める…あぁなんと美しいのだろう。あのカップの中で金属が熱で溶け冷え固まる事で姿を現す…酸化した事でできる膜の色のなんと美しい。
その日、出来た結晶は小さかった。大きいものを作りたかったので二日に分けて作業をする事に。
結論から言うと、図鑑のような見事な大きな結晶は出来なかった。
機材のカップが小さい事やチップの量の問題もあると思う。
しかし、その時はひとまず満足また近いうちに改めて挑戦だ!と思ってはや7年以上経ってしまった。
こうして思い出を文字に起こしつつ、パソコンの近くにあるラップのされたカップをみる。冷え固まったビスマスの塊が底にある。
日々の忙しさや疲れを理由に動かない自分がいる…また改めて自分のやる気に火を入れねばと思った。

ちなみに出来上がった結晶で気に入ったものは後日、ハンズで小さいガラスシリンダーを購入。綿を底に入れてビスマスを落した。コルクにキーホルダーのチェーンを付けて今でも私の目の前で揺れている。

この思い出でビスマスとは何ぞや?と思われた方。大きな結晶を作るためにはどうすればよいかを自由研究として研究されるのはいかがだろうか?とワナナキは季節違いの提案をしてみるのであった。

※ビスマスの結晶を作るには火を使います。更にドロドロに溶けたビスマスは非常に危ないので、もしやろうとされている方はweb等で調べて注意点を勉強してから実施されることをおすすめします。

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