Muslimgauze “Lo-Fi India Abuse”

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今回は、独逸/NDWから離れて、久々に英国の孤高のアーティストだったBryn Jonesのソロ・プロジェクトMuslimgauze (本来は「ムスリムゴーズ」だが、日本では「ムスリムガーゼ」と呼ばれています)のアルバム”Lo-Fi India Abuse”を紹介します。今回、購入した盤は再発なんですが、元々は、Bryn Jonesの死ぬ前に録音され、他界した年の1999年(正確には他界後約半年にリリース)に米レーベルBSI Recordsからリリースされた作品となります。Muslimgauzeのバイオグラフィーは、以前も書いていますので、ここでは省略させて頂きますが、私はこの時期のMuslimgauzeを聴いていなかったので、購入した次第です。そして、本作品では、2000年前後に活動していたEzra Erecksonを中心としたダビーな米国ユニットSystemwideが元トラックを提供しており、この1999年頃に両者のコラボ作品をBSI Recordsから数作リリースしています。しかしながら、多分、Jonesの健康状態や他界等を考えると、恐らくJonesの音源を使用・加工しての音楽制作の結果だと思います(実際、Jones死後も、Muslimgauzeの[未発表]作品は今までも多数リリースされてきていますから)。まぁ、実際のところは不明ですが、本作品では、元トラックの提供として、ちゃんとSystemwideの名前がクレジットにありますから、この時期はお互いに蜜月だったのでしょう。なお、録音自体は、Jonesが1998年に行っており、数曲で、Systemwideのアルバム”Sirius”からのリミックスを行っているとのことです。それでは、エスノ・インダストリアルとダブの会合作品”Lo-Fi India Abuse”の各曲を紹介していきます。

★A1 “Antalya” (3:21)は、延々と続くタブラの催眠的なリズムとその奥で聴こえる中近東の歌や雑踏の音から成る曲ですが、所々にダブ的ミックスが施されているのが特徴で、曲が突然カットアウトされ、針飛びか?とビックリします。
★A2 “Romanic Abuse” (2:08)では、いきなり逆回転から始まりますが、直ぐに正回転のリズムとのせめぎ合うミックスがなされています。
★A3 “Valencia In Flames” (3:30)は、珍しくBやVoとリズムから成る曲の断片が実験ダブ的にミックスされた曲で、BラインがMuslimgauzeっぽくないですね。それに、元音はズタズタにカットアップされています。
★A4 “Al Souk Dub” (6:13)は、いつもの中近東の打楽器の催眠的リズムにBが入った曲ですが、やはりタイトル通りダブ的ミックスが大胆に施されており、また、微かにVoやループ低音やテープ音も加えられています。
★A5 “Catacomb Dub” (6:06)も、中近東の打楽器の催眠的リズムとそれらの逆回転や電子音らしき効果音等から成る曲ですが、やはりこの曲でもかなり実験ダブ的ミックスが施されており、曲自体はズタズタです。
★B1 “Dust Of Saqqara” (7:57)は、どちらと言うと余り中近東っぽくない低音Bラインとリズムマシンの延々と続くサウンドから成る催眠的な曲ですが、突然、ディレイも掛けずにカットアウトされたり、元々使われていた打楽器の音がインしてきたりと複雑なミックスが為されています。
★B2 “Android Cleaver” (4:25)は、やはり中近東の打楽器のループ音とVoのループから成る曲ですが、特に、Voのループ音の方は相当いじくり回されてミックスされています。
★B3 “Dogon Tabla” (3:28)は、タブラによるリズムとシンセらしき電子音のメロディから成る曲で、やはり実験ダブ的ミックスが冴えています。シンセのメロディがやけに美しいのが際立ちますね。
★B4 “Nommos' Afterburn” (6:22)は、かなり攻撃的な打楽器のリズムとそのバックに聴こえるシーケンスから成る曲ですが、打楽器の方はカットアウトされたり、また、途中から声明のような声が挿入されてきたりと、かなり混沌とした出来になっています。

 ここで言う「ダブ」とはかなり実験的な手法を指し、曲のEQ操作やカットイン/カットアウト、ディレイの多用や誤用、フェイダーの操作等から成り、原曲をズタボロにしてしまう程、狂暴なミックスのことを意味しています。それは、Systemwideによる意図的なものだと思いますし、この作品の特徴とも考えられます。多分、New Age Steppersなんかよりもかなり激しいダブ・アルバムです。また、A3やB1なんかはSystemwideのトラックを使っているのではないでしようか? 後、ちょっと気になったのは、この頃ってイスラエルとアラブ諸国(特にガザ地区)との関係が安定化しつつあった時期なんですよ。今はイスラエルのガザ地区への攻撃とか、かなりセンシティブな問題を抱かえたいますが、亡くなったBryn Jonesがもし現状までの経緯を見ていたら、どう感じるか?また今もMuslimgauzeのファンや作品を出し続けているレーベル等はどう感じているか?が知りたいところですね。まぁ、それとは別に、このアルバムはやはり、Systemwideによる実験ダブ的ミックスが全編に冴え渡っている高水準の作品だと思いますよ!ダブ好きな方は是非聴いてみて下さい!

https://youtu.be/AaNArQLos3o?si=JJc06sKcpcwH0tm0

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