Frieder Butzmann “juHrop - Szenen und Arien aus einer Oper in klingonischer Sprache”

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今回は、Berlinの天才の1人Frieder Butzmannの新作” juHrop - Szenen und Arien aus einer Oper in klingonischer Sprache”をご紹介しましょう。Frieder Butzmannの略歴は既に書いてありますので、そちらをご参照下さい。それで、今回は、日本でも「宇宙大作戦」としてTV放送されていた「スタートレック」に出てくる武闘派民族クリンゴン(Klingon)をテーマにした作品になっており、制作も1996年〜2001年に及ぶ電子実験歌曲集のなっています。また、この作品は、2009年にはラジオでも放送されており、ヴォーカルもDiamanda Galás, David Moss, Margarete Huber, Udo Scheuerpflug, Wu Jiangが担当していると言う豪華さです。私自身は「宇宙大作戦」の頃は、TVで観ていたのですが、その後は観ておらず、余り詳しくはないのですが、クリンゴン人についてちょっと調べてみました。元々、好戦的な民族であるからか、母星クロノスを中心に広大な領域を従えるクリンゴン帝国を成しており、クリンゴン人は、何よりも自分の一族・一派・仲間の「誇りと名誉」に拘るらしいので、死を恐れず、戦いに挑む民族らしいです。また、23世紀までは、地球人と敵対していましたが、24世紀には同盟を結んでいます。どうも、初回の放送でも「クリンゴン帝国の侵略」の回として最初に出ており、地球人のカーク船長とクリンゴン人のコール司令官がオルガニア星をめぐって争うエピソードがあります。その後は、高い知能を持った勇猛果敢で誇り高い戦士として登場することになっています。まぁ、クリンゴン人については、ここまでにしておきますので、もっと知りたい方は、Wikiで調べて下さい。
 それで、本作品は、その副題「クリンゴン語のオペラのシーンとアリア」とあるように、多分、クリンゴン語での歌曲を先述のヴォーカリスト達が歌っています。また、作曲はButzmannがほぼ1人で行っているようですが、B3とC3だけはButzmannとKlaus Krügerの共作となっています。アルバム・タイトル”juHrop”も曲名もクリンゴン語(まるでMagmaのコバイア語みたいですね)で表記されています。また、バックでは、モアビット・モテット合唱団がサポートしています。後、このボックス・セットは、250部限定で、かなり立派なセットで、ナンバリングも記されており、歌詞もクリンゴン語、独逸語、英語で訳が付いており、また美しいアートワークも数枚LPサイズで付いています。それでは、各曲について紹介しつつ、どんな筋のお話し(オペラ)かも解説していきます 。

◼️LP1
★A1 “Si Xiang” (3:02)は、第一幕の始まりで、Wu Jungが歌う郷愁の歌で、地球に住んでいた中国人が、24世紀にタイムスリップし、しかもクリンゴン星にワーブしてしまい、それで、その中国人女性が地球のことを思って歌っているのだとか。
★A2 “veng wa'DIchDaq” (3:49)は、モアビット・モテット合唱団とDiamanda GalásとDavid Moss及びButzmannによる壮大なスケールのコーラスと交響楽的バックから成るオペラチックな曲で、どうもクリンゴン星の市場の様子らしいです。途中でクリンゴン人達のやり取りが出てきます。
★A3 “tlhIngan qulwIj DaHot DaneH'a'” (2:27)は、軽めのリズムに合わせて、Butzmann本人が朗々と歌うラブソングで、1人のクリンゴン人男が中国娘に恋心を抱き、歌を捧げているそうです。
★A4 “chon” (3:03)は、スペーシーで重厚なシンセをバックに、ButzmannとJungの掛け合いが繰り広げられる、この曲は、彼(クリンゴン人男)を嫌がる彼女(中国娘)がシャトルで飛び立ち、それを彼が追いかける時のやり取りらしいです。
★B1 “tlhIngan ruqwI' qaD” (2:34)は、ノリの良いシンセを効かした小気味良い曲ですが、Butzmannのげっぷの音が大々的にフィーチャーされています。これは、クリンゴンの市場で、中国人代表団を招待して、ゲップ大会を催しているらしいです、
★B2 “nuqneH” (2:03)では、緩やかなオルガンをバックに、ヴォコーダーVoとコーラスがドローン状に流れています。この曲は、長期間に渡るT’lanian Tigerとの戦いで、多くのクリンゴン人は死んでしまいますが、その悲しみをロボットに表現させている「死者を悲しむ歌」です。
★B3 “mISmoH” (5:09)は、またノリの良いミニマル克ポップな曲で、シンセが良く効いています。途中には、Udo ScheuerpfluのオペラチックなVoと対称的な程、キッチュなフレーズも出てきます。これは、まだクリンゴンの市場で、彼等が中国人達の飛行技術を真似て、踊ったり、ボーっとしたりして、平和に見える様を歌っているのだとか。 

◼️LP2
★C1 “Zai Xia fang” (3:04)では、第二章の始まりとして、アップテンポで危機感を煽るようなシーケンスと所々で挿入されるPercやSE的シンセをバックに、Wu Jungが朗々と歌っています。この曲は、クリンゴン星の周回軌道にいる中国人指揮官が、クリンゴン人達がどうやって完全に狂っていくのかを観察している様子を表しているのだとか。
★C2 “ghum” (5:12)は、重々しいシンセによる交響楽的な曲で、モアビット・モテット合唱団と共に、David Mossが、時に現れるシーケンスに合わせて「クリンゴン人司祭が『時場は蒸発する』と予言したこと」について狂的に歌い狂います。合唱団の雰囲気が良いですね。
★C3 “tuH” (6:11)は、「作戦」と名付けられた歌で、シンセと不規則なPercをバックに、Diamanda Galásが歌い始めますが、やがてノリの良いエレクトロなリズム隊と変わりますが、Galasは逆説的にゆっくり歌い、また、声もサンプリングされて使われており、中々クラブっぽい曲となっています。この曲は、例の中国娘が、古来よりの中国武術と高度に発達したクリンゴン人の宇宙航行術を合体させることで、後に、彼女がやってきた元の時空にワープする手助けとなるそうで、彼女はこれを「カタパルト効果」と呼んでいるそうです。
★D1 “HIv tIlan vIghro''a'” (1:12)は、勇壮な雰囲気の交響楽にシンセが絡み、虎の鳴き声も含めて、T’langer Tigerの攻撃が再び始まりまった様子を表した曲です。
★D2 “may'morgh” (2:20)では、D1に連続して、時にリズムミックな、時に流れるようなバックの音に合わせて、モアビット・モテット合唱団が歌っており、T’langer Tigerに対して、クリンゴン人達が、さっきの中国古武術とクリンゴン航行術のコンビネーションで彼等をやっつているのを表しています。
★D3 “vatlh DIS poH HutmaH cha'” (3:33)では、シンセを使ったゆったりした交響楽に、Butzmannがシアトリカルに歌っています。その内、Percによるリズムとモアビット・モテット合唱団の合唱やSE的シンセも出てきますが、ここら辺は独逸的ですね。再び、合唱がメインとなり、シーケンスも挿入されてきます。これは、クリンゴン人と中国娘は、自分達の勝利を喜び、92世紀の地球の近くまでワープしますが、そこで彼等は最終的に別れることになった場面のようです。
★D4 “quvHa' ghaH Qupmo' ngaghqangmo'” (4:33)は、割と明るい感じの交響楽をバックに、Udo ScheuerpfluとMargarete Huberがオペラチックに歌い上げていますが、Voのメロは何だか安穏になっていきます。間奏のシンセも、その後の合唱団との絡みもグーです。この曲のテーマは、「若さや放縦さに原因がある」と言う者もいると言うことで、オペラの終わりに来て、若い中国娘は「さよなら」と告げなければならず、若いクリンゴン人男は独りぼっちのままになってしまい、2人はアンハッピーな結末となります。それで、彼等は、ウィリアム・シェークスピアのソネット第96番の歌詞でアリアを歌ったと言うことです。
 
 しかしながら、まあ「スタートレック」をモチーフにするのは良いんですが、音楽がクラシック・オペラと実験音楽と電子音楽の混合物となっており、これが、独逸ではラジオで放送されていたのも凄いです(特に第2章に当たるLP2)。私も20年前位に独の劇場で現代オペラを鑑賞しましたが、全く分かりませんでした。でも、多くの観客が入っていたことからすると、独逸人とかって日頃からそう言う音楽とか芸術に慣れ親しんでいるのかなぁと今では思います。それにしても、悲しいラブストーリーでしたね。個人的には、音楽はLP2の方が好みです。そうそう、Fred Frithが1980年代初頭に初来日した時に、「何で日本人は、能や歌舞伎を観たことがないんだ?英国人なんて子供の頃からシェークスピアなんかは慣れ親しんでるよ」と言っていたことを思い出しました。日本だとマンガとアニメなんでしようかね?まぁ、それは別として、Butzmannの異能振りを堪能できる現代オペラとなっていますので、興味のある方は是が非でも入手してみて下さい!

[本作品はまだYouTubeにもBandcampにも上がっていませんでしたので、2022年に制作されたFrieder Butzmannとコラボレーター達とのドキュメンタリー”Wünderschöne Rückkoppelungen 2 (Beautiful Feedback 2)”を貼っておきます]
https://youtu.be/R8wYl1wznbs?si=Zz1WKDuxxokXtQkh

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