V.A. “Neuengamme”

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このコンピは、元々は、かの有名な英ノイズ・レーベルBroken Flagが、1982年に限定でリリースした、当時のノイズ・ミュージック界を展望できるアルバムなんです。後に、非公式に再発されており、それが今回、ご紹介するアルバムです。ジャケ写はFaustのアルバムのように差し替えられていますが、内容はオリジナルと同じようです。因みにタイトルの”Neuengamme (ノイエンガムメ)ですが、これはハンブルクにあったナチスの強制収容所の名前で、如何にもBroken Flagらしいですね。大部分は英国のグループですが、Esplendor Geometrio (スペイン)やM. B. (イタリア)、P.16 D.4 (ドイツ)からの参加もあり、歴史的資料としても重要と考えられます。Broken Flagについては、Ramlehのところで書いてありますので、そちらをご参照下さい。

 それでは参加グループと各曲の紹介をしていきます。
★A1 “Fanfare” (0:18)は、文字通りのホーン(ラッパ)による開始の合図(ファンファーレ)です。
★A2 Sutcliffe Jugendは元WhitehouseのKevin Tomkinsのユニットで、曲“Right To Kill” (4:00)は、頭に響くGのフィードバック音と叫び声(ちょっと裏返ったりもする)のようなVoから成る曲ですが、この曲はWhitehouseのカバーでしょうか?
★A3 Whitehouseは今やCut Handでも有名なWilliam Bennettを中心としたバンドで、この頃だとAndrew McKenzie (The Hafler Trio)とSteven Stapleton (Nurse With Wound)かPeter McKayが在籍していたのだと思われます。曲“Whore Cull / Action 5” (7:00)は、ホワイトノイズ多めなシンセによるノイズ音と聴き取りにくいWilliam Benetteの白痴的Voから成る曲ですが、途中からロングディレイ音やショートループ音が入ってきて、益々混乱していきます。
★A4 KleistwahrはBroken Flagを運営しているGary Mundyのソロユニットで、曲“Flesh Razor” (2:26)では、地を這い回るような気持ち悪い電子音をひたすら奏で続けます。
★A5 Esplendor Geometricoはスペインのテクノイズの源流となったバンドで、この頃はArturo LanzとGabriel Riaza(ひょっとするとJuan Carlos Sastreも)がメンバーで、曲“Untitled” (4:36)は、スペインの機械偏執狂で、意外にも四つ打ちキックとパルス音らしきシンセ音/シーケンス音から成る曲です。ちょっと大人しい印象です。
★A6 Consumer Electronicsも元WhitehouseのPhilip Bestが中心になって作ったバンドで、この頃のメンバーとかは不明です。曲”Keloid” (3:50)は、TV音と共に不穏に動き回るシンセが鳴り響き、更には、フィードバック音も絡んできます。
★A7 Ramlehはこの時期はGary MundyがBob Strudwickと組んでいたデュオで、曲“Koprolagnia / Circle Of Shit” (3:42)は、歪んで歪んだ電子音とデスVoから成る古典的パワエレな曲で、左右のパンとかに振ったりして、音的にも凝っていたりします。
★A8 Phallus DeiはOliver Strahl Lingamが中心になって結成されたノイズ・バンドですが、この頃の他のメンバーは不明です。曲“Necrophilia” (2:40)は、頭が痛く成るようなGのフィードバック音と乱暴なデスVoから成る曲で、VoはやがてLFOの中に埋もれていき、ノイズ化してしまいます。ひょっとしてBも使っている?
★B1 Ramleh “Drancy” (4:00)も、いきなり強靭な電子音で始まり、それが時に引き攣れたり、雄叫びを上げたりする曲で、後半には通奏低音も聴取出来ます。
★B2 M. B.は伊の本名Maurizio Bianchiのことで、宅録ノイズの創始者でもあります。曲“Acido Prussico (8:23)は、不安を煽るような浮遊すらシンセ音と、それに掛けたエフェクト(多分、ディレイ)から成る曲で、聴いていると鬱々とした気分になっていきます。
★B3 P.16 D.4は独のPDが発展的解消して生まれた密室系実験ノイズ集団で、メンバーはRalf Wehowsky, Gerd Poppe, Roger Schönauer, Achim Szepanski或いはEwald Weberから成っていました。“Kühe In Halbtrauer” (5:38) は、彼等のファースト・アルバムの表題曲ですね。ヴァージョン違いのような気がします。この中では異質な緻密コラージュ・ノイズです。
★B4 Krangも一時期、Whitehouseに在籍していた豪州出身のJohn Murphyのソロユニットで、曲“Krang Lives” (6:25)は、ライブ音源なのでしようか?前面には短波ラジオのチューニング音が出ており、バックで何やら不穏な電子音らしきノイズが蠢いていますが、段々と暴力的になっていきます。
★B5 Consumer Electronics “Fuck The I.R.A.” (2:44)は、ナレーションから始まりますが、直ぐにエコーが掛けられ、G(? Vo?)らしき楽器のフィードバック音塗れになってしまい、突如終わります。

 前から聴きたかったコンピですが、今聴くと、流石に「時代」を感じてしまいますね。パワ・エレって今でこそ、「強い」とか「怖い」イメージがありますが、最初はヘナチョコな女々しい感じだったんだよなぁと再確認できました。一つの音楽史上の流れを上手く切り取ったコンピだと思いますので、ノイズ・ミュージック、特にパワ・エレの歴史を探りたい方は、お得なので聴いておいた方が良いでしょう❗️

[original full album]
https://youtu.be/5WRJwW9q3dI?si=ri_9ucl9SmKMW0pe

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