Severed Heads “Bad Mood Guy”

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 豪州のインダストリアル・ビート・バンドSevered Headsの1987年作アルバム”Bad Mood Guy”の再発&特別拡張版を、今回はご紹介します。前回のバイオグラフィーは簡素過ぎたので、ここでガッツリ書いておきます。1979年に、豪州Sydney で、Richard FieldingとAndrew Wrightが、実験的電子音楽デュオMr. & Mrs. No Smoking Signを結成し、同年末にTom Ellardが加入し、彼等は、カセット・アルバム“Mr. and Mrs. No Smoking Sign Go Cruising fer Burgers!”などを自主制作しています。ただ、Ellardがバンド名が酷過ぎると言って、改名して、Severed Headsとなったとのこと。その頃はテープ・ループにシンセ・ノイズやそれ以外にも歪んだ音なんかを使っていたので、インダストリアルと見なされていました。1979年末にWrightが脱退し、残ったEllardとFieldingのデュオになって、初期のスタジオ録音をプッシュしていました。例えば、Rhythmyx Chymxとのスプリット・アルバム”Ear Bitten” / “No Vowels, No Bowels”なんかを作っています。しかしながら、1981年にアルバム”Clean”の録音途中に、今度はFieldingも脱退してしまい、Ellard1人で完成させています。そこで、Ellardは、Severed Headsの音楽に、一定の4/4拍子リズム、強烈なメロディ、解析可能なコード進行、そして、Ellardのヴォーカルと曖昧で詩的な歌詞を加えて、ドラムマシンやベース・シンセを導入し、アヴァンギャルド・インダストリアル/ポップと評される音楽に変えています。彼等のライブは実験的なアート・スペースからロック・クラブまでをカバーするようになり、Garry Bradbury (Synth)とSimon Knuckey (G)を加えて、1982年にアルバム”Blubberknife”と”80's Cheesecake”をリリースしてます。その後で、ビデオも担当するアーティストStephen Jonesが加入しています。そうして、Severed Headsは、英国Ink Recordsと契約し、アルバム”Since the Accident”をリリース。先行シングルは素晴らしくメロディアスなシンセ・ポップ作品と評価されています。それで、彼等は、ワールドツアーを敢行しますが、その際に、マルチメディアなものにしたいと考え、Jonesによるビデオ・シンセを導入します。1984年8月に豪州に帰ってきますが、メンバー・チェンジが続きます。先ず、Bradburyが、1983年のアルバム”Since The Accident”の録音途中に脱退、1984年のワールドツアーの前には、Knuckeyも脱退し、残ったのはEllardとJonesに加え、新人のPaul Deeringの3人となります。それで、1985年にInk Recordsからアルバム”City Slab Horror”をリリースしますが、このアルバムでは、Bradburyがゲストとして参加しており、ヴォーカルや曲作りもやっていたので、Ellardとぶつかり、それが原因で、Bradburyが残るのであれば、辞めると言って、新人のDeeringは 脱退してしまいます。ただし、評論家は、CabsやT.G.に匹敵する位、豪州で最も革新的なエレクトロ・バンドと大絶賛しています。1985年11月には、ローカル・オンリーのアルバム”Stretcher”をVolitionからリリース、また翌年8月には、アルバム”Come Visit The Big Bigot”をリリースしています。1986年にはEllardとJonesは欧州ツアーと北米ツアーをやっていましたが、1987年には、ローカル・レーベルVolitionから、本作品のオリジナルでもあるアルバム”Bad Mood Guy”をリリース。評論家は、「実験性が飛び抜けた先に、商業的にも価値がある作品だ!」と好評価をしています。実際、米国ビルボードのHot Dance Club Songsチャートでも19位まで上がり、賞も受賞しています。1989年10月には、プロデューサーRobert Racicによるリミックス・アルバムも出ています。しかしながら、1992年に、アルバム”Cuisine (With Piscatorial)”を出した後で、Jonesが脱退し、メンバーはEllardのみになります。レーベル間のゴタゴタはありましたが、1994年にアルバム”Gigapus”を豪州のVolitionと米国Decibel Recordsからリリースしています。その一方で、Ellardは、ネット・レーベルsevcom.comを始め、2000年代には、アンビエントの配給システムであるSevcom Music Serverを構築したりしています。Ellardは別プロジェクトCoklacomaを始め、1990年後半〜2000年代に掛けて、アルバムを数枚出しています。また、2004年までは、ビデオの開発に注力しており、段々とSevered Headsレーベルは過去のことのように思うようになり、名前を出さずに、Sydneyのエレクトロ・バンドのサポートをしたりしています。そんなこともあって、Ellardは、2008年初頭に、Severed Headsの終了をアナウンスしています。しかし、2010年1月14日に30周年記念のライブを行う為、長年の友人でもあるStewart Lawlerを加えて、Severed Headsを復活させています。その後は、Gary NeumanのツアーのサポートやSevered Headsの初期の曲をセルフ・カバーしたりしています。そして、20数年振りに米国ツアーを行い、その後、2019年9月に最後のライブを行ない、再び解散宣言をして、現在に至ります。
 と言うのが、Severed Headsのバイオグラフィーです。それでは、アルバムの方の紹介をしていきます。今回、2枚組での再発ですが、オリジナルの内容についてはLP1の方で、リマスターしたものとなっています。LP2は主にオリジナルの録音時のアウトテイクやライブ音源或いはヴァージョン違い等をコンパイルしたもので、それ故のSpecial Versionのなっています。それぞれのLPについて紹介していきます。とりあえず、整理するとして、この時期のメンバーは、Tom Ellard (Vo, B, Kbd, Synth, Electro-Perc)とStephen Jones (Synth, Video-Synth)のデュオです。LP別に紹介していきます。
 LP1は、初っ端から、強力なマシンリズムとカッコ良いシーケンスに乗って、Ellardの中性的なヴォーカルを聴くことができます。リズムは四つ打ちではなく、あくまでもロックのリズムパターンが基本です。何と言うか、今で言うところのインダストリアル・ロックの原型みたいな感じのイケイケ感がありますね。実際、Skinny Pappyとかは、Severed Headsの影響を受けたらしいです。A面は、ややスローテンポなA3 “Unleash Your Sword”で、ちょっと息抜きかな。しかしながら、A4 “Jetlag”でまたもや乗りの良いラウドな曲になります。ここでは四つ打ちのリズムですが、途中、複雑なリズム・チェンジを魅せてくれます。そうして、タイトル曲B1 “Bad Mood Guy”では、ややメロディアスな一面を見せてくれます。しかしながら、B2 “Dressed In Air”ではピアノらしき音とスローなシーケンスから成る大人しいスタイルの曲で、バラード調で、一息つけます。B3 “Rabbi Nardoo Flagoon”では女性の歌声等様々なサンプリングを使った、ビートレスで実験的なインスト曲です。次のB4 “Heaven Is What Heaven Eats”も打ち込みビートはあるのですが、様々なサンプリング音が全方向から押し寄せてくる実験的なインスト曲です。しかしながら、次の曲B5 “Mad Dad Mangles A Strad”のピアノの調べとベースから成るしっとりとしたミニマル曲でLP1を締めています。たった2人なのに、こんな音楽が出来るのは、Jonesが操っている、例のVideo-Synthによるらしいです。
 今回、新たにレコード化されたのが、LP2ですが、随分、曲のイメージが違います。 例えば、LP1のB1にも収録されているC1 “Bad Mood Guy (Day 1)”も、打ち込みではなく、ベースを使用したり、ヴォーカルも良く聴こえたりとアレンジの妙を聴くことができます。また、C3 “Canine (Day 1)”なんかでは、ナレーションのサンプリングをヴォーカル代わりにして、ビートに乗せ、それ以外にも多量の素材のサンプリングも塗してあります。C4 “Nature 10 (Terse)”はしっとりと歌い上げていて、もう別バンドのようです。それでも、バックの音は電子音やサンプリング音なんですが。ライブ音源のC6 “I've Always Hated Severed Heads (Live)”では、最初期の手法であるテープループを重層化した曲になっています。D面はフロア用にミックス/リミックスされているので、基本的に四つ打ちのクラブ・ミュージックになっています。
 このようなSevered Headsのデラックス版の2枚組ですが、LP1A面は通常運転、B面はその中でも実験的な曲を集めており、LP2C面では歌物としてのアレンジやテープループ曲などの多彩な面を、D面はクラブ用のミックスなどを収録しており、この作品だけで、当時のSevered Headsの全貌が分かるとも言えますね。豪州のバンドと言うこともあり、日本ではそれ程、評価されていないように感じますが、DJ〜クラバー〜インダストリアル・ロック・ファン〜実験ロック好きまで、全員に聴いて欲しい作品です‼️マスト!

LP1 (オリジナル)
A1 “Hot With Fleas”
A2 “Nation”
A3 “Unleash Your Sword”
A4 “Jetlag”
A5 “Contempt”
B1 “Bad Mood Guy”
B2 “Dressed In Air”
B3 “Rabbi Nardoo Flagoon”
B4 “Heaven Is What Heaven Eats”
B5 “Mad Dad Mangles A Strad”
LP2 (リミックス盤)
C1 “Bad Mood Guy (Day 1)”
C2 “Unleash Your Sword (Day 1)”
C3 “Canine (Day 1)”
C4 “Nature 10 (Terse)”
C5 “Contempt (Day 1)”
C6 “I've Always Hated Severed Heads (Live)”
D1 “Hot With Fleas (12" Remix)”
D2 “Nation (NYC Mix)”
D3 “Canine (12" Remix)”

A1 “Hot With Fleas”
https://youtu.be/havnNe7VWuw?si=lDrpzRwUaZAGSt7z

A4 “Jetlag”
https://youtu.be/lvKicu4uxzI?si=Ymrb3W2DojJB58tC

B1 “Bad Mood Gut”
https://youtu.be/IBjNlMpTAcE?si=T62mjTLsO95M8jpB

B5 “Mad Dad Mangles A Strad”
https://youtu.be/gNHujcbizbg?si=300qYsF2YFpa_jxI

[BandcampのURLを貼っておきます]
https://severedheads.bandcamp.com/album/bad-mood-guy

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