Cindytalk “Wappinschaw”

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実は、Cindytalkについては、名前はどこかで見て知っていたのですが、聴いたことはなかったので、この際、買ってみました。オリジナルは1994年に英国TouchよりCDで出ていますが、私が買ったのは、2021年に米国レーベルDais Recordsの再発盤です。まあ、透明赤盤なので良しとしますか。それで、先ずCindytalkのバイオグラフィーについて紹介しておきます。Cindytalkは、スコットランドのパンクバンドThe FreezeのメンバーであったCinder (Vo)とDavid Clancy (G, Kbd)によって、1982年にエジンバラで結成されています。しかしながら、Cindytalkは、最初はバンドとして数年間活動していましたが、後には、CinderことGordon Sharpのソロ・プロジェクト名となり、ライブではその都度メンバーを参集して活動しています。もう少し詳しくお話しすると、CinderとClancyはLondonに居を移し、デビュー・アルバム”Camouflage Heart”を作製します。翌年、2人に、John Byrneが加わり、Cindytalkの敢えてぶっ壊れたサウンドを作り出すのに重要な立ち位置を占めます。この頃、Cinderは同郷のCocteau TwinsやThis Mortal Coilなどの作品にも客演しています。それで、アルバム・リリース後、Clancyは脱退し、代わって、Alex WrightとDebbie Wrightの兄妹が加入し、ここから3年掛けて、セカンド・アルバム”In This World”の録音に取り掛かります。その結果、同名異作の2種類のアルバムを同時にリリースします。1つはぶっ壊れたノイジーなアルバムで、もう一つはCinderのピアノの即興から成る実験的アルバムとなっています。この時期に、Cindytalkは、映像作家Ivan Unwinと断続的にコラボしています。その結果、Unwinの作品”Eclipse: An Amateur Enthusiasts Guide to Virus Deployment"の為に録音した曲をまとめて、アルバム”The Wind Is Strong...”を、1990年にMidnight Musicからリリースしており、ピアノの即興とミュージック・コンクレートの実験からなっているとのこと。この頃には、Cinderは”Ambi-dustrial”と言う概念を主張し始め、Unwinとのコラボ作業の中から、エンジニア/プロデューサーのDavid Rosが以降、バンドのメンバーとなります。また、Matt KinnisonとPaul Middleton (Drs, Perc)からのミックスのアイデアもあり、1991年のWappinschawセッションから4曲入りEP “Secrets And Falling”を同年にリリースしています。この頃から、段々と集団的になり、John Byrneもバンドに戻ってきて、Kevin RichとSoul Static SoundのDarryl Mooreの加入しています。そうして、出来たアルバム”Wappingschaw”は、当初は1992年にMidnight Musicが出そうとしたのですが、結局は、Cinder自身のレーベルTouched Recordingsから1994年に出しています(因みに、配給はNurse With WoundのレーベルWorld Surpentが行なっています)。このアルバムでは、スコットランドの小説家Alasdair Grayの作品"Lanark"を読んだことがきっかけで、実際にGrayも録音に参加しています。1993年になると、Cindytalkはライブも見据えて、大変革を行い、メンバーも、Cinder, Paul Middleton, David Rosをコアとして、他にPaul Jones, Andie Brown, Mark Stephenson, Simon Carmichaelを加えて、Touched Recordingsより7㌅シングル”Muster" c/w "Prince of Lies"を1994年に出しています。また、1996年初頭には、Cindytalkは米国ツアーをするのですが、その中で、Bostonでは2回ライブを行っており、1回目はシークレットで、Lucinderと言うバンド名で行なっており、最終日にはCindytalkとして行なっています。その後、2007年に伊のディストリビューターAbraxasと契約しますが、最初の2枚のアルバムだけであったので、2021年に米国レーベルDais Recordsが3枚目と4枚目のアルバムを再発しています。そうして、2003年以降は、Klang GalerieやEdition Megoなどからコンスタントに作品をリリースしており、また2004年からはソロや色々なプロジェクトの為に日本と英国を行き来しているとか。また、2011年春には、LataのベーシストJacob BurnsがCindytalkに加入し、より電子音響的に変化しています。2014年には、Thurston Mooreと、BBC Tectonics フェスで共演しており、2021年には日本のレーベルRemodelより、フィールド録音と電子音楽を合わせた内容のアルバム”Of Ghosts and Buildings”をリリースしたりで、現在に至ります。
ザッと、Cindytalkの流れはこのようになりますが、本作品であるアルバム”Wappinschaw”の内容について紹介していきます。今回のメンバーは、Gordon Sharp (Vo, Piano, Tape), Paul Middleton (Drs, Perc), David Ros (G, Sampler)がコアになっており、その他にKevin Rich (B), Matthew Kinnison (B, Tape), Andrew Moon (Drs ヘルプ), Darryl Moore (G), John Byrne (G, B), Lars Rudolph (Trumpet), Jean Rowena Sharp (Vo: Coulter’s Candy), Calum Williams (Bagpipes), Tracy Hankins (Vln)と言う豪華な顔触れです。A面6曲/B面7曲と言う構成です。因みに、A01 “The First Time Ever...”は、スコットランドのフォーク・シンガーEwan MacColl の曲のカバーです。それで、全体の聴き通してみると、ヴァイオリンやバグパイプなども使われていることもあって、演奏の幅は相当広く、已もすると、統一感に欠ける印象も持つかもしれませんが、アルバムを通して、Cinderの独特のヴォーカル/歌が一貫していて、それを中心に様々なスタイルでの楽曲が並んでいると言った方が良いでしよう。それでは各曲を紹介していきます。

★A01 “The First Time Ever...”は、無伴奏で、呟くような歌のみからなります。
★A02 “A Song Of Changes”は一転、スローでラフなロック調の演奏に、天使のようなCinderの歌が乗ってきて、何かの予感を感じます。
★A03 “Empty Hand”は、ノイジーなベースとフリーなドラムで始まりますが、魔除けの如き歌が響き渡ります。呪詛?
★A04 “Return To Pain”は、ドラマチックな展開の一大歌物絵巻です。スチール・ギターがカッコ良いです。★A05 “Wheesht”の最初は、先述の小説家Alasdair Grayの語りから始まり、狂気の演奏へと繋がっていきます。
★A06 “Snowkisss”では、ディレイの掛かったヴァイオリンとピアノに鼻歌のようなCinderのヴォーカルと言う、何とも繊細な曲です。
★B01 “Secrets And Falling”は長い不気味な通奏低音の後に演奏が始まり、Cinderの力強いヴォーカルが聴けますが、
★B02 “Disappear”との繋ぎ目が不明瞭で、こちらでもヴァイオリンとドラムを交えたフリーフォームな「歌」を聴くことが出来ます。
★B03 “Traumlose Nächte”でもやはりフリーなトランペットに導かれて、ピアノやドラムもそこに絡みますが、ここら辺は彼女らの懐の深さですね。
★B04 “And Now In Sunshine”では、リズムを刻むドラムに加えて、歪んだギターなベースと共に、Cinderの語りのようなヴォーカルを堪能出来る歌物になっています。またトランペットもバックで入ってきて盛り上げます。
★B05 “Prince Of Lies”では痙攣するギターとドラムとCinderの力強い歌が三つ巴になり、盛り上がっていきます。
★B06 “Hush”では、爪弾かれるアコギと朗々とした歌で始まり、英国のフォークロアな雰囲気が充満していきます。途中でテープ音が被ってきて、段々とバグパイプが音楽の中心に移動していくのは、彼女らしいですね。何か泣けます。
★B07 “Muster”ではいきなりグラインド・コアのような演奏で、ビックリします。男性ヴォーカルは誰でしょうか?

 始めにも書きましたが、やはりCindytalkはCinderことGordon Sharpの歌物プロジェクトですね(他の作品を聴いていないので断言は出来ませんが)。各曲で音楽の方向性は異なりますが、全体を通すと、彼女の歌の世界観に支配された作品だと思います。ノイズ/インダストリアルのコーナーで見つけたので、個人的には、この内容には驚愕させられっぱなしでした‼️未だに現役なので、新作も聴いてみたいですね❗️

A02 “A Song Of Changes”
https://youtu.be/M8vLtLIB-y0?si=IA0NOII2UWgzm1Px

[full album]
https://youtube.com/playlist?list=PLfimnwaZdumiDdQWdtFXRIsTslTNdrHGQ&si=2rJvKHlE_X0UDOoD

[BandcampのURLも貼っておきます]
https://cindytalk.bandcamp.com/album/wappinschaw

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