ハワイの要塞施設の考察から…の巻

初版 2024/02/02 23:42

改訂 2024/02/04 20:23

私、以前に日本国内の要塞施設の遺構の研究をしていたことがありまして(あちこち実地調査なんかもしました)、、、さらに旅順まで渡り旅順要塞の遺構も見てきたモンですから、

スコットランドに行ってもシドニーに行ってもハワイに行っても砲台跡、要塞跡には敏感です☝️

ハワイのホノルル市内とダイヤモンドヘッドについてはについては昨年夏の日記に書かせて頂きました🙇

https://muuseo.com/T.S_beer_wagons/diaries/434

トラトラトラ(其の三)ミッション・コンプリート…の巻 | Beer Wagons and Miniature Models Laboratory | MUUSEO My Lab & Publishing

https://muuseo.com/T.S_beer_wagons/diaries/434

T. S

さて、そのハワイですが、それからも実は色々調べておりまして、その中である写真を見つけたのです。

オアフ島の東北側のカネオヘ、オバマ大統領の故郷ですが、ここには昔から海兵隊の基地がありまして、そのレポートのようですが、隊員が基地内の「ペンシルヴァニア砲台の遺構を見学」と…。

この「ペンシルヴァニア砲台」というのは

カネオヘのウルパウ岬に据え付けられた、元「戦艦アリゾナ」の14インチ(36サンチ)砲塔なのです。

真珠湾攻撃でその場で撃沈された戦艦アリゾナから、比較的無傷だった後部の2基の砲塔を取り外し、

日本軍の上陸に備えるために陸上砲台として再活用したのでした。

1つ目はアリゾナ砲台と名付けられ、オアフ島西岸のカヘポイントに

(※但し終戦時に未成)、

そして、2つ目がペンシルヴァニア砲台と名付けられ、カネオヘ地区の防衛のため、

オアフ島東岸のカネオヘ、ウルパウ岬の台上に据えられました。

その話しは前から知っておりましたが、見たことも無かったし検証したことのなかったので、写真を見て「ほほー、まだ遺構が残っているのか☝️」と思い、、、Googleマップの空撮で調べてみることにしました。

これですね。海兵隊が見学してたのは。

砲塔井(ほうとうせい=砲塔をスポンとハメていた穴🕳️)の跡のようですね。

実はこんな本を持ってまして、

「アメリカの沿岸砲台」

ちゃんと出てました。

なんと、ペンシルヴァニア砲台が完成したのは終戦の年の1945年、そして試射したのが8月だとか。

…なんという無駄な事業。太平洋戦争中に、ずーっとこれに取り組んでいた人たちがいたわけですね。戦地に行かなくて済んだとはいえ、、、無駄…。

さて、周囲を見てみると、

アヤシイ円形の何かの跡がありますね。でもこちらは最初の砲塔跡より地積が大きいですね。これはあとで調べましょう。

このカネオヘのウルパウ地区は、米陸軍第16沿岸砲兵連隊が防備を担当、この一帯は「ヘイズ要塞」(Fort Hase)と呼ばれ、上記のペンシルヴァニア砲台を含めて8箇所の砲台が築かれました。

周囲には「マガジンロード」、つまり「弾薬庫通り」という名前の通りがあります。

たしかに、地下弾薬庫の入り口が沢山ありますね。

この一帯の要塞地帯のための弾薬庫地区だったんですね。

別の砲台跡も見つけました。

バッテリー・フレンチ(フレンチ砲台)の遺構だそうです。

ここは2基の砲架式6インチ(15サンチ)砲が設置されていたそうです。

そして、先ほどの円形の基礎。

隣り合った丘の頂に計2ヶ所の基礎のような構造物が。

直径は約15m

戦艦の砲塔用の砲塔井跡としてはやや大きい…🤔?まっ平なのも気になりますね。

さらに調べてみますと、

これかな🤔❓

あの本にも出てました。

ヘイズ要塞の8ヶ所の砲台の一つ、デ・メリット砲台(Battery Robert E. DeMerritt)、建設当時は第405砲台と呼ばれた8インチカノン砲×2門の砲台の跡のようです。

この剥き出し砲架の露天砲座に、当時はカモフラージュ用?の木製の屋根が被せられていたようですね。

地下構造物の図面を見つけました✌️

いや、先ほどの円形の基礎の手前に、別の円形の基礎が2つが近寄って設置された跡がありますね。

こっちですね。405砲台、デ・メリット砲台は。砲座の間隔としても上図と合致しますね。

この辺り、よく見ると砲座の基礎?と思われる周囲、ちゃんと築城学の学理に則った角面堡の形状に整地された跡が分かりますね。

しかも、その相互が繋がっていますので、これらの四つの基礎構造は同じ計画の中で建設され、2門ずつの二つの砲台が隣り合っているようですね。

砲弾と薬嚢

これ↑がこのヘイズ要塞の砲台リストなんですが、405砲台の下に書いてある「シルベスター砲台」、なんと「Railway」とあります🫢

つまり列車砲形式の砲台のようです。

ということは、普段はトンネルの中にでも格納され、使うときに線路で引き出してくる…、そんな砲台だったのでしょう。

8インチ列車砲

あの要塞の本に出ていました。

機関車メーカーとして有名なボールドウィン社がこの車台を製造していたようです。

しかし、うーん、どこだろう🤔❓

前出のマガジンロードあたりも怪しいのですが、ここが最も怪しい。

この奥の切り通しみたいなところから伸びる道は、海岸線に沿う形で線路のような緩いカーブを描いています。ここかな?(この手の切り通しは他にも何ヶ所か)

周囲の山々にも観測所の跡が残っていますね。

いろいろ残ってますねー

さいごに海兵隊のカイルア基地

ファントムとMH53ヘリ、ハンヴィーの残骸がたくさん捨ててありますね。

ホント、見てて飽きない地区ですね。このあたりはw

 * * * * *

…と、こんな感じで、実は世界中に要塞の跡が残っているのです。

旅順要塞…

他にもたくさん残ってます。実地調査の写真はデジタル化してないのでここにパッと出せません。

日本ならこんな感じ。佐世保の石原岳堡塁砲台の遺構です。

ここは旅順の二龍山堡塁のような地下施設が綺麗に保存されています。

(※これらもパッと出せるデータがないので、ネットからお借りしました)

ここが国内で最高峰に状態の良い明治期の要塞跡の一つですが、さらにすごいのが紀淡海峡の友ヶ島。ここは全島が要塞です。

(※こちらも写真お借りしました)

以前に私がこの地区の詳細な調査報告をホームページにしていたのですが、プロバイダのサービス終了で公開は終わっちゃったままです🙇

そしてこちらは

千葉の富津岬の富津堡塁砲台跡。

その沖合の

第一海堡と

第二海堡。海上の人工要塞跡です。

東京湾に残っています。

そして、キリがないので最後に、大分鶴御崎の丹賀砲塔砲台跡。

ここは戦艦伊吹の後部30サンチ連装砲塔を据え付けた砲塔砲台の跡。

ナバロンの要塞のような地下要塞跡が綺麗に残っており、地上から山上に砲弾を揚げるためのケーブルカーまで復元されています。

巨大な砲塔井…

…さいごは、日本中にある要塞の遺構のご紹介でした。

みなさんもぜひ行ってみて下さい。

おしまい👋

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T. S

I am a collector....

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    8823hayabusa

    2024/02/03

    アリゾナ沈没跡は(この海面下の艦の中に米海兵さんが苦しんだ挙句眠っているのだなあ)と、やはり合掌しましたね。

    一昨年、猿島に渡りました。 そしてその沖に浮かぶ(肉眼では見えなかったが)第一海堡と第二海堡があるのだなと思いました。 第一海堡の方は松田勇作の【蘇える金狼】の銃撃戦ロケ地なので見たかったです。

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    8823hayabusa

    2024/02/03 - 編集済み

    砲台とは似て非なるのですが、昔この丸い施設を知りました。 人気の無い木々に覆われた茂みの中に、コンクリート地肌の直径20mはあろうかと思われる丸い輪っかが4つ。

    戦時中の燃料庫の跡だそうです。

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      T. S

      2024/02/03 - 編集済み

      アリゾナは慰霊碑ですから、三笠とはちょっと位置付けが違いますよね。スピリチュアルです。
      その近くの陸上には、同じく大破して転覆してたくさんの戦死者を出した戦艦オクラホマのオクラホマ・メモリアルという慰霊碑や、フォード島の反対側には標的艦(元戦艦)ユタの船体も沈んでメモリアルになってます。

      要塞遺構探索なら猿島も良いですね。ちょっと公園として整備され過ぎ(トンネルとかが安全面で塞がれていたり)なところはありますが、島全体として保存されていて貴重な明治期の遺構です☝️

      猿島の本土側、もう少し三浦半島の先に行くと観音崎地区にたくさん整備された遺構が残っていて、散歩がてらひとまわり見学できます。

      また、周辺の畑の中とかに埋もれた砲座跡とか、あのあたりはなかなか見応えありますよ。(写真は剱崎の砲塔跡です)

      燃料庫跡、イイですね😁 こういうのはワクワクしますw 横島というのですね。初めて知りました。
      まだまだあちこちいろいろあるんですね。ありがとうございます♪

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      T. S

      2024/02/03

      この剱崎砲台は、こういう地下構造でしたが今では畑地🥬になって完全に埋没しています。

      第二海堡が関東大震災で使用不能になったのち、そこから外したクルップ式15cm連装砲塔がここに移設され、据え付けられました。

      ぜひ地下を掘らせてもらいたいんですが、大根か何かを栽培されてるんですw 畑ごと買い取らないと…🤔

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      T. S

      2024/02/03 - 編集済み

      以前にブラタモリで第二海堡の砲塔の写真が紹介されてたのを思い出しました☝️ 画像のキャプチャなんですが、
      これ↓がこの↑剱崎に移設された砲塔です。

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    レイレイ

    2024/02/03 - 編集済み

    もうね、学者さん👏博士👏教授👏
    なんかうまく言えませんが、凄い人とお友達になれた私は幸せ者ですw☘️
    とても分かりやすく興味そそられる日記で、大変大変勉強になりました。
    知らない事教えて下さりありがとうございました。
    そして、Google Mapって凄いや😵こちらが見られるって事はあちらにも見えちゃうワケだし。
    (詳細な研究ブログとやらも気になりマス☝️)

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      T. S

      2024/02/03 - 編集済み

      いやいや、そ、そんなに凄くは(笑)
      でも、こんな研究ばかりしながら生きていきたいですねw
      興味を感じて頂けましたか?だとしたら嬉しいです。ありがとうございます。

      調査報告のホームページは、もう10年以上前にクローズされちゃいまして放置してます。なかなかの情報量で、当時はこの分野の研究のハシリのひとつとして結構珍重されてました。本にも紹介されたり。(その後、興味を持って調べる人が少し増えました)
      その頃は、実地にあちこちの山の中に調べにいき、前人未到の藪の中で遺構を発見したり、崩れた穴を見つけて入ってみたり、そこで酸素が薄くて死にかけたりと、インディジョーンズのようなことまでしてましたw
      対馬とか壱岐とか、離島の調査にも行きましたからね。1人で(笑)

      Googleマップの空撮って、すごいんです。Yahooのマップもなかなかですよ。ある意味スパイ衛星ですね。ロシアのウラジオストク軍港にどんな軍艦があるか、とか、丸見えです☝️

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      T. S

      2024/02/03

      こっちは北朝鮮のとある飛行場ですが、えらい旧式な40-50年前の戦闘機ばかりなのが分かります。ミグ17までいますよ。

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    真適当工作

    2024/02/03 - 編集済み

    沈められる前のアリゾナの写真ってありませんでしたか?
    前も書いたけど塗装が解らず1/200のアリゾナのプラモデルが手つかずになっています(笑)

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      T. S

      2024/02/03

      ありますよ。模型の作例が雑誌に出ています。ちょっと待ってくださいね。

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      T. S

      2024/02/03

      これが最後の姿のようですね

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      T. S

      2024/02/03 - 編集済み

      うしろです
      砲塔上面の色分けで各艦を区別していたそうです
      この2基の砲塔が、オアフ島に設置されたアリゾナ砲台とペンシルヴァニア砲台の砲塔ですね

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      真適当工作

      2024/02/03

      ありがとうございます。
      私もだいたいこんな感じだとは思っていたのですが、、雑誌の製作記事や艦船マニアの方にいわせるとTAMIYAの佐世保軍艦色が近いのではとのことです。

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      T. S

      2024/02/03

      グレー、軍艦色は色目が難しいですよね。人それぞれの解釈や、当時のカラーも写真の発色が正確かと言えば怪しいですもんね。

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    2024/02/03 - 編集済み

    実に興味深く、面白い日記でした
    暖かくなったら、観音崎や城ヶ島も行ってみたいと思います
    って言うかT.S館長と行きたいです(笑)

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      T. S

      2024/02/03 - 編集済み

      ありがとうございます🙇
      あ、そういうガイド付きツアーも面白いかも、ですね(笑)
      観音崎が入門コースに最適です。この砲台にはこの大砲が付いてました、と資料本「日本の大砲」(出版協同社 ¥9,000)を使って解説しながら歩きます🚶‍♀️

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      2024/02/03

      行きてぇ~🎵
      是非❗️👍️

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      T. S

      2024/02/03 - 編集済み

      横須賀、観音崎、城ヶ島コース、
      いいですねー👍 

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    8823hayabusa

    2024/02/03 - 編集済み

    T.S館長による【Tsua of the artillery battery】…『邦題』【T.S館長の砲台巡りやりたい『放題』】ツアーですか(笑)。

    関東在住、もしくは金と暇を持て余していれば僕も参加したいです(笑)

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      T. S

      2024/02/03 - 編集済み

      ベテランコースは、ヘルメット⛑️と頭ライト付けてロープで穴🕳️に降りたり、暗闇でゲジゲジの大群に出会ったり、ナタでヤブを払いながら前進したり、、、アドベンチャ系です☝️

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      2024/02/03

      ガイドと言っても、道案内の方ではなく、解説系でお願いします(笑)

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      T. S

      2024/02/03

      よくやってますよね。市とか区とかでガイド付きヒストリカル散歩みたいなやつ。市の広報に出てますねw

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      2024/02/03

      そういうツアーがいいですw
      川口浩探検隊みたいなアドベンチャーは勘弁です(笑)

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      T. S

      2024/02/03

      では、難易度レベルは松竹梅の3択で☝️

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      2024/02/03

      UMEで❗️

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      T. S

      2024/02/03

      ウメはピクニック🧺です

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    fanta

    2024/02/04 - 編集済み

    友ヶ島の要塞跡は、
    さながら仮面ライダーと怪人が戦ってそーなイメージわきますね🤣

    時代は違うんですが、
    例えば大阪城の真田丸はこの辺だあの辺だ…
    とかって推測する街歩きみたく、そういう番組見てワクワクするのを浮かべちゃいます😊

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      T. S

      2024/02/04 - 編集済み

      要塞跡は歴代のライダーや戦隊モノで撮影にもけっこう使われたようですね。

      まえに話題にした「台場」も今の道筋に形を残していたりしますから、そういうブラタモリ的な街歩きは面白いと思います☝️ 真田丸のあとなんて辿ってみたいですね。

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