寺尾聰「Atmosphere」

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寺尾聰さんの3枚目のオリジナルアルバム
(東芝EMIでのアルバムとしては2枚目になります)
1981年に「ルビーの指輪」が空前の大ヒットとなり
さらにその前年に発売していた
「シャドーシティ」「出航 SASURAI」も大ヒットとなり
当時の「ザ・ベストテン」で
3曲同時ランクインしたり
「ルビーの指輪」が12週連続1位となって
スタジオセットの中に赤い記念の椅子が設けられたりと
私の記憶にも当時のブームは強烈に残っています。

で、前作「Reflections」は
そんなシングルヒットの最中に出したアルバムで
もちろんアルバムとしても大ヒットしたのですが
今回の「Atmosphere」はそんなブームが完全に終わった後の
1983年末にリリースされたアルバムです。
おそらく…とうか推測なのですが
寺尾さんとしてはもうあの大ブームは
完全に切り離したかったのではないかと思います。
そこであえて期間をあけてのアルバムリリースではないかな…と思います。
このアルバムに「ルビーの指輪」に続くシングル
「Long distance Call 長距離電話」が収録されているのですが
このシングルの発売でさえ
大ヒットから1年後の1982年末発売で
さらにこのアルバムはそこから1年後の1983年末と
あのブームとは切り離したところで
自分の音楽をやりたかったのかもしれないな…と想像します。

アルバムの中身は前作「Reflections」と同じ路線の
まさに「寺尾聰の世界」です。
いや前作よりもさらに洒落た楽曲で埋め尽くされています。
A-1「飛行少年」からいきなりジャズ調の3連符の曲でオープニングです。
もうまさにお洒落なシティポップとはこうだ!と言わんばかりです。
そして2曲目は1年前に先行シングルとして発表済みの
「Long distance Call」シングルらしくメリハリの効いた曲で
私、当時この曲が先行発売された時に相当ハマりました
はっきり言ってブーム時の大ヒット3曲よりも
この曲のほうがカッコいい!と思っています。
ブームから完全に切り離したことで
セールス的には静かなものでしたが
知る人ぞ知る名曲だと思います!
で、A-3「雨の風景」はまさにシトシト雨の降る静かな日に
延々聴いていたくなるような名曲です。
よく寺尾さんの曲を「お経みたいな…」と揶揄する方が
当時からいましたがまさにこの曲はそう言われる曲なのでしょうが
第一印象は確かに地味でも
誰が何と言っても噛めば噛むほど味が出る曲なのです!
続くA-4は軽快な「まさか・Tokyo」
こういうちょっと軽いノリのポップな曲もお手のものです。
サビの自分自身のコーラスとの掛け合いがまたいいですよねぇ
A-5「砂の迷路」は明るい霧雨のような美しいバラードです
前作もそうですが基本的にウェットというか
「雨」のイメージなのですね
それが夜の雨だったり、冷たい雨だったり
明るい雨だったりと同じ雨のイメージでもバリエーションがいろいろあるのです。

B面はまたこ洒落たアレンジの「夏嵐」で始まります。
この後拍・縦ノリの軽快なアレンジいいですねぇ
歯切れの良いピアノのバッキングがとっても耳に心地よく残ります。
全体的に今回はジャジーなアレンジが多いですね。
B-2の「今夜でピリオド」も同様に洒落たアレンジなのですが
今度はギターバッキングがめちゃくちゃ心地よいのです。
歯切れの良いカッティングやミュートの効いたバッキングが
非常に気持ち良く耳の中で転がります。
もちろんその上に乗せられた寺尾さんのヴォーカルもとても上質です。
BGMとして聴き流しても心地よく
じっくり耳を傾けて聴きこんでも聴きごたえ十分です。
こんなにいろんな気分の時にも聴きこめるアルバムは少ないと思います。
B-3はファンの間で名曲として名高い「回転扉」です
これも私的には雨のイメージですが明るく暖かい雨ですねぇ
ところで回転扉もこの時代はちょっとおしゃれなビルなんかで
よく見かけたような気がするのですが
今ではめったに見ることがありませんねぇ。。。
B-4はちょいとダークなイメージの「終着駅」です。
今度はかなり冷たい雨ですねぇ…夜中に聴くとダークな雰囲気に浸れます。
そしてアルバムのエンディングは明るいイメージのバラードの
「Passing Summer」
正に夏の終わりの儚さを表した曲で
この曲だけがあまりウエットなイメージではありません。
でもなんていったらいいのかな
夏の思いでを回想しながらミルク色のまどろみの中にいる感じ???
うっ。。。語彙力が足りないな。。。
とにかく良い曲なのです!

。。。というわけで寺尾聡ワールドをめいっぱい堪能できる1枚なのです!

1983年12月1日リリース

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