当院にご入院下さい!~ ただひとつの世界遺産病院「サンパウ病院」
初版 2024/03/13 12:10
改訂 2024/07/06 11:40
2018年、バルセロナに行った際、世界でただひとつの「世界遺産の病院」サンパウ病院を見てきました。ホテルからタクシーに乗って「サンパウ病院まで」と告げたのですが、運転手さんは救急病院として稼働している現サンパウ病院前に連れていってくれました(涙)。そこは救急車のサイレンが鳴る慌ただしい中でしたが、私が見たかった旧サンパウ病院は隣にありますので徒歩5分ほどで到着しました。
「サンパウ病院」は銀行家のパウ・ジルの寄付を元に1902年に着工された病院で、14.5ヘクタールという広大な敷地を持ちます。「カタルーニャ音楽堂」を設計したドメニク・イ・モンタネールが設計しました。途中、建設費用が足りなくなるなど紆余曲折があり、完成には30年近い年月がかかりました。ひとつの病院の完成にこれほど時間が掛かったのは、「凝り過ぎた装飾によって費用かさんで金欠になった」ことが関係しているのは間違いないと思います。モンタネールの存命中には病院は完成せず、建築家である息子がその後を継いで1930年にようやく竣工させました。2009年まで現役の病院として活躍していましたが、前述のとおり現在は隣にある新病院がその役目を担っています。病院の概念を吹き飛ばす豪華な建物が並んでいて、驚くばかりです。1997年にカタルーニャ音楽堂と併せて世界遺産に認定されました。サグラダファミリアと違い混雑していることはほとんどないようで、穴場の観光地となっています
管理事務所分館。
入口を通って最初にこの建物の前に立ちます。
聖サルバドール分館。
純然たる西洋風といえない不思議な雰囲気。以前は病棟として使われていました。
イスラム建築とキリスト教建築が融合した「ムデハル様式」と言われる建築スタイルです。どこかモスクの雰囲気が漂います。
タイル張りの高い天井。
病院内を飾るモニュメントの石膏モデルが置かれています。
手術棟。
聖ラファエル分館
同じくムデハル様式の建物です。
やはり中はタイル張りで、ここも以前は病棟でした。
当時の病棟風景です。
修道女の宿舎
当時バルセロナにはほとんど看護師もおらず、修道女たちが看護を担っていました。
こちらは病棟、手術室を繫ぐ地下通路。当時としては画期的な機構です。
サンパウ病院管理棟からガウディ通り越しに見えるサグラダファミリア。ここを訪れた2018年時点ではまだマリアの塔も全く出来ていません。
建設開始から間もないサンパウ病院敷地から見たサグラダファミリア(中央左寄りに見える小さな建物)。周りに全く家もありませんし、教会もまだ低い尖頭が建てられているだけです。大都市バルセロナとは思えない田舎の風景ですね。
管理棟に戻ってきました。中に入ります。
モデルニスモ建築らしい壮麗なステンドグラスの天井。
この管理棟のクライマックス、教会部分です。アーチの奥にキリスト像が。
高さ18mの「モンタネールホール」。こんなステンドグラスを持つ病院は世界でここだけでしょうね。
柱の上にある赤い「A 1905」という文字は建設開始の年度を意味します。その左隣にある赤い紋章はバルセロナ市の旗です。この病院の建物にはあちこちに寄付をしたパウ・ジル氏の「P」と「G」のイニシャルが入れられています。これは彼が寄付の際に付けた条件だそうです。病院名にも自分の名前を付けることを要求しており、ジル氏の自己顕示欲が強烈に出ていますね。
ホール内にも美しい彫刻が飾られ、「病院臭さ」が全く見られません。
ガウディは「神は完成を急がない」と言いましたが、教会とは違い病院は「出来るだけ早く患者の治療を行う施設」です。モンタネールが30年近く完成に時間が掛かったのは、病院建設の本来の目的から逸脱していたからだとに私には思えました。それでもこの建物が素晴らしく美しいものであることは疑いありません。
番外編
このときのバルセロナ訪問の際、モンタネール設計の「カサ・フステル」に宿泊しましたのでご紹介します(ホテルのHPの写真を拝借しました)。カサ・フステルは富豪マリアーノ・フステルが妻への贈り物(!)として、1908年にモンタネールに依頼し1911年に完成した邸宅です。2004年にリノベーションされてホテルとして生まれ変わりました。
モンタネールらしい華麗な外壁。
エントランスからホールを眺めたところ。赤い大理石を使ったローマ円柱のような柱が印象的。左側がカフェになります。中央に何故かガウディの椅子が。
ホールから入口を臨みます。中央奥がフロントです。
ホールの照明もきれいです。
一階のCAFÉ VIENÉS。モデルニスモらしい波打つ天井が特徴ですが、このロビーでは週末にジャズライブが行われ、以前ウディ・アレンが出演したこともあったそうです。
不思議な雰囲気の地階の朝食会場。天井はやはりうねうねしています(笑)。
私達の宿泊した部屋です。
ホテルから徒歩数分の近所に「ボタフメイロ」というシーフード料理の名店があります(ホテルにお薦めされました)。イカスミの入った絶品パエリアでした!
1990年3月に行ったロンドンで、初めてエドワードグリーンのドーバーを購入しました。以来、ここの靴の虜になりました。質の良いしっとりとしたカーフ、美しい木型、無い物ねだりと分かりながら、この時代のエドワードグリーンの靴を今も追い求めてしまいます。
他に古い靴も修理して履いています。特に戦前の英国靴は素晴らしいと実感しています。
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グリーン参る
2024/03/14モンタネール設計のホテルをご紹介しました。
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グリーン参る
2024/07/06カサ・フステルの更新をしました。
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