『西部の王者』DVD

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1944年アメリカ作品。
ウィリアム・A・ウェルマン監督。

西部開拓時代に、白人とインディアンの懸け橋となった実在のガンマンである、バッファロー・ビル(本名はウィリアム・F・コディ)の半生を描いた作品。

インディアンと白人の対立、アメリカ東部と西部の生き方の違い、自然と文明の狭間に揺れる主人公と、それを献身的に支える妻の姿など、とても胸を打つ素晴らしい作品なのですが、真に驚くべきはこれが作られた年代です。

1944年、まさに第二次世界大戦の真っ最中であり、大日本帝国との太平洋をめぐる争いはようやく勝利の兆しが見えてきたという、そんなときにこんな映画を作ってしまうというのは・・・。
なぜなら、この映画におけるインディアンと白人の衝突は、どこか日本とアメリカの戦争を暗示しているように見えるからです。
そしてインディアンを決して加害者として描かず、彼らの信念や生き様ゆえに、避けられなかった悲劇として表現していることも特筆すべき点です。
とてもプロパガンダに走りやすい戦時中の映画とは思えません。

西部開拓時代、というと遥か昔のことのように感じますが、主人公のバッファロー・ビルは第一次世界大戦最中の1917年まで存命であり、本作は死後わずか27年後に公開となっています。
アメリカの奴隷解放、インディアンとの戦争というのは、決して大昔の出来事ではないのです。

大塚周夫さんは主人公のバッファロー・ビル役。
僕の知る限り、大塚さんの芝居の中ではもっとも二枚目だと思います。
吹き替えが作られたのは1969年、まだリチャード・ウィドマークやチャールズ・ブロンソンのイメージが定着する前であり、だからこそ今聞くととても新鮮に感じます。

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