- Mahaltaji Museum
- 2F 銅鉱物
- 鉱物標本 ダイオプテーズ(Dioptase)
鉱物標本 ダイオプテーズ(Dioptase)
別名:翠銅鉱
産地:Republic of the Congo
一見するとエメラルド(*1)かと勘違いしてしまいそうな深い翠(みどり)色と透明性、ガラス光沢を有する銅のケイ酸塩鉱物。
1785年に帝政ロシアのAltyn-Tyube銅山(現在のカザフスタン、Karaganda州)にてAchir Mehmedという人物が発見した。彼はそれがエメラルドであると誤認したままBogdanovなる人物に提供、やがてドイツ人の研究者のBenedict Franz Johann von Hermannの手に渡った。彼はその鉱物標本がエメラルドと異なることを突き止め、発見者の名前から1788年にアチライト(Aschrite)と命名した。ただし世間にその名が公知されたのは1802年になってからである。
その間にフランスの鉱物学者で聖職者でもあったRené Just Haüyもまた、この鉱物に興味を持ち、エメラルドと異なって劈開性があること、硬度もエメラルドより低いことから別鉱物であることを突き止めた。彼は1797年に『結晶を通して(="dia")へき開を視覚(="optima")する』という意味でダイオプテーズ(dioptase)と命名した。
Haüyは「結晶は小さなユニットの繰り返しでできている」という理論の提唱から「結晶学の父」と呼ばれている。また、ダイオプテーズを命名した同年には知人でフランス人化学者のLouis-Nicolas Vanquelinがシベリア産のクロコアイト(紅鉛鉱)から発見した新元素についても、酸化状態によってさまざまな色を呈することからギリシャ語で色を意味する"χρωμα"からクロムと命名している(*2)。
その知名度から、後からHaüyが命名したダイオプテーズの方が先にHermannの付けたアチライトよりも世間に周知されることとなった。
因みにラピスラズリを構成する鉱物の一つであるアウイナイト(藍方石)はHaüyの名前が由来となっている。
閑話休題。ダイオプテーズは他の銅鉱物同様に銅鉱床の酸化帯にて二次鉱物として産出するが、基本的に銅の二次鉱物は炭酸塩のマラカイト(孔雀石)(*3)や同じケイ酸塩のクリソコラ(珪孔雀石)が主に生成されるため、産出量はそこまで多くは無い。
前述の通り、硬度は高くないため宝飾品には向いていないが、そのエメラルドに似た見た目から鉱物標本としては人気が高い。
2021年6月、ミネラルマルシェにて購入。産地はコンゴ民主共和国ではなくコンゴ共和国(西側)の方。
*1:エメラルド
→鉱物標本 エメラルド(Emerald)
*2:クロコアイトとクロム
→鉱物標本 クロコアイト(Crocoite)
*3:マラカイト
→鉱物標本 マラカイト(Malachite)