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鉱物標本 アフガナイト(Afghanite)
別名:アフガン石 産地:Sar-e-Sang, Koksha Valley, Kuran wa Munjan District, Badakhshan, Afghanistan ラピスラズリで有名なアフガニスタンのSar-e-Sang(*1)にて1968年に発見された青色の鉱物。鉱物名も見た通りに国名に由来する。 一般的にソーダライトと共に炭酸性変成岩中に産する。 ラピスラズリ(ラズライト)の青色がアルミノケイ酸塩の篭(ソーダライトケージ)に閉じ込められた硫黄に由来しているのと同様、アフガナイトの青色も硫黄成分に由来している(*1)。そのため硫黄を含まないアフガナイトとして無色~白色のものも存在する。 またアフガナイトの特徴として完全な劈開を有しており、硬度が低めで脆いことから宝石としては職人泣かせの石に分類される。 もう一つの特徴として長波紫外線での蛍光性を有しており、明るいピンクからオレンジ色の蛍光を確認できる。 先日アフガニスタンがタリバンに再度支配されたことでミャンマー産のヒスイ(*2)が軍事政権の資金源になっている件同様、今後は再びアフガンで採掘されるラピスラズリやアフガナイトなどの鉱物・宝石資源がある種の紛争鉱物としてタリバンの資金源となるだろう。 本標本は2019年にミネラルマルシェで購入したもの。濃い目の青色の結晶に桃黄色の蛍光が確認できる。 *1:Sar-e-Sangとラピスラズリおよびラピスラズリの発色原理 →鉱物標本 ラピスラズリ(Lapis Lazuri) *2:ミャンマーのヒスイ →鉱物標本 ジェダイト(Jadeite)
鉱物標本 5.5~6 ガラス光沢たじ
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鉱物標本 コバルトカルサイト(Cobalt-bearing Calcite)
別名:Aphrodite Stone 産地:Bou Azzer Mine, Ouisselsate Caïdat, Amerzgane Cercle, Ouarzazate Province, Drâa-Tafilalet Region, Morocco コバルトを含有することでビビッドピンクまたはマゼンタピンクと言われる鮮やかなピンク色を呈する様になったカルサイト(方解石、CaCO3)の変種。カルサイトとスフェロコバルタイト(コバルト方解石、CoCO3)の固溶体とも定義出来る。 元々はイタリア、トスカーナ地方にあるCape Calamita鉱山のVallone stopeという場所で発見されたものがコバルトカルサイトとして言及されていた。 宝石名としてはアフロディーテなどとも呼ばれており、産地はコンゴ、モロッコ、スペインなどが有名である。 本標本はモロッコのBou Azzer産で、この地域は石炭紀の地層に由来するモロッコのコバルト鉱山地帯であり、コバルトカルサイト以外にもコバルトドロマイトやエリスライト(コバルト華)(*1)などのコバルト鉱物が多く産出している。 2021年3月、ミネラルマルシェにて購入。色はピンクというより紫色寄り。実はケースに収まりきらなくて母岩のカルサイト部分を若干削った。 *1:エリスライト →鉱物標本 エリスライト(Erythrite)
鉱物標本 3 ガラス光沢~亜ガラス光沢、樹脂光沢、蝋光沢、真珠光沢たじ
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鉱物標本 ダイオプテーズ(Dioptase)
別名:翠銅鉱 産地:Republic of the Congo 一見するとエメラルド(*1)かと勘違いしてしまいそうな深い翠(みどり)色と透明性、ガラス光沢を有する銅のケイ酸塩鉱物。 1785年に帝政ロシアのAltyn-Tyube銅山(現在のカザフスタン、Karaganda州)にてAchir Mehmedという人物が発見した。彼はそれがエメラルドであると誤認したままBogdanovなる人物に提供、やがてドイツ人の研究者のBenedict Franz Johann von Hermannの手に渡った。彼はその鉱物標本がエメラルドと異なることを突き止め、発見者の名前から1788年にアチライト(Aschrite)と命名した。ただし世間にその名が公知されたのは1802年になってからである。 その間にフランスの鉱物学者で聖職者でもあったRené Just Haüyもまた、この鉱物に興味を持ち、エメラルドと異なって劈開性があること、硬度もエメラルドより低いことから別鉱物であることを突き止めた。彼は1797年に『結晶を通して(="dia")へき開を視覚(="optima")する』という意味でダイオプテーズ(dioptase)と命名した。 Haüyは「結晶は小さなユニットの繰り返しでできている」という理論の提唱から「結晶学の父」と呼ばれている。また、ダイオプテーズを命名した同年には知人でフランス人化学者のLouis-Nicolas Vanquelinがシベリア産のクロコアイト(紅鉛鉱)から発見した新元素についても、酸化状態によってさまざまな色を呈することからギリシャ語で色を意味する"χρωμα"からクロムと命名している(*2)。 その知名度から、後からHaüyが命名したダイオプテーズの方が先にHermannの付けたアチライトよりも世間に周知されることとなった。 因みにラピスラズリを構成する鉱物の一つであるアウイナイト(藍方石)はHaüyの名前が由来となっている。 閑話休題。ダイオプテーズは他の銅鉱物同様に銅鉱床の酸化帯にて二次鉱物として産出するが、基本的に銅の二次鉱物は炭酸塩のマラカイト(孔雀石)(*3)や同じケイ酸塩のクリソコラ(珪孔雀石)が主に生成されるため、産出量はそこまで多くは無い。 前述の通り、硬度は高くないため宝飾品には向いていないが、そのエメラルドに似た見た目から鉱物標本としては人気が高い。 2021年6月、ミネラルマルシェにて購入。産地はコンゴ民主共和国ではなくコンゴ共和国(西側)の方。 *1:エメラルド →鉱物標本 エメラルド(Emerald) *2:クロコアイトとクロム →鉱物標本 クロコアイト(Crocoite) *3:マラカイト →鉱物標本 マラカイト(Malachite)
鉱物標本 5 亜金剛光沢、ガラス光沢、亜ガラス光沢たじ
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鉱物標本 ロードクロサイト(Rhodochrosite)
別名:菱マンガン鉱、Inca Rose、Rosa del Inca、Rosinca、Alma Rose 産地:広西チワン族自治区, 中国 産地によって菱形や犬牙状の結晶から層状、鍾乳石状、ブドウ状まで様々な形態と、ピンクや赤色、バラ色、シナモン色、褐色など、色彩のバリエーションも豊富なマンガンの炭酸塩鉱物。同じ炭酸塩鉱物であるカルサイト(CaCO3)やシデライト(FeCO3)とは固溶体を形成する。 1813年に現在のCavnic, Maramures, RomaniaにあるCavnic銀鉱山から産出したサンプルについてJohann Friedrich Ludwig Hausmannによってそのバラ色"rhodochros"から命名された。 堆積岩や変性岩の低温~中温鉱床の亀裂に地下の熱水脈から上昇してきた熱水溶液の沈降や、含マンガン鉱床の変性接触交代などで形成され、マンガンケイ酸塩のロードナイトなどと共に産出する。特に、熱水脈から生成したものは菱形の結晶として産出しやすい。 宝石としては断面の縞模様がバラの花びらの様に見えるインカローズ(inca rose)が特に有名である。こちらは13世紀頃のインカ帝国の銀・銅鉱山で採掘がされていたが、帝国の滅亡と共にその存在も忘れ去られてしまった。その後1920~1930年代に再発見されたことで1940年代頃からアメリカを中心に収集家の間で取引されるようになった。 日本でも銀山などでよく産出し、不純物を多量に含んだ褐色のものはその色合いから鰹節鉱などと呼ばれる。青森県、白神山地の既に閉山している尾太鉱山でかつて産出していたピンク色のブドウ状(腎臓状)標本は国産品としては特に良質とそれ、今日でも当時のものが取引されている。 中国の広西省のロードクロサイトは本標本のような薄桃色の菱形結晶の標本が多く、同じ炭酸塩のカルサイトの結晶と形状が非常に近い。 見た目の似た鉱物としてロードナイトやパイロクスマンガイト(*1)があるが、両者がケイ酸塩鉱物であるのに対してロードクロサイトは炭酸塩鉱物のため、希塩酸に浸けると前者はそのまま溶解していくのに対して後者は発泡しながら溶解する違いで見分けられる。 また、ロードクロサイトの方が酸化しやすく、表面に褐色の酸化皮膜ができて黒色化してしまいやすい。 2019年、ミネラルフェスタin東京にて瓶詰めで売られていたものを購入。 *1パイロクスマンガイト →鉱物標本 パイロクスマンガイト(Pyroxmangite)
鉱物標本 3.5~4 ガラス光沢、真珠光沢たじ
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鉱物標本 リーベカイトインクォーツ(Riebeckite in Quartz)
別名:リーベック閃石入り水晶 産地:Afghanistan リーベック閃石(Riebeckite、[][Na2][(Fe2+)3(Fe3+)2](Si4O11)2(OH)2)の繊維状鉱物であるクロシドライト (青石綿、ブルーアスベスト)をインクルージョンとして取り込んだ青色の水晶。青色はクロシドライトのFe2+に由来する。 アスベスト(石綿)は髪の毛よりも細い繊維状鉱物の総称で、耐久性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性に優れていると昔から工業・建築材料として利用されてきた。 しかし繊維とは言っても鉱物であるが故に飛散した繊維片を長期に渡って吸入し続けると肺の組織を傷付け、中皮腫や肺がんになるリスクが非常に高くなることが判明した。現在では世界各国でアスベストの使用・製造が禁止されている。 アスベストと呼ばれる鉱物は蛇紋石系のクリソタイル(温石綿)、角閃石系のクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト(直閃石綿)、トレモライト(透角閃石綿)、アクチノライト(陽起石綿)の6種類がある。 クロシドライトはその中でもアスベスト繊維が針のように硬いため、特に毒性が強い(肺を傷付け易い)。日本では1995年に使用・製造が禁止されている。 ただ、本鉱物の場合は水晶内に取り込まれており、飛散の危険性がなくなっているため、安全性は問題ない。 本鉱物は水晶内に少量のクロシドライトが分散したものだが、よりクロシドライト成分が多い、クロシドライト繊維の束に石英が含浸してシャトヤンシー(猫目)効果を示すものはホークスアイ(鷹目石、ファルコンズアイとも)と呼ばれる。さらにクロシドライトのFe2+が酸化してFe3+となり、黄色~褐色に変色したものが有名なタイガーアイ(虎目石)である。 2021年3月、月刊ミネラルマルシェにて購入。青色は青色でも曇り空の様な青色。拡大するとクロシドライトの濃青色の小さな針が観察できる。
鉱物標本 7 ガラス光沢たじ
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鉱物標本 レッドジャスパー自主採集/研磨品(Red Jasper)
別名:赤碧玉 採集地:千葉県、稲毛海岸 レッドジャスパーと記載したが、人によってはチャートと判断する方もいるはず。 ジャスパーもチャートも主成分は共にSiO2、更に色が赤ならば基本的にはどちらも酸化鉄(赤色)や水酸化鉄(褐色)に由来のため、化学組成だけならば実質同じである。 その違いは成因で、レッドジャスパーが酸化鉄を含む地層の隙間にケイ酸分が浸透充填して生じた玉髄(潜晶質石英)の一種であるのに対して、赤チャートはフズリナ等のケイ質殻を持つプランクトンの死骸が含水酸化鉄と共に堆積して出来た堆積岩の一種である。そのため両者のの性質性状には若干異なる傾向が現れるが、実際のところ鉱物としての明確な境界は無い。 本鉱の場合は ・研磨は比較的容易(チャートだと火打石として用いられる程硬くて磨くのが大変)。 ・脈は多め。色は無色透明が主で、堆積性よりも浸透性の印象。 ・採集場所で瑪瑙も拾える。 等の特徴から判断してレッドジャスパー寄りに推測してる。 レッドジャスパー自体は古くから世界中で御守りとして用いられており、13世紀のドイツの神学者Albertus Magnus(大聖アルベルト)も自身の著書である『鉱物書』にて「太陽のエネルギーと共鳴することで大きな保護力を与えるクリスタル」と記しており、現在でもパワーストーンとして「身心の安定性を保つ」等の効果で紹介される。国内の産地としては新潟県佐渡地方で採れる「赤玉石」が有名。 本鉱は2019年に千葉県稲毛海岸にて拾ったもの。稲毛海岸は検見川浜から幕張海岸にかけて東京駅から電車で一時間もかからないビーチコーミングスポットである。今回のジャスパーや瑪瑙の他に貝化石なども打ち上げられるため、拾う事が出来る。
鉱物標本 6.5~7 ガラス光沢,、蝋光沢,、脂肪光沢,、絹糸光沢、無光沢たじ
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鉱物標本 サファイア(Sapphire)
別名:蒼玉、青玉 産直:Madagascar ダイヤモンドに次ぐ硬度を持つコランダムの変種。9月の誕生石でもある。語源は古代ギリシャで青色を意味する"sappheiros"であり、当時は青色の宝石類全般を示す言葉であった。現在ではサファイアの定義はルビー以外の宝石価値を有するコランダム全てを含めるため、透明でもピンクでもサファイアである。 その青い発色はルビーのドーパントがCr3+なのに対してサファイアではFe3+やV3+になることで起こっている。 インドのヒンドゥーの間では元々不幸を招く石とされていたが、仏教徒には縁起の良い石とされ、キリスト教では司教の叙任の際に指輪として与えられたり等、昔から宗教と関わりのある石であった。 2019年、東京ミネラルショーで購入。
鉱物標本 9 亜金剛光沢、ガラス光沢、真珠光沢たじ
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鉱物標本 ルビー(Ruby)
別名:紅玉、Anthrax 産地:India おそらくダイヤモンドの次に有名だろう宝石で7月の誕生石。コランダムの変種であり、モース硬度もダイヤモンドに次ぐ9という硬さ。 この赤い宝石は古く青銅器時代から認知されており、古代ギリシャでは"ἄνθραξ"、古代ローマでは"carbunclus"とどちらも赤く燃える石炭に例えられた。因みに真紅の宝石を額に持つ幻獣カーバンクルの名もこの言葉から来ている。 実際にルビーの名前が用いられるようになったのは中世になってからで、その語源もラテン語で赤を意味する"rubeus"である。 その赤色はドーパントとしてAl3+がCr3+に置き換わることで発色する。ただし混入量が少なすぎると薄赤色のピンクサファイアに分類されてしまい、多すぎると今度は黒灰色になってしまい、その硬さを利用したエメリーという研磨剤扱いになってしまう。そのためルビーがそう呼称されるためのクロム含有量は0.1%<Cr2O3<3.0%とかなりシビアなため、天然物が貴重となる。 また、ルビー内のCr3+の内殻励起吸収帯は紫色と黄緑色にあるため、緑色レーザーを当てると赤く発光する他、UVでも赤色の蛍光が見られる。ただしこれは"純粋な"ルビーの場合で、鉄分が混入しているものは打ち消されてしまって蛍光を見ることができない。そのため玄武岩や変成岩中に産出するものよりも大理石中から見つかったものの方が蛍光が出やすいと思う。 2010年代に科博の売店で購入。最近購入したそこそこ高めのUVライトでようやく蛍光が見れた。
鉱物標本 9 亜金剛光沢、ガラス光沢、真珠光沢たじ
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鉱物標本 シナバー(Cinnabar)
別名:辰砂、丹 産出地:湖南省, 中国(購入した店の人いわく) 西洋錬金術では三要素である水銀、硫黄、塩のうち水銀と硫黄からなることから賢者の石の別名を持ち、中国錬丹術では不老不死の薬と考えられた鉱物。シナバーの語源も失伝してしまっているが、その血のような色からペルシャ語で竜血を意味する"zinjifrah"に由来するのではとされている。 2020年、ミネラルマルシェで購入。 #鉱物
2~2.5 金属光沢 ミネラルマルシェたじ
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鉱物標本 スタルマナイト(Sturmanite)
産地:N'Chwaning mine, Kuruman, Kalahari manganese field, Northern Cape, South Africa 別名:スツルマン石 1983年に鉱物学者のBozidar Darko Sturmanに因んで命名。ほとんどが南アフリカのカラハリ砂漠のマンガン鉱床中二次鉱物として産出。 2020年、ミネラルマルシェで購入。 #鉱物
鉱物標本 2.5 ガラス光沢~樹脂光沢たじ