Asmus Tietchens “Eisgang”

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独逸は、色んなタイプの電子音楽の「天才」をその時代その時代で生み出してきましたが、Asmus Tietchensはその1人でありながら、息の長い活動を続けており、更に、時代や時期に応じて、クラウトロック〜現代音楽〜インダストリアル〜エレクトロ・ポップ・ミュージック〜実験音楽等と関係しつつ、活動してきており、故に、非常に多作かつ多才な作曲家/音楽家と言えるでしょう。個人的には、初期のエレクトロ・ポップのようなインスト曲/作品が好みなのですが、この時期のTietchensの作品は聴いていなかったので、購入した次第です。彼のバイオグラフィーについては以前にも書いてありますので、そちらをご参考にして下さい。
 それと、このアルバムをリリースした蘭のレーベルKorm Plasticsについて少々付加しておきます。Korm Plasticsは、1984 年に 、Kapotte MuziekのFrans de Waard によって設立された実験音楽のレーベルで、1992 年にレーベルは Staalplaat の一部として運営を開始されますが、この運営方向性は 2003 年に終わります。その後、Korm Plastics は 2015 年まで音楽作品をリリースしていましたが、2019 年以降は音楽に関する書籍の出版に積極的に取り組んでいるようです。音楽作品に関しては、初期にはカセットでしたが、やがてレコードや CDRやCDと言う媒体も扱うようになります。この歴史の長さから分かるように、割と欧州のノイズ・シーン、特に音響系ノイズ・シーンの発展に大きく寄与してきた重要レーベルでもあります。そして、そんな中に、Ambient seriesと言うのがあって、Asmus Tietchentsの本作品もそのシリーズの一つとしてリリースされています。と言う訳で、Korm PlasticsのAmbient series (このシリーズは500枚限定となっています)のAsmus Tietchensの本作品”Eisgang (流氷)”の各曲を紹介していきましょう。

★A “Rasch Und Mäßig Bewegt” (19:43)は、一定しない音程ですが規則的な電子パルス音がアクセントになって、そのバックに微細粒子状のドローン電子音と細かく駆動する電子音(恐らくシーケンサー?)が絶妙のバランスでミックスされている曲で、曲名の「素早く適度に動く」と言う意味通りに、流氷の動きを表している匂いがぷんぷんします。
★B “Nahezu Unbewegt” (17:35)は、ゆったりとしたマンモスのような動きを見せる/思わせる電子音の緩やかな波のような繰り返しから成る曲で、曲名の「殆どの動かない」を体現しているように感じます。ミニマルな構成なんですけれど、何か味のあると言うか、微妙な音色の変化のある所が、Tietchensらしい職人技です。

 両面が対になっているのも、コンセプトとして面白いですし、また、パッと聴くと単調にも感じるのかもしれませんが、細かく聴き込んでいくと、Asmus Tierchensだなぁって思う冷ややかと言うかインダストリアルな香り(多分、1985年頃〜1990年代にはノイズ・シーンにも関わっており、また今回のリリースもノイズ・レーベルと言う意味で)を嗅ぎ分けることが出来るので、恐らく、そう言う音色とか細部に拘っているのだなぁと感心させられます。確かに、長尺の曲2曲だけで、しかも、各面の曲が対になっており、かつそれぞれが「流氷」の性質の動と静の側面を捉えているところも面白いと思います。如何にも独逸人らしいアブストラクトな「環境」音楽だと思います。もし、興味のある方は、是非、本作品にトライしてみて下さい! 絶品ですよー。

A “Rasch Und Mäßig Bewegt” (19:43)
https://youtu.be/Z-zSlja4GsE?si=FGoRLl1q1vgoRPCo

B “Nahezu Unbewegt” (17:35)
https://youtu.be/BujID4c1-U4?si=4RDcNoDRkEMWU_b2

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