R.ゼルキンのベートーヴェンピアノソナタ30・31・32最後の3曲

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ドイツ音楽の正統な後継者といわれ、若いころの俊敏で利発なともすれば己主張が勝った演奏から20世紀の終わり近くを迎え、たどり着いていた、伝道者のような境地。この演奏には彼の個性が透明化し、現代のピアノを使用した作品の示す言葉が率直に迫ってくる。ある意味即物的。いい意味で作品の持つ混じりけのない音楽の純度が熱を帯びて聴きとることができる。足しも引きもしない純度のライブとそれにふさわしい聴衆の血の中に流れる音楽のレベルが醸し出す記録。彼の自己批判の強さは最後の最後まで変わらず、彼のベートーヴェンはついにピアノソナタの全集を聴くことは出来なかった。

このCDは1987年7月10日死の約4年前、ウィーン・コンツェルトハウスにおけるライブ。オーストリア放送協会提供のテープによる。
日本語のアーティスト解説は小石忠男さんが担当している。

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