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レイナルド アーンの室内楽集
このCDは彼のピアノ五重奏曲も弦楽四重奏曲も入っていない。だけど、それなりに楽しめる肩の凝らない作品が集められている。夜想曲とかロマンスとかヴィオラのための Soliloque et Forlane performed(独り言とフォルラーヌ=イタリア発祥の速いリズムの伝統的なダンス)の3曲が挟んだヴァイオリンソナタとピアノ四重奏曲第3番で構成されている。このうちヴィオラの曲の『独り言』の部分の旋律はヴァイオリンソナタのテーマともなっている。
ヴァイオリンソナタの方はLabdeちょっと書いてみたい。長い文章にはならないけど。
ここではピアノ四重奏曲第3番を取り上げて紹介する。
レイナルド・アーン/ピアノ四重奏曲第3番ト長調(1946)
第1楽章 アレグレット モデラート
第2楽章 アレグロ アッサイ
第3楽章 アンダンテ
第4楽章 アレグロ アッサイ
アーンが脳腫瘍で世を去る1年前の作品。
サロン音楽を中心とし、歌にその才能を収
少ないながら残された作品は独自の美的空間に淡い色彩を散らしてゆく。
フォーレ亡き後、失われたロマンティシズムはアーンの存在によって間隙を埋め、アーン亡き後近代フランス音楽の印象的な流れの中に没した。
この作品もヴァイオリン・ソナタ同様に美しく優しい。
第3番と記載されるが、それでは第1番と第2番はどうしたら聴けるのか?
ピアノ三重奏曲は何処へ行ったのか?
…とまあ個人的な不満は大いにあるのだけれど、とりあえず、この第3番を聴く。
ここにはフォーレ以来最良の近代フランス音楽の継承がある。
印象派が持つ全方位的な光彩はなく、純粋に音楽は古典的な構成によっている。
フォーレがブラームスを思わせるような構築性に馥郁たる香気を載せてきた音楽ほどではないにしろ、ここには聴くものの息づかいと緊張を至近距離から感じながら、その心の光がもれるわずかな隙間に優雅な身のこなしで滑り込む。
明るく簡潔でありながら全ての角を取り去った滑らかな音の流れは旋律という律動ではなく、清冽な無味の水が滑らかな石の上を滑るように流れるようだ。
色彩を抑えた音楽は第3楽章で更に光を落としながら灰と黒の間に血の通った肌の色を差す。
特に第3楽章が出色。時間がゆっくり流れていく音楽。馥郁とした香気の漂うロマンティシズム。
https://youtu.be/p8zlsvrp6yg?si=J0ONqHCJ-OaP2dgg
piano:Steohen Coombs
Violin:Charles Sewart
Viola:yuko Inoue
Cello:Philip de Groote
ジャケットの絵はフェリックス・ヴァロットンの「The Balloon」(ボール=ボールで遊ぶ子供のいる公園)1899年