プレミアカード 5  スピノサウルス

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スピノサウルス この奇妙な完成品

 スピノサウルスはバリオニクス科と二つに分かれた一方、その名を冠したスピノサウルス科に属している。第2次世界大戦でドイツの博物館が2日に亘ってイギリス空軍の爆撃を受け、その主要な拠るべき標本をすべて失い。全体像はいまだに謎に包まれている。実に様々な段階で多様な説があり、一般的に定着していると思われる『魚食性』という食性についてさえ、定まったとは言えない。
記憶に新しいところでは2014年に完全な水生の恐竜として新たな復元がなされたが、化石の分類の妥当性や、部分的標本にキメラの疑いもあるとされ、さらに、水中での巨体の安定した姿勢を維持するための合理的な体構造についても疑義が生じた。
スピノサウルスにはその産出地による2種類が命名されている。
一つはモロッコの出土であるマロッカヌスともう一つが一般的に知られるエジプトが出土したエジプティアクスの2種である。
そして、2020年になって新たにエジプティアクスのものとされる長さ60センチに及ぶ尾椎の神経棘が発見された。
第2次大戦で失われた資料以来微細な骨格片の研究が行き詰まった感があったころに、従来とは異なる上下に広い幅を持った尻尾を持つ新たな復元図が登場した。
しかし、第2次世界大戦時に失われた復元標本の詳細な絵と写真が残されており、状況は頼みのホロタイプのj標本が正確であったかどうかの意見も分かれてきた。
この先どうなるのかちっともわからないまま、幅の広い尾を持った巨大なこの恐竜の新復元画像は、瞬く間にインターネットを席巻し、リアルなビデオまで登場してきた。
私も一応、完全水棲型の新復元に基づく画像をいくつか描き、バリオニクス科とスピノサウルス科をイメージとして分割し始めている。
しかし、このカードができた頃にはそんなことは思いもよらないことだった。考古学の中で不可思議な大きなトカゲが研究テーマとされて約一世紀。
たった一つの尾椎の塊りが発見だけで科のすべてが塗り替えられる極端。
棲み分けによる陸生と水生の同種の体構造の環境への適用変化はどうなの?
進化が起こるにはあまりある歳月を経て現代に再現される完成品は現物とどれほどかけ離れているのだろうか。

海イグアナと陸イグアナが同時に現生しているような可能性って、稀有なの?

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