Joachim Raff /Cello Concertos (No.1&2 etc)

0

ヨアヒム・ラフ/チェロ協奏曲第1番ニ短調OP.193 : チェロ協奏曲第2番ト長調op.Posth(遺作)
        チェロとピアノのための幻想小曲集op.86No.1
        チェロとピアノのための2重奏曲op.59

Cello:ダニエル・ミュラー=ショット Piano:ロベルト・クーレック
Orch.バンベルク交響楽団 Cond.:ハンス・シュタットルマイアー

チェロ協奏曲2曲の感想を付けときます。

チェロ協奏曲第1番ニ短調OP.193
第1楽章:アレグロ
第2楽章:ラルゲット
第3楽章:フィナーレ:ヴィヴァーチェ

チェロのヴィルトゥオーソ用に作曲されたような曲でロマンティックなテーマが一度まわるとチェロの独壇場になる。
管弦楽のオブリガード付きチェロ独奏曲と言った感じだ。
当時のほとんどの協奏曲はオーケストラパートはあまり充実しているものはない。サン・サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番だっていきなりヴァイオリンの独奏が始まる。
僕が大好きで非常にマイナーなチェロ協奏曲にダヴィド・ポッパーのめっちゃくちゃ難曲があるけれど、それもチェロが重く飛び出してくる。要はこんなものなんですよ。
ドヴォルザークやエルガーのような完成度の大曲は珍しいんではないでしょうかね。
それを承知で聴いていると、この曲はこれで、素敵なんですよ。

第1楽章 アレグロ、第2楽章ラルゲット第3楽章フィナーレのヴィヴァーチェまで切れ目なしに演奏されます。
魅力的かというと何処かで聴いた旋律だといわざるを得ない優美な旋律をチェロが歌い楽曲が流れ始めます。全楽章に亘るチェロの力の入ったチェロのパートは素晴らしいですね。
ただ、第2楽章のラルゲットではオーケストラの今一歩の緊張感が欲しいです。オケの善し悪しをあまりいってもしょうがないんです。
いつもいつも最高のオーケストラで聴く音楽だけが音楽ではないのですから。
ローカルでもいいじゃないですかね。
純粋にそんな点を除いてゆくと、この曲はロマンティックでチェロのよく歌ういい曲だと思います。

ところで、この曲を弾いているダニエル・ミューラー=スコットというチェリストはイケ面ですね。
まるでバイオリンの高音を登ってゆくように軽々と高く飛翔するカデンツァは技術的には文句のないレベルでした。
日本あたりへ来れば騒がれますよこの人。(すでに来日してるんかな?)並みの男前ではないです。

チェロ協奏曲第2番ト長調(遺作)
第1楽章:アレグロ
第2楽章:アンダンテ
https://youtu.be/RLEgOTYqZ_0?si=b9aG8D2huafCfgTp

第3楽章:アレグロヴィヴァーチェ

第1番と同じくこの曲もチェロが生き生きと鳴る。

第1番より少しだけ、オーケストラが頑張る。
ラロやサン・サーンスと遜色ない。
カバレフスキーを弾いた友・友馬くらいが弾けば映えるかな。
カバレフスキーを弾くよりはまだ弾きやすいと思うんだけど。
ラフのこの作品は少しまとまりに欠けるか、テーマにあまり魅力を感じないけれど、丁寧に作り込まれていて誠実で聴きやすい作品です。
第2楽章(緩徐楽章)は抒情的で美しいし、取っ付きやすいと思う。
チェロをヴァイオリンのように扱えることが前提になっているようなところがある。イケ面ミューラー・スコットはバンベルクSO.の決して厚いとはいえぬ音のフォーマットの上で、楽々とこなしており、フレージングが少し堅いけれど、チェロは朗々とよく鳴っていて、こういう音が好きなボクは悪くないと思っています。
マイナー・チェロ協奏曲というには惜しい気がする。
ラフの作品に入るにはこの曲あたりが最適かもしれない。
協奏曲もまだピアノの方のCDが届かず、一度しか耳にしてないのでなんともいえませんが、音の響き方はメンデルスゾーンのようです。
実際にこのスイス生まれの隠れ大作曲家はブラームスとも親交があったようだし、メンデルスゾーンとも友人関係にあったようですね。
2つの少し長めのピアノとヴァイオリンの二重奏曲が入っています。フォンタジー・ステュック(小幻想的作品)の方はピツィカートの取り方がピアノとの掛け合いになっていてちょっとこういう扱いは珍しいですね。ピアノパートも明晰でシンプルな作りでこれもいいかも。

ピアノとチェロのデュオ、と幻想作品の小品も音楽のレベルは変わらず。カヴァティーナだけが突出して聴かれていますが、こういう小品もの素晴らしいところもお聞き逃しなく。

ジャケットの絵はアーノルド・ベックリンの『ミーアの館』の一部を切り取って使っています。

Default