- Japan Hand Engraved Revenue collection Museum
- 14F 第三次発行10銭青色(和紙、目打)/ 3rd Issue, 10Sen blue, native paper, perforated
- 第三次発行10銭青色:印面変種「右額面銭の点落ち」 / 3rd Issue 10 Sen blue : variation - right side value inscription "Sen" dot missing
第三次発行10銭青色:印面変種「右額面銭の点落ち」 / 3rd Issue 10 Sen blue : variation - right side value inscription "Sen" dot missing
第三次発行10銭青色で、右額面の「銭」の旁の点が欠落している印面変種。印面変種の少ないこの印紙では貴重なアイテムである。カタログ未記載。
画像2枚目はエラー部分の説明。
この印面変種は、画像3枚目に示した耳紙付きの縦3連マルチプルの一番下の印紙で発見したのであるが、耳紙のおかげでポジションが41番と分かった。ちなみに別アイテムでも紹介したように、第三次発行10銭青印紙ではシート四隅の耳紙部分に点トンボが施されており、この例でも青い点があるのがわかる。
[2023/9/22追記]
muuseoにて数多くの魅力的な印紙・証紙のコレクションを展示されておられる印紙類収集家さんのミュージアム「revenue stamps Museum」を拝見していたところ、ミュージアム3F・手彫証券印紙にて展示されているアイテム「第二次手彫証券印紙 十錢 点無しエラー」(下記URL参照)と、ここで展示している第三次10銭エラー印紙が同一ポジションであることに気づいた。
https://muuseo.com/carow151852/items/505?theme_id=34634
画像を重ね合わせて確認したところ、特徴的な字体の「可」や「刑」はもちろん、紋様の細部まで完全に一致する。よって、このエラーは偶発変種ではなく、忘刻が原因の定常変種であることが立証されたこととなる。ついては、本アイテムの説明から、偶発変種の可能性云々にかかる記載を削除した。
古屋(2011)及び長谷川(2016)によると、第二次発行10銭青(和紙・ルーレット)と第三次発行10銭青(和紙・目打)では、第1版から第3版は第一次発行10銭赤から流用された共通の原版を用いていたとある。したがって今回の例も第二次10銭と第三次10銭で共通の版が用いられたことの貴重なエビデンスである。
ところが、ここで展示しているエラー印紙が収録されている元リーフ(別コレクションルームで展示を進めている「浅野コレクション」のもの)には「第5版」とあり、従前の説(第1版から第3版)と異なっている。これについては、元々の版別が誤っていて第1版から第3版のいずれかである可能性が高いが、従前の3つの版以外にも第二次と第三次とで共通のものがあるという可能性もあろう。小生のコレクションには、第二次10銭青の第4版と紋様の特徴が酷似している第三次10銭青印紙がいくつか存在しており、新たな共通版が存在する可能性も十分あるのではないかと考えている。いずれにせよ、本格的に版別の見直しを行なって結論を出したく思っている。
版別はともかくとして、第二次発行と第三次発行との同一ポジション印紙で、顕著なエラーをもつものとしても、カタログやモノグラフにも掲載されていない貴重な実例である。
140年あまりの時空を超えて、この2枚の印紙がデジタル世界で偶々再会したという不思議さに驚いている。貴重なアイテムをご紹介いただいた印紙類収集家さんに感謝申し上げたい。
[2023/9/23追記]
古屋カタログ(&長谷川カタログ)の版別を根拠として、ここで展示しているエラー印紙の紋様の特徴を分析したところ、第5版とは言い難く、かつ、手元の版別済みリーフと照合したところ、第1版から第4版とも言い難い、という暫定的な結果が得られている。
ということは、このエラー印紙は第6版以降のものである可能性が高く、第二次10銭と第三次10銭との共通版の研究において貴重なエビデンスであることが改めて確認できた。
引き続き版別作業を進めるが、詳細についてはかなり長くなりそうなので、小生のLabジャーナル「手彫証券印紙メモ」にて改めて整理して報告したい。
[2023/9/24追記] 上述した「浅野コレクション」のマテリアルを精査したところ、他の版でも第二次発行10銭青と第三次発行10銭青とで同一のポジションが存在することが確認できた。先に報告したものを含め、現時点で判明しているのは第1版、第2版、第3版(これらは第一次発行10銭赤からの流用)、第6版、第7版、第10版の合計6つの版である。
第三次発行印紙のうち、5銭茶褐色については古屋、長谷川カタログで合計6つの版が第二次発行の原版を流用したとされているところ、谷川純氏の大著「手彫証券印紙」(2022)では「ルーレットが14版であったので、目打の5銭も14版が確認されている。全部が同一版の流用である」となっている。第三次発行印紙は引き続く第四次発行(洋紙・目打)のフォアランナーとして、また、第二次発行と第四次発行の間の遷移時期の一時的なバージョンとして位置付けることができるので、第二次発行がなかった1銭黒色は新版が作られたとしても、5銭と10銭はもしかしたら全てが流用版であったのかも知れない。これを実証するためには、ルーレットと(和紙)目打との同一ポジションをひたすら探して、正確な版別を行う必要がある。気の遠くなるようなリサーチであるが、分かったことは(先述のとおり)小生のLabジャーナル「手彫証券印紙メモ」にて改めて整理して報告したい。