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Ectillaenus perovalis
欧州のオルドビス紀から広く産出するEctillaenusの仲間ですが、英国産は比較的小型の種類のようです。特にこれといった特徴の無い地味な種類でありますし、英国産の中では入手はしやすい方ですが、手を出すコレクターは英国産を集めているか、種類を多く集めているなどの理由が無ければ所有しているコレクターは少ないのではと思います。Shropshireらしい黒色系の母岩と褐色の組合せで、見た目の不完全さが化石らしくて英国産の渋さがよく表れている標本です。
Lower Ordovician Illaenidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-487 Hop ShaleTrilobites
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Xystridura templetonensis
オーストラリアを代表する三葉虫の一つです。同じ産地からX.saint-smithiなど他の種類も見かけますが、Xystriduraの中では本種は大型の種類と認識しています。頭部も尾部もRedlichiidaの仲間としては特徴的です。本種は、状態の良い個体がとても少なく、いわゆる完全体の個体は先ず見かけない種類です。
Middle Cambrian Xystriduridae,Paradoxidoidea,Redlichiina,Redlichida TRI-449 Beetle CreekTrilobites
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Aulacopleura koninckii
シルル紀チェコ産では、最もポピュラーな種類です。白い体に細い中葉の特徴がありますが、Proetida(プロエタス目)に属していますが、平坦でカンブリア紀のPtychopariida(プチコバリア目)の仲間の様に見えます。初期のAulacopleuroidea(超科)と考えられていて、分類上は、デボン紀のCyphaspisの先祖に当たりますが、似つかない形態をしています。小さな複眼と小さくて鋭い頬棘が確認できます。群れで暮らしていたのでしょう、3体の個体が一緒に産出しています。
Middle Silurian Aulacopleuridae,Aulacopleuroidea,Proetida TRI-47 LitenTrilobites
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Encrinurus fimbriatus
福地といえば最盛期はデボン紀の印象が強いですが、三葉虫においてシルル紀からペルム紀まで広い時代の報告があります。本種は、福地でも最も初期の三葉虫であり、世界的にシルル紀を代表する種類のEncrinurusの仲間です。国内では他に岩手などでも同種は産出します。尾部のみの部分化石ですが、本種の特徴的な尾部の畝など確認することができます。
Upper Silurian Encrinuridae,Cheiruroidea,Cheirurina,Phacopida TRI-568 Yoshiki(吉城層)Trilobites
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Asaphiscus wheeleri
ユタ州産代表種Elrathia kingiよりは産出量は少ないですが、同じ産地で一般的な種類として安価に入手できる種類です。市場に見られる本種の多くの標本は、Librigena(自在頬/遊離頬)が欠損している脱皮殻の標本が多いですが、この標本は綺麗に残っています。三葉虫の美しさは、シンプルな種類でも引けを取ることは無く、また値段や希少性では無いと思わせる標本です。
Middle Cambrian Asaphiscidae,Ptychoparioidea,Ptychopariina,Ptychopariida TRI-49 WheelerTrilobites
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Platypeltoides sp.
三葉虫の生態を知るうえで、他の生物との共存していた事が分かる標本は貴重です。母岩の網目状の模様は、Araneograptus murrayi(HALL1865)で古生代の海では普通に棲息していたGraptolite(フデイシ)です。フデイシは古生代の示準化石でカンブリア紀から石炭紀前期に生存していた半索動物です。フデイシの網目状の美しい模様は、美術的に美しく三葉虫を引き立てていて、当時の三葉虫も柔らかく隠れやすいフデイシに身を潜めていた事が想像できます。この種類は、市場では2つの属名が混在しますが、今のところ、Symphysurus=Platypeltoidesとういう認識です。 <修正2020.6.18> 文中のAraneograptus murrayi(HALL,1865)について自己調査していたのですが、当初Bryozoa(外肛動物/コケムシ)としていたのが、フデイシ/筆石/Graptolite(半索動物門フデイシ綱)が正しいとの結論に達しました。誤記載であったことをお詫び申し上げます。
Ordovician Nileidae,Cyclopygoidea,Asaphida TRI-283 FezouataTrilobites
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Calymene clavicula
C.claviculaという種類は、この世界では比較的知名度もあり、古くから知られている種類です。アメリカを代表するCalymeneであるのですが、市場に出てくる標本は意外と少なく、実は入手し難い種類であります。オクラホマ州産ですが、デボン紀でなくシルル紀の化石です。白っぽい母岩に透明感のある殻が残っており、見た目にもきれいな化石です。
Silurian Calymenidae,Calymenoidea,Calymenina,Phacopida TRI-182 HenryhouseTrilobites
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Diacalymene ouzregui
Diacalymene ouzreguiというと博物館のお土産やミネラルショーで箱売りしている様な価値の無い化石というイメージが収集家の中でも定着しており、軽視しがちな種類です。しかし、この様なノジュール(Nodule)中に埋まっており状態の良い標本は、箱売りの中を幾ら探しても出てきませんし、安価ではありません。この種類は確かに多産し、二束三文の標本が大多数なのは認めますが、Calymeneという種類が当時としても繁栄し、三葉虫の代名詞といっても良い程の繁栄を極めていて完成されたフォルムを有するのは事実です。また、これだけの数があるのにも関わらず謎も多く、正確な産地が分からない標本が多いです。 (Left side:Negative/Right side:Positive)
Upper Ordovician Calymenidae,Calymenoidea,Calymenina,Phacopida TRI-2 KtaouaTrilobites
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Saharops bensaidi
サハロプスは、サハラ砂漠に由来する属名を持つ、デボン紀モロッコ棘々種の一つです。Comuraにとても良く似ていますが、立体方向の棘が短く鋭いものとなっています。大きさは、近縁のComuraに比べると大型化している印象があります。均整の取れたデザインで個人的には好きな三葉虫です。産地が非常に限られていてBoulachghal(Boutchrafine)でしか確認されてこなかったこともあり(近年産出は、Jbel Oudrissでも報告がある)、簡単に入手できない種類でした。 【標本リンク】Extinctions,Inc http://www.trilobites.com/site_arc/index.cfm?action=item&prod_id=3748&
Lower Devonian Acastidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-676 -Trilobites
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Paradoxides davidis
化石シリーズとして4種一組で4次まで発行されたうちの1次のシリーズに含まれます。カナダから産出した古生物がモチーフとなっていて、ストロマトライトやバージェスのオパビニア、海サソリが他の図案です。Paradoxides davidisは、ニューファンドランド島のカンブリア紀より見つかる種類で、成体は30㎝を超える大型の種類です。図案は、化石ではなく復元図となっています。この種類は今となっては入手が困難ですが、三葉虫コレクターなら見覚えがあると思います。コレクターのバイブル的な図鑑であるRiccardo Levi-setti著「THE TRILOBITE BOOK」では、他種は基本1ページ毎に紹介なのですが、本種は10ページ以上に渡り、この種の一級の標本が並び、R.Levi-settiにとって最も気に入っている種であることが分かります。この本は3版に当たりますが、2版では表紙を飾っていたことからも推測できます。黒色系の頁岩に黄色のコントラストのParadoxides davidisは、R.Levi-settiでなくても非常に魅力的に見えます。 左上:Stromatolites 右上:Opabinia regalis 左下:Paradoxides davidis 右下:Eurypterus remipes
Canada Paradoxides davidis July12.1990 3,750,000Trilobites
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Coronocephalus gaoluoensis
シルル紀を代表する美しい中国産のCoronocephalusですが、小種名は混乱していましてC.gaoluoensisなのか、切手どおりC.gauluoensisなのかも実は正しくは分かりません。C.jastrowi(GRABAU1924)やC.rexといった名称でも見かけますが、全部同一種と思います。最近は記載が確認できるC.jastrowiが一番正しい気がしてきています。小型シートの他の図案に選定された化石も見ていきますと、Eusaurosphargis dalsassoi(三畳紀のイタリア、スイスで見つかったトカゲ)、Ammonoidea(亜綱)、Tyrannosaurus rex(北米、白亜紀獣脚類)、何故この4つの図案が選定され、この中で唯一アンモナイトが学名ではなく分類名なのか気になります。日本などでは切手の図案は慎重に調査されているのが普通ですが、アフリカ諸国の図案は、内容について余り精査されずに担当者レベルで決定した内容で通ってしまうのでしょう。
Central African Republic Coronocephalus gaoluoensis 2017 -Trilobites
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Dicranurus monstrosus
中央アフリカという国は、クーデターを繰り返す政情が不安定な国というイメージしか無い国ですが、多分外貨獲得の手段として切手を多産しているのではと思われます。図案は、一見きれいに纏まっているように見えます。よく見ていくと特に繋がりの無い多方面の産出地と、時代の絶滅生物を、化石と復元図を併記する形で図案化していることに気が付きます。Dicranurus monstrosusは、言わずと知れたモロッコで産出する三葉虫界を代表する種類ですが、下地からタブにかけての化石は三葉虫なのでしょうが、全く解読不能な三葉虫が描かれています。やはり知識の乏しい選者が図案化したのでしょうか、探せば不可解な内容が散見できるアフリカ諸国の共通の図案化要素だと思います。他の化石は、Dicranurus monstrosusとは比べ物にならない博物館所有の凄い標本が図案なのですが、Darwiniusは裏焼きになってしまっていて、ここにも詰めの甘さが目立ちます。
Central African Republic Dicranurus monstrosus Mar.25.2013 -Trilobites
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Kaolishania pustulosa
知る限り世界最初の三葉虫図案の切手です。Kaolishania pustulosa(SUN1924)という種類は実物では見たことが無いのですが、Corynexochida(目)、Leiostegioidea(超科)に属する種類で、カンブリア紀の三葉虫です。もう少し三葉虫らしい種類を図案に持ってきても良さそうですが、最初から部分化石且つ、玄人好みしそうなマイナーな種類が選出されたのは何故なのか疑問が残ります。ほぼ中国産に限られるLeiostegioidea(超科)の仲間を分かって図案に選定していたのなら、選定者は三葉虫の専門家だったのかもしれません。上部にはパラドキシデスと思われる三葉虫が水中を遊泳する姿が描かれていています。3組の切手のその他には、中生代の恐竜(Lufengosaurus)と新生代のヘラジカ(腫骨鹿)が図案に選定されています。
People's Republic of China Kaolishania pustulosa Apr.15,1958 -Trilobites
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Cheirurus insignis/Deiphon forbesi
チェコで活躍した地質学者Joachim Barrande(1799-1883)の功績は、三葉虫収集家に改めて語る必要もないでしょう。ここに登場するチェコ産の三葉虫の何れも彼に係わりがあり、命名や小種名に彼の名が刻まれています。チェコの三葉虫には色々な種類があるのですが、選者は何故かファコプス目の種類だけを4つ選定しているのは好みの問題なのでしょうか。デザインとして見た時、凹版印刷の細かい描写により化石の質感が表現されています。数ある三葉虫切手の中でも優れたものと思います。 左上:Cheirurus insignis(BEYRICH1845) 右上:[タブ]Eudolatites(Destombesites) dubia(BARRANDE1846) 左下:[タブ]Placoparia barrandei(PRANTL&SNAJDR1956) 右下:Deiphon forbesi(BARRANDE1846)
Czech Republic Cheirurus insignis/Deiphon forbesi June23,1999 -Trilobites
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Selenopeltis buchi buchi
1968年にプラハで開催されたIGC「第23回万国地質学会議」を記念した切手です。因みに日本でも1992年(29回)に開催され、記念切手も発売されています。Selenopeltis buchiといえば、三葉虫コレクターであってもモロッコで産出する大型のSelenopeltisを指すと思われている方が多いと思いますが、実際に命名されているのはチェコから産出した標本です。実際に現物を目にすることが困難な種類の一つですが、三葉虫研究に貢献したチェコスロバキア(当時)の代表的な化石の一つとして、チェコスロバキア(当時)の三葉虫代表として図案化されています。右上には、激しく褶曲した地層と思われる図案と併記されております。 30h,Amonit Hypophylloceras Bizonatum (Fritsch) 60h,Miocenní žába Paleobatrachus grandipes (Giebel) 80h,Řez Geodou Achátu 1kcs,Miocenní mlž Chlamys gigas (Schlotheim)
Czechoslovak Socialist Republic(1948-1989) Selenopeltis buchi buchi(BARRADE1846) Aug.8,1968 650,000Trilobites