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Kettneraspis angelini
ゴットランド島のKettneraspisの仲間など、さすがに現物をご覧になった方は少ないと思います。ゴットランド島は、シルル紀の世界的な代表地でありながら、保護も徹底されており、知名度が高い割に市場に出てくる標本が極めて少ない産地です。稀に出てきてもCalymeneやEncrinurus、Proetusといった種類であります。この標本は、この地の標本では例が少ない棘の浮かし彫りがされており、保存状態も申し分ありません。後の時代のKettneraspis/Leonaspusとほぼ同じ形態をしています。
Middle Silurian Odontopleuridae,Lichida TRI-420 Hemse Marl(Hemse Group)Trilobites
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地球展 極地の過去と現在を中心として
1970.12.19~1971.5.9まで、小田急百貨店(東京)あべの近鉄百貨店(大阪)山口県立博物館(山口)岩田屋(福岡)名鉄百貨店(愛知)今井百貨店(北海道)と全国6会場を回った企画展です。極地の銘打っているだけに北極圏や南極の岩石や化石が多く出展されている事が分かります。三葉虫に限るとスペッツベルゲン島(ノルウェー領スヴァールバル諸島)のオレネルスや南極大陸のプティコパリアなどが登場しています。これらは、今では入手できるような化石ではなく、ノルウェー古生物博物館や米国国立科学財団から提供された標本の様です。それ以外にも三葉虫が国立科学博物館所有の標本で多く登場します。今でこそ三葉虫化石は海外の標本を入手できますが、昭和40年代初頭までに収集できた種類が何なのかという事がコレクターとして興味深いです。バージェスの大型のオギゴプシスや中国遼寧省産と思われるレドリキアなど今では入手が困難な種類も多く登場していました。
国立科学博物館事業部 地球展 極地の過去と現在を中心として - JapaneseTrilobites
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Acastella heberti
ウクライナ西部のポジーリャと呼ばれるエリアからは、シルル紀後期からデボン紀初期の地層がある様ですが、情報が乏しく何よりも特筆すべき様な派手な種類は出てこないため、認知度は低いと思われます。幾つかの文献や図鑑、Web上などで見かけれも本種かシルル紀のカリメネ辺りと地味な数種しか知られていません。
Lower Devonian Acastidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-513 BorschtivTrilobites
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Girvan Fossils
スコットランドGirvanは1800年代から化石の採取や研究が行われた歴史的な産地です。主にオルドビス紀後期からシルル紀初期までの地層があり、多くの三葉虫を産出した事で知られます。現在は新規採掘は出来ないのですが、ここで産出した三葉虫を中心とした一級の標本がフルカラーで見る事が出来ます。非常に味わいのある茶系の化石らしい風合いがあり、個人的に好きな産地であります。この冊子の発行元のマッケシュニー研究所は、1889年に開設されたGirvanの歴史文化施設です。(Friends of the McKechnie Instituteとなっているので、研究所で働く研究員が自費出版した可能性はあります)
Mark Hope Girvan Fossils 0-9544219-2-2 EnglishTrilobites
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Early Cambrian Malong Fauna and Guanshan Fauna from Eastern Yunnan,China(云南东部早寒武世马龙动物群和关山动物群)
世界的に有名な澄江動物群に関しては、現地を中心に数々の書籍が発行されていますが、後に続く同系統の動物群に関しては、まだ十分な書籍が発行されていません。そんな中、現地の発行で馬龍動物群と関山動物群の図鑑的な書籍だと思います。意味が理解できるようで中国語(簡易体)の壁があって理解が難しいのは確かなのですが、謎めいた動物群の理解を紐解くには貴重な資料であります。
Luo Huilin,Li Youg,Hu Shixue,Fu Xiaoping,Hou Shuguang,Liu Xingyao,Chen Liangzhong,Li Fengjun,Pang Jiyuan and Liu Qi Early Cambrian Malong Fauna and Guanshan Fauna from Eastern Yunnan,China(云南东部早寒武世马龙动物群和关山动物群) 978-7-5416-2957-0 ChineseTrilobites
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Labiostria westroppi
Ptychopariida(目)の仲間に見えますが、Asaphida(目)の最も初期のグループであるAnomocaroidea(超科)に属する仲間で、後の時代のAsaphida(目)の仲間とは似付かない姿をしています。しなやかそうな肋棘が肋毎に長く伸びており、見た目はModocia typicalisの様です。Mckay Groupの三葉虫はカンブリア紀らしい平坦な種類ばかりで、どの種類も似通って見えます。
Upper Cambrian Anomocaridae,Anomocaroidea,Asaphida TRI-86 Mckay GroupTrilobites
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Scabriscutellum sp.
背中に棘のあるScabriscutellumが登場しだしたのは、1990年代後半だったと記憶しています。デボン紀モロッコ産は、既に様々な棘々種が登場していましたが、サンドブラストを用いた革新的な剖出技術の向上により、より繊細な体表面の凹凸を飛ばす事なく残す事が出来た要因が大きいと感じます。それまでは、棘があるなんて全く想像もしていなかったScabriscutellumに新たな姿があったとは驚きを得ると共に、更にモロッコ産三葉虫の多様性と保存の良好さに魅了されて行くのでした。本標本も保存が良い個体に見られる尾板縁のギザギザが確認できます。
Middle Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-721-2 -Trilobites
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Estaingia(Hsuaspis) bilobata
カンブリア紀前期では世界的に有名なEmu Bay Shaleは、三葉虫に興味が無い一般の方でもバージェスや澄江と並ぶ知名度はあると思います。この地の三葉虫は種類は少ないですが、巨大化したRedlichiida takooensisや体節の多さで有名なBalcoracania dailyiの影に隠れて地味な種類です。初期の三葉虫は分類的に難しい所があり、本種もEmuellidae(科)という特殊な存在であります。この標本は欠損していますが、本来ならば頬棘がある種類です。
Lower Cambrian Emuellidae,Emuelloidea,Ptychopariida TRI-131 Emu Bay ShaleTrilobites
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平成22年度企画展 節足動物の多様な世界-三葉虫からカブトムシまで-
節足動物は分類学上、節足動物門(Arthropoda)に属する一大グループであり、現在においても地球の生命の中で最も多様化が認められるグループであります。三葉虫も勿論、このグループに属しますが、現代においても余りに多様化していて地球に適応しているとはいえ、範囲が広すぎる事と、どちらかというと華のある対応ではないでしょうから、中々スポットを当てられない気がしています。この企画展では、節足動物の知られていない多様な形態や生態について多くの標本と共に解説されています。
Tochigi Prefectural Museum(栃木県立博物館) 平成22年度企画展 節足動物の多様な世界-三葉虫からカブトムシまで- 978-4-88758-058-9 JapaneseTrilobites
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TRILOBITI - Guida essenziale al riconoscimento e classificazione
2010に出版された[The Back to the Past Museum Guide to TRILOBITES]は、多くの三葉虫コレクターにとって教科書として、また目標の一つとして満足できる内容でした。ここ数年は既に絶版となり新たに入手できなかったのですが、今回、Second Editionとして改訂され刊行されています。装丁は以前はハードカバーでしたが、今回はソフトカバーになりました。言語も英語からイタリア語になったことで、少し読みにくくなっています。構成は依然と同じですが、一部標本が入れ替わっています。より良い標本に置き換わっていますが、全体を見渡してみると標本の9割くらいは以前と同じだと思います。当Museumの各標本の分類で、「New Classification」に関して、この図鑑を参考にしております。 【外部サイト】Enriko Bonino氏 https://enrico-bonino.eu/trilobiti/
Enrico Bonino,Carlo Kier TRILOBITI - Guida essenziale al riconoscimento e classificazione 9-782960-243604 ItalianTrilobites
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Crotalocephalina secta
Geracephalinaとも呼ばれます。大型化した種類で、もし完全体があれば10㎝を超える日本離れした三葉虫だったと思います。全体像のイメージはJorfのCheiruridae sp.に近いです。尾部のみの部分化石ですが、鉤状の鋭い棘の尾が3対出ています。これ程、特徴的な尾を持つ種類が日本にいた事が驚きです。
Lower Devonian Cheiruridae,Cheirurina,Phacopida TRI-565-2 FukujiTrilobites
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Cyphaspis elachopos
三葉虫研究史の原点ともいえるDudleyは、古生物研究史においても原点ともいえる重要な役割を果たしました。100年以上前に閉鎖しているDudleyの三葉虫コレクションは、世界の自然史博物館や個人コレクターに収蔵され、手放されることが少なく入手が難しい産地であります。かつてDudley Bugと呼ばれ多産したと伝わるCalymene blumenbachiiですら市場で見かける事はなく、本種の様な元々産出量が少ない種類の入手は、望んでもコレクションできないことが普通です。
Middle Silurian Aulacopleuridae,Aulacopleuridea,Proetida TRI-496 Wren's Nest and Castle Hill, Dudley,England,UKTrilobites
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Szechuanella granulata
ParaszechuanellaやAnnamitella liexiensisという属名の種類も同一の種類と考えます。見た目は特徴の無い平面的な種に見えますが、Leiostegiidae(超科)という数ある三葉虫の中で極めて特殊な分類に属します。Leiostegiidae(超科)の仲間は、カンブリア紀中期からオルドビス紀前期まで存続したグループで、IllaeninaやCorynexochinaが所属するCorynexochida(目)の属し、入手できる種類は中国産にほぼ限られると言って良いです。以前は安価で入手できる時代もありましたが、今は良質な標本を入手するのが極めて難しくなりました。 中国名:斑点四川蟲
Lower Ordovician Leiostegiidae,Leiostegiina,Corynexochida TRI-595 FenxiangTrilobites
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Amecephalus laticaudum
特徴的な頭部を持ち、ひと目で他のAmecephalusと区別ができます。Amecephalusの中でも比較的大型になり、長い頬棘が尾部に細く伸び、均整の取れた美しい形態をしています。この種類を見ているとハルぺスHarpetida(目)は、この種類から進化したのでは?と思ってしまう特徴的な頭部をしていますが、近縁はむしろAulacopleurida(目)に移籍する考えとなっています。
Middle Cambrian Alokistocaridae,Ptychoparioidea,Ptychopariida TRI-455 Spence ShaleTrilobites
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Pliomera fisheri
まるで、ダンゴムシかミツオビアルマジロの様に完璧に丸まったPliomera、4億年以上前の生き物の化石というよりは、美術工芸品の根付を見ている様な錯覚になります。ファコプスの仲間が繁栄したのは、この完璧なエンロール姿勢が可能だった事が一つあると考えられ、捕食者から幾度の危機を乗り切って来た事でしょう。ここまで完璧に丸まった状態で化石化するのは、埋もれるタイミングなど奇跡的な事で、更に発見される時もホンの僅かな箇所だけ(この化石でいうと右頬辺りが少し風化)が見えていて、発見される風化する前に採掘されるなど奇跡が重なる必要があります。 【標本リンク】FFストア http://www.ffstore.net/detail/pmf_020.html
Lower Ordovician Pliomeridae,Cheiruroidea,Cheirurina,Phacopida Kunda level Voibokalo Quarry,St.Petersburg region,RussiaTrilobites