つわものどもが夢の跡 ~ 160年の歴史 ワイルドスミス
1847年創業のワイルドスミス。2004年9月に惜しまれつつ閉店しました。 創業者のマシューさんと奥様のレベッカさん。 1924年、いまからちょうど100年前のバウチャーです。 1960年代の店舗。 1960年代のワイルドスミスの新聞広告です。 店内にはケイリー・グラントのラストがありました。顧客にもこうしたスターは多かったようです。 これは1967年のデビッド・ニブンの注文票。送り先は20世紀フォックスになっています。ラストはセミスクエアの33が多いです。ということは彼の靴はほとんどグリーン製だったということですね。サイズは11。でかっ!! 20世紀初頭のブーツツリー 17Jermyn street ワイルドスミス | GreenMile Laboratory | MUUSEO My Lab & Publishing https://muuseo.com/shinshin3/diaries/178 グリーン参る 100年程前の輸送用の木箱と思われます。結構大きな箱ですが、靴以外にも何か入れたのでしょうか。 ワイルドスミスの焼印をつけたオリジナルの箱のようです。 閉店を決めた2004年のジョン・ワイルドスミスさん。写真で見る限り、どちらの靴もグリーン製ではありません。 1989年当時の5代目ジョンさん(右)、6代目フィリップさん。(ブルータスより) 1988-1989年製作 アンラインドローファー ハーロウ 黒 https://muuseo.com/shinshin3/items/286 グリーン参る The Wildsmith Loaferワイルドスミスを一躍有名にしたのがこのローファーです。ウィキペディアでその出自を説明されているローファーはこの靴だけではないでしょうか。まもなくこの靴がデザインされてから100年が経過します。In 1926 Matthew and Rebecca Wildsmith's grandson, Raymond Lewis Wildsmith, made a bespoke country house shoe for King George V, to be worn inside with his shooting hose. From there, the design was evolved to be a casual style for outdoor wear which was then included in their ready to wear collection. The shoe was first called the 582, then the Model 98 until finally becoming known as "The Wildsmith Loafer". This was London's first introduction to the English loafer, a version of the generic slip-on shoe. The style continues to be sold to this day as the Windsor Loafer. ロイヤルファミリーからの注文があることは、このオーダーシートからも一目瞭然です。ここには1983年から1997年までのプリンス・オブ・ヨーク公(アンドリュー王子)からの注文が書かれています。注文先の住所が「バッキンガム宮殿」(笑)。 ワイルドスミスの婦人靴は「1989年から製作を再開した」ということですが、実際インソックがワイルドスミスのスタンプになっている婦人靴をたくさん見ました。 ワイルドスミス インソック https://muuseo.com/shinshin3/items/94 グリーン参る BRUTUS(1989年)に紹介されていた「フルブローグ三姉妹」£220。4アイレットです。 同じくBRUTUSに載っていた婦人靴👞。 1980年代のワイルドスミスのビスポークフルブローグ。 ヒールトップも修理しました。 1920年代 ワイルドスミス コードバン製ビスポークブーツ https://muuseo.com/shinshin3/items/167 グリーン参る ほぼ100年前の靴というのがすごいです。 戦前 ワイルドスミス ビスポークキャップトゥ | MUUSEO (ミューゼオ) https://muuseo.com/shinshin3/items/89 グリーン参る ここからは手持ちのワイルドスミス別注グリーンです。 1970年代 ワイルドスミス別注ハンドウェルト プレーントゥ https://muuseo.com/shinshin3/items/88 グリーン参る 1960年代製作 ワイルドスミス別注 フルブローグ https://muuseo.com/shinshin3/items/199 グリーン参る 80年代後半 ワイルドスミス別注フルブローグ https://muuseo.com/shinshin3/items/69 グリーン参る 70年代後半 ワイルドスミス別注 カドガン https://muuseo.com/shinshin3/items/73 グリーン参る 70年代後半製作 ワイルドスミス別注 フルブローグ https://muuseo.com/shinshin3/items/113 グリーン参る 1984-1985年頃製作 ワイルドスミス別注 フルブローグ https://muuseo.com/shinshin3/items/155 グリーン参る 1986-1987年前後製作 ワイルドスミス別注 レディース コンビフルブローグ https://muuseo.com/shinshin3/items/173 グリーン参る 上と似た靴ですが、白とチェスナッツのパターンが違います。 こちらはコンビのサドルシューズ。 1960年代製作 ワイルドスミス別注 アンラインドローファー https://muuseo.com/shinshin3/items/466 グリーン参る 1960年代後半? ワイルドスミス別注 エラスティックスリッポン 720 https://muuseo.com/shinshin3/items/154 グリーン参る 1970年代 ワイルドスミス ビスポークエラスティックスリッポン https://muuseo.com/shinshin3/items/508 グリーン参る 1970年代製作 ワイルドスミス別注 パテントサイドエラスティック 962 https://muuseo.com/shinshin3/items/108 グリーン参る 1988‐1989年製 ワイルドスミス別注 エラスティックスリッポン https://muuseo.com/shinshin3/items/106 グリーン参る 1984-1985年前後製作 ワイルドスミス別注 ウィグモア WIGMORE https://muuseo.com/shinshin3/items/304 グリーン参る 1988年年頃製作 ワイルドスミス別注 タッセルスリッポン https://muuseo.com/shinshin3/items/178 グリーン参る 1970年代後半製作 ワイルドスミス別注 ノルヴィージャンダービー ”406” https://muuseo.com/shinshin3/items/385 グリーン参る 70年代 ワイルドスミス別注 ノルヴィージャン "773" https://muuseo.com/shinshin3/items/39 グリーン参る 1970年前後 ワイルドスミス別注 ノルヴィージャン "444" https://muuseo.com/shinshin3/items/127 グリーン参る どの靴もワイルドスミスならではの拘りがあってとっても魅力的。良い靴屋がどんどん減っていって寂しいです。
tomonakaazu
2024/03/01 - 編集済みものすごく初心者🔰な質問をしてもよいですか、、?
「ハンドウェルト」ってレース穴のある甲の辺りの部材を手縫している、という意味だと思ってあってますか?とっても細かい縫い目に見えるのですが。
もしも、靴製法の基本的なことをグリーン参るさんのコレクションやラボで紹介されていたら、ぜひリンクを教えてください。
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グリーン参る
2024/03/02tomonakaazuさん、
ご質問ありがとうございます。
靴の製法、なかなか分かりづらいですよね。ハンドウェルトとは中底をアッパーに手縫いで固定するという製法です。この部分を機械を用いて簡略化したのがグッドイヤーウェルト製法と言います。ハンドウェルトに関しては下記のHPが詳しいのでご紹介しますが、このなかの6の工程が「ハンドウェルト」にあたります。
https://www.parashoe.co.jp/care/handsewn-welted.html
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グリーン参る
2024/03/02図解ですとこちらが分かりやすいかと思います。
https://kusumin.com/construction/#toc1
https://kusumin.com/construction/#toc2
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tomonakaazu
2024/03/03 - 編集済みグリーン参るさん、ありがとうございます!
コトバから想像していたのと、全く違っていたので教えていただき感謝です。なるほど、写真と図解とを比べると違いがいろいろ理解できます♡
なるほど〜〜。そうですよね、ボディー部と底を繋げて防水するのが、一番大変な作業ですよね、確かに。そしてこんなにたくさん手法があって、すごくたくさんの工程を経て靴になる。ハンドメイドの靴が高いのは当然だ、と納得しました。
かなり以前なのですが、St. James's StreetにあるJohn Lobbで同僚の親戚が修行している時に、地下の工房を見学させてもらったことがあります。でもその時は、作業の順序とかは全く知らないで見ていました。
そのJohn Lobbへ靴底の革を納めているという、イギリス南部の皮革なめし工房に行ったこともあります。18世紀から続いているという水車が今も使われている、びっくりするような場所でした。
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グリーン参る
2024/03/03tomonakaazuさん
注文靴の工房もアッパーのステッチはミシンで縫われます。確かに手縫いのハンドメイド靴は高価ですが、ビスポークが必ずしも既成靴より足にフィットする訳でないのも難しい点です(笑)。
ロブの地下工房をご覧になったのですね。大変貴重な経験をされたと思います。私も見てみたいです。
ロブの底革も確かオークバークを使っていたように思います(画像の飴色の革がオークバークです)。とするとご覧になったのはデヴォン州のバーカー社でしょうか。この地では2000年前のローマ時代から底革を鞣していました。
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tomonakaazu
2024/03/04革の工房は、ご察しのとおりオークバークのJ.&F.J. Bakerでした。今、HPを見たら、今ではイギリスで唯一のオークバークだとあります。
https://www.jfjbaker.co.uk/
なんと、2000年前のローマ時代から、、(遠い目)。
そういえば、そんな頃の靴底も混ざっている(形から判定するそうです)テムズ川岸で拾った革の靴底とバックルのコレクションを見たのを思い出しました。河岸で荷下ろしの際に川に落ちたり、沿岸に住んだ人たちが、古くなった靴を川に捨てたりしたのが、一番強い底革だけ残って引き潮の時に見つかるのだそうです。
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tomonakaazu
2024/03/04これです♡
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グリーン参る
2024/03/04tomonakaazuさん、
とても面白い靴底とバックルのお話、ならびにバーカー社のホームページのご紹介ありがとうございます。
以前は「オークバーク」といえば英国バーカー社かドイツのレンデンバッハ社と言われていました。tomonakaazuさんのコメントを拝見し、調べていましたらバーカー社の他、マーチン社というところのオークバークがあることを知りました。
https://www.subaru-ec.com/products/detail.php?product_id=1671
しかも、レンデンバッハ社も無くなっていた事実をたった今知りました。
https://www.union-works.co.jp/blog/mens-repair/33831/
私はオークバークといえばバーカー社の革しか履いたことがありません(というか旧グリーンはすべてバーカー社のオークバーク)。○柔らかく○減りづらく○滑りにくい最高の素材ですが、通常のレザーソールの2-3倍の価格です。
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