明治期 若狭塗 変り塗十種吸物椀
初版 2022/10/01 11:58
改訂 2024/12/01 18:26
コレクションのところでもご紹介していますが、若狭塗の吸物椀の画像を纏めて掲載します。

若狭塗のところでご紹介した説明文を載せます。
十種の変り塗が施された吸物椀が二客ずつ、合計二十客です。箱蓋の裏に「明治参拾七年求之」と書かれていますが、どうも合わせ箱のようで椀自体はそれ以前の製作のようです。はじめてこの椀を見たとき、この椀揃えに大変興奮しました。外側からは何の変哲もない黒の椀に見えますが、蓋を開けると身と蓋の裏に華麗な変り塗が見えるという趣向です。お客を驚かせる、そんな趣向があったものと思われます。

外見は黒塗りのお椀ですので地味な印象です。

身の底もごく普通の黒塗りのお椀ですが、蓋の裏は本当にきれいです。

蓋の裏には変り塗の名称を書いた文字が見えます。粘性の高い漆で文字を書くことは墨で書く何倍も難しいのですが、達筆で本当に素晴らしいです。
以下蓋の裏の変り塗です。



身の部分の変り塗です。




以下それぞれの変り塗をご紹介します。全部で十種あります。
1.はだれ雪(はだれゆき)

2.菊の霜(きくのしも)

3.菊結(きくゆい)

4.菊合わせ(きくあわせ)

5.月代(つきしろ) ここでは月志路という漢字

6.葉の霜(はのしも)

7.高雄(たかお)
8.春の山(はるのやま)

9.千草(ちぐさ)

10.夜の海(よるのうみ)
「葉の霜」の文字違い

このように同じ名称を書くにしても文字を変えています。作者の高い教養を伺わせます。
どんな方がこの吸物椀を注文したのかは分かりませんが、とんでもない手間と時間を掛けた、まさしく職人さんの畢生の作です。

若狭塗吸物椀 二十人前 その1
https://muuseo.com/shinshin3/items/234


若狭塗吸物椀 二十人前 その2
https://muuseo.com/shinshin3/items/235

