嘉永七年製作 若狭村雨塗吸物椀

初版 2022/12/26 14:11

改訂 2023/07/09 13:01

嘉永七年(1854年)作の若狭塗吸物椀です。共箱には「二十客揃」と書かれていますが、手元には九客のみ存在します。

遠目からは茶色の地味なお椀にしか見えません。

形状は端反りのあるシャープなもの。口縁、身の縁は金が塗られています。

高台が糸輪の直径より大き目の安定したスタイルです。

糸輪の中にも変り塗がなされていますが、とても研ぎづらく難しい工程だったと思われます。

内部は黒塗りのシンプルなもの。

底の部分の拡大です。高台の縁まで変り塗が施されており、物凄い手間が掛かっています。

椀木地は大変薄く繊細な作りです。

変り塗の拡大です。一見地味ではありますが、松葉、稗を使って青漆、茶、黒、黄などを使った複雑な塗りです。江戸時代の若狭塗は「複雑ではっきりしない」特徴があります。この模様を「村雨塗」というようです。

糸輪部分の拡大画像です。

身の中に多少湯焼けしているものがありますが、狂いはほとんどありません。

共箱ですが、極めて質素です。

「嘉永七年寅年閏七月」と書かれています。嘉永七年は日米和親条約締結の鎖国が終わった年、168年前の作品です。松尾氏は注文主だと思います。

珍しいことですが、この共箱には塗師「清水重成」氏の名前が書かれています。お椀のように普段使われるものに若狭塗作品は非常に少ないです。加えて製作者が分かる若狭塗はほとんどなく、その意味でもこの吸物椀は大変貴重だと思います。

1990年3月に行ったロンドンで、初めてエドワードグリーンのドーバーを購入しました。以来、ここの靴の虜になりました。質の良いしっとりとしたカーフ、美しい木型、無い物ねだりと分かりながら、この時代のエドワードグリーンの靴を今も追い求めてしまいます。
他に古い靴も修理して履いています。特に戦前の英国靴は素晴らしいと実感しています。

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    Nobuaki Sugiura

    2023/07/08 - 編集済み

    繊細で美しい塗物ですね。

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      グリーン参る

      2023/07/09

      お褒めいただきありがとうございます。一見地味ですが、じっくり観察すると本当に手が込んでいて素晴らしいお椀だと思います。こうした形の吸物椀も現代では見かけることがありません。

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