V. A. “7Ai9”

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これは、始め、なんだぁ?と思った謎物件でしたが、どうも、フィンランドのレーベルが出したコンピレーション・アルバムのようで、それをキュレーションしたのが、レコード・コレクターにして1980年代にパンクファンジンPölyを弟と一緒に出していたPiitu Lintunen (ピーツ・リンツネン)みたいです。彼は、1980年代〜2000年代まで、MerzbowやGenesis P-Orridgeともコンタクトがあり、この時代のインフルエンサーでもあったようです。それで選出されたメンツをザッと見てみると、1980年代から活動しているグループから比較的最近出てきた北欧のグループも混じっているようで、所謂、ノイズ〜アヴァン系なのかな?と期待は膨らみます。なお、A1, A2, A3, A4, B3, B4のトラックは、1980年代にキュレーター兼ソロユニットNeljän Seinän JumalatでもあるPiitu Lintunenの所に送られてきた「デモテープ」からセレクトした音源であるとのことで、1982-1986年に録音されています。それ以外は、B2が1992年に録音で、A5, B1, B5が2022に年録音された音源と言うことです。なお、A1は1983-1984年辺りに録音されたものですが、今回、収録に当たり、2021年録音のロングヴァージョンになっていると言うことです。それでは、
各曲を各アーティストと共に紹介していきたいと思います。因みに、ジャケは、先述のファンジンPöly4号のカバーから取られています。このファンジンを出していたのが、今回のコンピのキュレーターであるPiitu Lintunenです。

★A1 DDAA (仏) “Now It's Time Now” (3:23)では、Sylvieの淡々とした朗読と物音系Percに、BだかGだか良く分からない弦楽器やシンセ持続音が絡まっていきます。正にアヴァン・ポップな1曲です。
*DDAAはDéficit Des Années Antérieuresの略称で、1977年にJean-Luc André, Jean-Philippe Fée, Sylvie Martineauで仏で結成されたアヴァン・ポップ・バンドです。
★A2 Konstruktivists (英) “Opening Singns” (4:51)は、不明瞭なシンセ音が多層化していく曲ですが、後半には高周波リズムが聴取できますし、どうもシーケンスもあったようです。
*Konstruktivistsは英国のGlenn Michael Wallisかわ1982年から始めたインダストリアル・ユニットで、嘗てはHeuteとしても活動しています。
★A3 Ramleh (英) “Black Ark” (2:08)は、いきなりの爆音電子ノイズで始まり、テープ音も時に聴こえます。音の潰れ方が正しく正統派のパワ・エレですね。
*RamlehはノイズレーベルBroken Flagを運営していたGary Mundyを中心としたパワー・エレクトロニクス或いはギターノイズ・バンドです。
★A4 Neljän Seinän Jumalat (芬) “TV-Orgasmi” (4:43)は、怪しげな低音シンセと一見、合ってなさ気なリズムに、鳥声らしきシンセ音とCabsのようなBが被る曲で、後半はホワイトノイズが唸る中に、テープ音やSE的電子音が散りばめられます。
*このコンピの首謀者Piitu Lintunenが1980年代にフィンランドでやっていたソロ実験音楽ユニットです。
★A5 Corum (米) “Hecate's Swaying Garden” (5:37)では、ウニョウニョした電子音がリズムレスにのたうち回ってますが、その内、3拍子のリズムボックスや明瞭なメロディの無い電子音とVlnらしき弦楽器のリフが入ってきます。
*Corumは米国人Grant Corumのソロユニットで、2010年代から活動しています。
★B1 Clair (米) “Magick Garden Rebirth” (5:31)は、フルートとシンセ(?)の静かで落ち着いた雰囲気で始まり、そして柔らかいシンセのメロディも加わったオーケストレーションになっていき、最後にはVoらしき音も聴取できます。
*Clairも米国人Clair Crawfordのソロユニットで、2020年代から活動しています。
★B2 Jimi Tenor (芬) “Ainon Kyynel” (4:00)では、ヘンテコな音/ピコる音のシーケンスが弾け、やがてマシンリズムや同期した別シンセ音も加わります。一番、テクノかも?
*Jimi Tenorは本名Lassi Lehtoで、1990年代から活動しているフィンランドの実験的ジャズ・ミュージシャン名義です。
★B3 Tasaday (伊) “Il Rito” (3:34)では、ポリシンセの反復で始まり、その内、ドラムマシンも入ってきて、更に、アジるVoやら打楽器やら電子音やらの断片が無作為にインしてきます。
*Tasadayは、伊Brianzaで、1982年に結成された不定形実験音楽/インダストリアル/ノイズ・バンドで、仏のForm & Nulla Iperrealeと関係があります。
★B4 Odal (蘭) “Flaming Piano” (3:33)は、デロデロのテープで録音したピアノを古い壊れ掛けの機材で再生したかのようなLo-Fiな「テープ音楽もどき」です。
*Odalは、蘭のPeter Zinckenのソロノイズユニットのことで、1986年から活動しています。
★B5 Pekka Airaksinen (芬) “Untitled” (3:34)は、闇の中から、様々な電子音が立ち上がってくる曲ですが、やがてマシンリズムとSynth-Bのシーケンスと上物のシンセによるメロディも出てきて、ちょっと安心します。
*Pekka Airaksinenは、フィンランドで、1967年にThe Spermとして活動したり、又は1000体の仏陀に捧げる曲を使ったりしてきた古参の実験電子音楽の作曲家で、2019年5月に他界しています。

 このコンピのコンセプトに関しては、分からない訳ではないんですが、出来れば、コンパイルする音源を、1980年代にLintunenが受け取ったデモテープだけからか、フィンランドのアーティストだけからかのどちらかにして欲しかったです。この手の電子音楽って機材の進化にかなり左右されるところもあるので、年代が離れ過ぎた曲を1枚のコンピにするのはちょっと反則だなぁと思いました。しかしながら、フィンランドのこう言うアングラ・シーンの一端を垣間見れたのは貴重な体験でした❗️ノイズだと、フィンランドと言えば、Miko AspaのGruntとそのレーベルFreak Animal Recordsを思い出しますが、それじゃないアーティストのことも知ること出来て良かったです。

[今回、YouTubeには、アルバムとしてまとめてあったサイトが無かったので、各曲を別々に貼っておきました。なお、BandcampのURLも貼りましたので、まとめて聴きたい方はそちらからアプローチしてみて下さい。]

A1 DDAA “Now It's Time Now” (3:23)
https://youtu.be/LivrD3IJchk?si=1d8xRC3kWJqKeMtW

A2 Konstruktivists “Opening Singns” (4:51)
https://youtu.be/IJqq5vEREvc?si=jEd8qR4yrWtNRK3H

A3 Ramleh “Black Ark” (2:08)
https://youtu.be/Vd_7LRtV6rE?si=6V6VxTjgBxPRrWnD

A4 Neljän Seinän Jumalat “TV-Orgasmi” (4:43)
https://youtu.be/L7pmzpRhy9g?si=qkTk8-z5fQxPUjMn

A5 Corum “Hecate's Swaying Garden” (5:37)
https://youtu.be/7z9KYIC3KPs?si=wiugzQbGOj1CdhHt

B1 Clair “Magick Garden Rebirth” (5:31)
https://youtu.be/X_XzVPGVGDY?si=Pxlz_au_NEBUR_Al

B2 Jimi Tenor “Ainon Kyynel” (4:00)
https://youtu.be/UGBHZgmOKvQ?si=Za6C0g6EPMLp8oap

B3 Tasaday “Il Rito” (3:34)
https://youtu.be/tdLCavYiAF8?si=APZR_Kwh5S7G-kIp

B4 Odal “Flaming Piano” (3:33)
https://youtu.be/poug3ljnT9o?si=Ye3oOFz49loP2Fcr

B5 Pekka Airaksinen “Untitled” (3:34)
https://youtu.be/UPpko3NP_zM?si=vWpmNhBDURNtrHgr

[BandcampのURLを貼っておきます]
https://sahkorecordings.bandcamp.com/album/7ai9

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