角川書店 角川文庫 華やかな野獣

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昭和五十一年八月三十日 初版発行
昭和五十一年十月二十日 三版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和31年(1956年)に雑誌「面白俱楽部」に掲載された横溝正史の中編小説「華やかな野獣」。
本牧の“吉田御殿”という、あまり芳しくない異名を持つ豪奢な2階建ての洋館、臨海荘。そこでは毎月1回、マスクで顔を隠した男女が集い、いかがわしいパーティーが行われていたが、そんなあるパーティーの夜、二重殺人事件が起きた。被害者はパーティーの主催者で“千姫”と渾名される臨海荘の若き女主人と、その相手を務めた白いセーターを着た若い男であった。とある理由でボーイに変装し、パーティーに潜入していた金田一耕助が事件に挑む...
複数の男女が集う乱交パーティーの最中に起こった二重殺人事件を描いた、如何にも“通俗モノ”らしいテイストの作品ですね。しかも、事件には麻薬密売も絡んできて、被害者の一人である白いセーターを着た若い男が、実は麻薬取締係の刑事であることが判明したりとますます本格派ミステリーからかけ離れていくような様相を見せ始めますが、そこは流石の横溝正史、様々な手がかりから金田一が鮮やかに事件の謎を解明していく描写にはやはり本格探偵小説ならではの手応えが感じられました。本書には表題作の他に「暗闇の中の猫」「睡れる花嫁」の短編2編が併録されています。個人的には「暗闇の中の猫」が面白かったですね。金田一耕助が等々力警部と初めて出会った初期の事件を描いた物語ですが、タイトルにもなっている“暗闇の中の猫”の意味が判明した時のゾクゾク感が本当に堪らないです。角川文庫には昭和51年(1976年)に収録されました。
画像は昭和51年(1976年)に角川書店より刊行された「角川文庫 華やかな野獣」です。スパンコールのアイマスクを着けた妖しい美女。まさに臨海荘の若き女主人・高杉奈々子を描いた表紙画ですね。劇中ではすぐに殺されてしまいましたが、キリっとした目元に、性には奔放なれど法律的な不正は許容しないという彼女の性格がよく表れていると思います。

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