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角川書店 角川文庫 貸しボート十三号 第2期
昭和五十一年三月五日 初版発行 昭和五十八年十一月二十日 二十版発行 発行所 株式会社角川書店 画像は昭和58年(1983年)に角川書店より刊行された「角川文庫 貸しボート十三号 第2期」です。波間に漂う血まみれのボートと、水面に浮かぶ陰鬱な表情の女の顔。第1期の不穏さもなかなかのものでしたが、心霊写真を思わせる構図でより一層インパクトの強い表紙画となりました。 #横溝正史 #杉本一文 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 魔女の暦 第2期
昭和五十年八月三十日 初版発行 昭和五十八年十一月二十日 二十四版発行 発行所 株式会社角川書店 画像は昭和58年(1983年)に角川書店より刊行された「角川文庫 魔女の暦 第2期」です。頭髪が無数の蛇と化した、奇怪な女。劇中に登場する紅薔薇座の出し物「メジューサの首」に合わせて、ギリシャ神話の化け物“メデューサ”を描いた表紙画ですね。なかなかインパクトのある題材ですが、個人的にはやや“妖気”が足りないような気がします。 #横溝正史 #杉本一文 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 三つ首塔 第2期
昭和四十七年八月三十日 初版発行 昭和五十二年五月三十日 二十四版発行 発行所 株式会社角川書店 画像は昭和52年(1977年)に角川書店より刊行された「角川文庫 三つ首塔 第2期」です。どこか憂いを帯びた美女と、妖しくそびえ立つ蓮華供養塔。「三つ首塔」のヒロイン・宮本音禰と、三つの木像の首が祀られている“三つ首塔”を描いた表紙画ですね。「三つ首塔」の世界観を上手く具象化している素晴らしい画です。 『横溝正史シリーズ 三つ首塔』放映を告知する宣伝帯付きです。 #横溝正史 #杉本一文 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 獄門島 第3期
昭和四十六年十月三十日 初版発行 昭和五十二年八月十日 三十七版発行 発行所 株式会社角川書店 画像は昭和52年(1977年)に角川書店より刊行された「角川文庫 獄門島 第3期」です。暗雲垂れ込め、雷鳴轟く孤島というところは第2期と同じですが、三姉妹と思しき女たちと怪しげな男という組み合わせが、逆さ吊りにされた振り袖姿の娘の死体と怪しげな女の組み合わせに変わりました。同年8月の東宝映画『獄門島』公開に併せてこのバージョンに変更されたようです。この画はポスターやパンフレット、サウンドトラックのジャケットにも使用され、世代人には馴染み深い表紙画ですが、個人的には第2期のほうが好きでした。 映画化を告知する宣伝帯付きです。 #横溝正史 #杉本一文 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 悪魔の手毬唄 第1.5期
昭和四十六年七月十日 初版発行 昭和四十八年七月十日 十版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和32年(1957年)から昭和34年(1959年)にかけて雑誌「宝石」に連載された横溝正史の長編小説「悪魔の手毬唄」。 岡山と兵庫の県境、四方を山に囲まれた鬼首村。古い因習が色濃く残るこの村で、若い娘が相次いで殺されるという事件が起きた。最初の被害者は村の旧家・由良家の娘・泰子、次いで新興勢力・仁礼家の娘・文子が。しかもその殺人は、村に古くから伝わる手毬唄の歌詞に則って行われたものであった。事件の裏で蠢く謎の老婆の正体は?そして、23年前に起きた迷宮入り事件との関連は?謎が謎を呼ぶ連続殺人に、旧知の磯川警部の紹介で村に逗留していた名探偵・金田一耕助が挑む。 岡山と兵庫の県境にある鬼首村で起こった奇怪な連続殺人を描いた、こちらも横溝正史を代表する一作ですね。古い旧家と新興勢力の家、二つの勢力が対立している閉鎖的な寒村が舞台の、如何にも横溝的なシチュエーションの作品ですが、村に伝わる手毬唄の歌詞通りに若い娘たちが次々と殺されるという“童謡殺人”の趣向が取り入れられ、独特のサスペンスが醸成されているのが特徴です。角川文庫には昭和46年(1971年)、「八つ墓村」に続いて収録されました。 画像は昭和48年(1973年)に角川書店より刊行された「角川文庫 悪魔の手毬唄 第1.5期」です。緑色の髪と紫色の髪の二人の裸婦。この二人は腰の辺りで繋がっているように見えて、尚且つ緑色の髪の裸婦が紫色の裸婦を絞め殺そうとしているなど、インモラルな気配が横溢している表紙画ですね。小説を読んだ後にこの表紙画をもう一度見直すと、緑のほうはあの人で、紫のほうはあの人かな、なんて想像が膨らみます。なお、このバージョンは当初は背表紙が白でしたが(白背)、途中から黒(黒背)に変更されました。なので当該バージョンを“1.5期”と呼称しています。 #横溝正史 #杉本一文 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 八つ墓村 第2.5期
昭和四十六年四月三十日 初版発行 昭和四十八年二月二十五日 十一版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和24年(1949年)から昭和25年(1950年)にかけて雑誌「新青年」に連載されるも、途中で作者の急病や「新青年」の休刊もあり、その後は雑誌「宝石」に掲載誌を変え、昭和26年(1951年)まで連載された横溝正史の長編小説「八つ墓村」。 鳥取と岡山の県境にある八つ墓村。戦国時代、この地に黄金三千両と共に逃げ延びてきた落武者8人を、欲に目が眩んだ村人たちが惨殺したという忌まわしい伝説が残るこの村で、大正×年、村の有力者・田治見家の当主・要蔵が狂気の果てに村人32人を虐殺するという事件が起きた。要蔵は落武者殺しの首謀者・庄左衛門の末裔であった。それから二十数年後、要蔵の子・辰弥が村に帰郷することになり、それと前後して奇怪な連続殺人が次々と起こる... 血塗られた落ち武者伝説が残る寒村を舞台に繰り広げられる奇怪な連続殺人を描いた、横溝正史の代表作の一つですね。本格ミステリーであり、伝奇ロマンであり、冒険譚でもある、まさに横溝正史のサービス精神が横溢するエンターテインメント巨編ですが、角川文庫には昭和46年(1971年)、横溝正史作品の第1号として収録され、昭和50年代初頭に日本中を席巻することになる横溝正史ブームの礎となりました。 そして、角川文庫の横溝正史作品といえば切っても切れない関係にあるのが名イラストレーター、杉本一文氏による表紙画です。第1期(初版のみ)こそ河野通泰氏の手掛けたものでしたが、第2期(再版~)からは杉本氏が手掛け、横溝正史の作品世界と見事に合致した氏の表紙画は引き続き他作品でも採用され、多くの読者の支持を集めました(ちなみに、杉本氏の起用を決めたのは若き日の角川春樹氏で、自費出版された杉本氏の画集を見て気に入ったからだそうです)。 画像は昭和48年(1973年)に角川書店より刊行された「角川文庫 八つ墓村 第2.5期」です。鬼火・狐火・人魂などの類いを連想させる怪火の群れ。記念すべき杉本表紙画の第一弾ですが、サイケでアーティスティックな雰囲気でのちの作風とはだいぶ趣が異なりますね。しかしこの怪火には、過去に落武者殺しや32人殺しが起きた血塗られた八つ墓村に渦巻く怨念や情念といったものが込められている印象もあり、そうした不穏な気配が満ち満ちている辺りに杉本氏らしさを感じます。なお、このバージョンは当初は背表紙が白でしたが(白背)、途中から黒(黒背)に変更されました。なので当該バージョンを“2.5期”と呼称しています。 #横溝正史 #杉本一文 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 横溝正史読本 第1期
昭和五十四年一月五日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和50年(1975年)から昭和51年(1976年)にかけて雑誌「野性時代」「短歌」に4回に渡り掲載された横溝正史と小林信彦の対談「横溝正史の秘密」を中心に、昭和22年(1947年)に雑誌「真珠」「ロック」に掲載された横溝正史のエッセイ「探偵茶話」、そして、昭和22年(1947年)に雑誌「宝石」に掲載された江戸川乱歩の作品評「『本陣殺人事件』を評す」や昭和25年(1950年)に雑誌「新潮」に掲載された坂口安吾の作品評「『蝶々殺人事件』について(「推理小説論」)」、昭和24年(1949年)に雑誌「別冊宝石」に掲載された高木彬光の作品評「『獄門島』について」などを資料として併録した「横溝正史読本」。 様々な角度から“横溝正史”の魅力に迫った内容で、読み物としてはもちろん、日本探偵小説史の資料としても価値ある一冊ですね。とにかく日本のサブカルチャーの先駆者であり、ミステリーマニアの編者・小林氏の博識ぶりが遺憾なく発揮されている対談が良いです。氏に引っ張られる形で横溝正史がノリに乗って語っているのがやり取りから凄く伝わってきます。横溝作品、いや、海外も含めた古典ミステリーを読む際の副読本として、これからも読み継がれてゆく本だと思いますね。昭和51年に単行本が刊行されたのち、角川文庫には昭和54年(1979年)に収録されました。 画像は昭和54年(1979年)に角川書店より刊行された「角川文庫 横溝正史読本 第1期」です。横溝正史と黒猫を侍らせている妖しい女。おどろおどろしく陰影をつけて描かれている横溝正史が素晴らしいですね。写真と見間違わんばかりのリアルなタッチで、杉本画伯の技量の高さを改めて実感します。 第1期(初版)の装丁は表紙枠・背表紙が赤で、以降の版から黒に変更されました。 #横溝正史 #小林信彦 #杉本一文 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #対談集 #エッセイ #装画
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角川書店 角川文庫 シナリオ 悪霊島
昭和五十六年十月十日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和56年(1981年)に公開された角川映画『悪霊島』。 篠田正浩監督・鹿賀丈史主演で製作されたこの映画は、かつてヒッピー青年だった人物の回想という形式で描かれていて、ビートルズの「Get Back」「Let It Be」を挿入歌に使用した斬新なイメージはそれまでの市川崑監督・石坂浩二主演の金田一映画とはまた違った味わいがあって良かったのですが、個人的には、原作ではもう一人の主人公という感じで物語に関わっていた名キャラクター、磯川警部があまり重要視されなかったのが残念でした。もし、市川・石坂コンビの『悪霊島』が実現していたなら、昭和52年(1977年)に公開された東宝映画『悪魔の手毬唄』で磯川警部を好演した若山富三郎の再登板があったのかな?なんて、今でも妄想してしまいます。 画像は昭和56年(1981年)に角川書店より刊行された「角川文庫 シナリオ 悪霊島」です。映画公開に併せて刊行されたもので、日本の演劇界を代表する劇作家の一人である清水邦夫氏が手掛けた脚本を書籍化したものです。当時、角川文庫では角川映画になった作品の脚本をこうした形で積極的に書籍化していましたね。岩下志麻演じる巴御寮人(ふぶき)と白骨化したシャム双生児(太郎丸・次郎丸)のスチールを使用した表紙がインパクト大です。 #横溝正史 #清水邦夫 #篠田正浩 #鹿賀丈史 #岩下志麻 #角川映画 #東映 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #シナリオ
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角川書店 角川文庫 風船魔人・黄金魔人
昭和六十年七月十日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和31年(1956年)から昭和32年(1957年)にかけて雑誌「小学五年生」に連載された横溝正史の中編小説「風船魔人」。 桜の花も満開の四月半ば。産業博覧会で賑わう上野公園で、呼び物のサーカス団の楽屋から、7つの風船が結わえ付けられた一頭の馬が空に舞い上がった。それは超高度な浮遊力を持つガス体を発明した“風船魔人”の実験の始まりだった。空魔団を組織し、悪事を企む“風船魔人”に新日報社の“敏腕記者”三津木俊助と“探偵小僧”御子柴進少年が挑む。 昭和32年(1957年)に雑誌「おもしろブック」に連載された横溝正史の中編小説「黄金魔人」。 木枯らしの吹きすさぶ十二月以来、東京では16歳の少女たちが次々と世にも奇妙な黄金人間に狙われるという事件が発生していた。少女たちはいずれも苗字と名前が同じ音節から始まり、しかもイロハ順に狙われていった。ピストルの弾丸も跳ね返すほどの堅牢な金色の金属に身を包んだ黄金人間“黄金魔人”の目的は何か?不可解な事件に新日報社の“敏腕記者”三津木俊助と“探偵小僧”御子柴進少年が挑む。 どちらも横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。超強力なガス体を用いて悪事を企む“風船魔人”、全身金ピカで16歳の少女ばかり狙う“黄金魔人”、どちらも一風変わった怪人ですが、個人的には「ワタシ、黄金人間デス。面白イモノ見セテアゲル」などといって少女たちに近づく変質者チックな姿を想像すると面白い“黄金魔人”がツボでした(笑)本書には表題作の他に座談会「横溝正史の思い出を語る(二)」と「横溝正史少年少女小説著書・作品目録」、「雑誌・新聞掲載作品リスト」が併録されています。「横溝正史の思い出を語る(二)」は「角川文庫 姿なき怪人」に掲載された山村正夫氏司会による座談会の続きで、今回も横溝正史夫人・孝子さんと長男の亮一氏が横溝正史の興味深いエピソードを語っています。また、山村氏が作成された「横溝正史少年少女小説著書・作品目録」「雑誌・新聞掲載作品リスト」は当時としては資料性が高く、大いに参考になりました。角川文庫には昭和60年(1985年)に収録されました。 画像は昭和60年(1985年)に角川書店より刊行された「角川文庫 風船魔人・黄金魔人」です。真っ黒なトンガリ頭巾をすっぽり被った怪しい人物や、サーカスの団員のような面々。まさに劇中に登場する“風船魔人”や、天馬サーカス団の面々を描いた表紙画ですね。“風船魔人”の最初の実験で空に飛ばされた馬の“プリンス号”が劇中での描写通り、どこか悲しげに見えるのが印象的です。 #横溝正史 #杉本一文 #山村正夫 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #ジュヴナイル #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 姿なき怪人
昭和五十九年十月二十五日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和34年(1959年)から昭和35年(1960年)にかけて学年誌「中学一年コース」「中学二年コース」に連載された横溝正史の連作短編小説「姿なき怪人」。 フランス帰りのシャンソン歌手・吾妻早苗が殺害された。犯人と目されているのは、早苗との結婚を、早苗の後見人である高名な法医学者・板垣博士に反対された青年・木塚陽介。しかも、木塚は「これから“姿なき怪人”となって、人殺しでも何でもする」との恐ろしい台詞を残していた。その言葉通り、板垣博士の周囲で起こる第二、第三の殺人。次々と凶行を重ねる“姿なき怪人”を新日報社の“敏腕記者”三津木俊助と“探偵小僧”御子柴進少年が追う。 横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。ジュヴナイルのミステリーというと怪盗・怪人一味対探偵チームの攻防戦という活劇的なイメージが強いのですが、本作で描かれているのは大人向けミステリー顔負けの連続殺人。しかも、死体をトランク詰めにしたり、蠟人形のように仕立てたりとかなりの猟奇度の高さで、当時これを読んでいた学年誌の読者にはさぞかし刺激が強かったであろうことは想像に難くありません。ただ、今読み返すとトリックの使い回しや、真犯人の正体が容易に判ってしまうのが気になるところではありますが...(笑)本書には表題作の他に短編「あかずの間」と座談会「横溝正史の思い出を語る(一)」が併録されています。「あかずの間」は少年少女向け雑誌に掲載されたもの、「横溝正史の思い出を語る(一)」は山村正夫氏司会による座談会で、横溝正史夫人・孝子さんと長男の亮一氏が横溝正史の人となりを語るというもの。ここで語られているエピソードはファンにはどれも興味深いものばかりです。角川文庫には昭和59年(1984年)に収録されました。 画像は昭和59年(1984年)に角川書店より刊行された「角川文庫 姿なき怪人」です。服を着たビスクドールと首だけのビスクドールが映っているサングラス、そして、学者らしい人物。ビスクドールは“姿なき怪人”が狙う双子の少女の暗喩、学者らしい人物は“姿なき怪人”の恨みを買っている板垣博士でしょうか。本編を読めば判りますが、どこか意味ありげな板垣博士の表情が何とも絶妙です。 #横溝正史 #杉本一文 #山村正夫 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #ジュヴナイル #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 怪盗X・Y・Z
昭和五十九年五月二十五日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和35年(1960年)から昭和36年(1961年)にかけて学年誌「中学二年コース」「中学三年コース」に連載された横溝正史の連作短編小説「怪盗X・Y・Z」。 新日報社の文化欄でヨーロッパ漫遊記を連載している有名な画家・永利俊哉の住居を、原稿受け取りの為に訪れた“探偵小僧”御子柴進少年。そこで彼は殺人事件に遭遇する。被害者は永利俊哉その人であったが、殺人現場には血糊で書かれた“X・Y・Z”の文字が残されていた。犯行は近頃世間を騒がせている神出鬼没の“怪盗X・Y・Z”の仕業なのか?しかし、“怪盗X・Y・Z”は非道な行いはしない紳士盗賊のはず。そんな不可解な事件に御子柴少年が挑む。 横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。今回の悪役キャラクター、“怪盗X・Y・Z”は、“白蠟仮面”や“まぼろしの怪人”などと同じく変装術に長けた怪盗。しかし、“怪盗X・Y・Z”が“白蠟仮面”や“まぼろしの怪人”などと異なるのはその行動が義賊的で、しかも事件を解決に導く、探偵の役割をも担っている点にあります。その活躍ぶりは本来の探偵役であるはずの御子柴少年や三津木俊助の存在をも霞ませてしまうほどで、そんな“怪盗X・Y・Z”が横溝ファンの支持も厚いのも大きく頷けるところです。角川文庫には昭和59年(1984年)に収録されましたが、本来ならば全4話であるところ、第4話「おりの中の男」が欠落しているのが残念です(現在は他社からの出版物で読むことは可能)。 画像は昭和59年(1984年)に角川書店より刊行された「角川文庫 怪盗X・Y・Z」です。ステッキを片手にこちらにウインクしてみせる黒装束の怪紳士。神出鬼没の“怪盗X・Y・Z”を描いた表紙画ですね。おどろおどろしさには欠けていますが、義賊的で、しかも事件を解決に導く、探偵の役割をも担っている“怪盗X・Y・Z”のキャラクターを上手く表現している画柄だと思います。 裏面に角川映画『晴れ、ときどき殺人』『湯殿山麓呪い村』の公開告知が入った宣伝帯付きです。 #横溝正史 #杉本一文 #山村正夫 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #ジュヴナイル #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 青髪鬼
昭和五十六年九月三十日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和28年(1953年)に雑誌「少年俱楽部」に連載された「大宝窟」を改題し、昭和29年に偕成社から刊行された横溝正史の長編小説「青髪鬼」。 ある日、東京の大新聞に一斉に掲載された三人の死亡広告。ところが当の三人は全員生きていて、質の悪い悪戯と思われたが、それから二週間が過ぎ、三人の内の一人、宝石王・古家万造の秘書が殺されるという事件が発生した。しかも、それはどうやら例の死亡広告の件と関わっているらしい。死亡広告を出した「髪の毛が秋の空よりもまっさお」な怪人・青髪鬼と、事件を引っ掻き回すかのように現れる怪盗・白蠟仮面、そして新日報社の“敏腕記者”三津木俊助と“探偵小僧”御子柴進少年のコンビ、三つ巴の闘いの幕が切って落とされた。 横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。題名からしてマリー・コレリの「ヴェンデッタ」を翻案した黒岩涙香の「白髪鬼」、更にそれを翻案した江戸川乱歩の同名作品を想起せずにはいられませんが、本作は確かにそうした「白髪鬼」の復讐譚的な要素もありつつ、主体となるのは如何にもジュヴナイルな冒険活劇。他作品で主役を張った“白蠟仮面”を投入し、更には直径1メートルもある“おばけグモ”まで登場してしまう荒唐無稽さがむしろ楽しい一編です。本書には表題作の他に「廃屋の少女」「バラの呪い」「真夜中の口笛」の短編3編が併録されています。いずれも少年少女向け雑誌に掲載されたものですが、「真夜中の口笛」のオチはまんまシャーロック・ホームズシリーズの某短編でした...。角川文庫には昭和56年(1981年)に収録されました。 画像は昭和56年(1981年)に角川書店より刊行された「角川文庫 青髪鬼」です。ニヤリと笑みを浮かべ、こちらを見ている不気味な男。まさに劇中で「目が鬼火のようにギラギラひかり、鼻がとがって、かっと大きくさけた口、ミイラのようにかさかさとして、しわのよった灰色のはだ」と描写されている怪人・青髪鬼を描いた表紙画ですね。しかしこの表紙画では、「髪の毛が秋の空よりもまっさお」と描写されている怪人の髪そのものよりも、顔に当てた原色の光の加減で青髪鬼を表現してしまうところに杉本画伯ならではのセンスを感じます。 #横溝正史 #杉本一文 #山村正夫 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #ジュヴナイル #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 幽霊鉄仮面
昭和五十六年九月二十日 初版発行 昭和五十九年六月三十日 再版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和12年(1937年)から昭和13年(1938年)にかけて雑誌「新少年」に連載された横溝正史の長編小説「幽霊鉄仮面」。 新日報社の4月1日付の朝刊に掲載された、“カチカチ山”を捩った図案の奇妙な新聞広告。それは殺人鬼・鉄仮面の宝石王・唐沢雷太への殺人予告ともとれるものだった。それから2週間後、例の奇妙な新聞広告の依頼主を探っていた新日報社の記者・折井が同社の重役室で、短刀を胸に突き刺されて殺されるという事件が起きた。後輩を殺され、怒りに燃える新日報社の敏腕記者・三津木俊助。そんな彼と唐沢雷太の遠縁にあたる御子柴進少年、そして“由利先生”こと由利麟太郎のトリオが恐るべき殺人鬼・鉄仮面に挑む。 横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。“カチカチ山”のお伽話を捩った殺人予告で幕を開ける本作、それはまるで本格探偵小説の一ジャンルである“見立て殺人”の趣で始まるのですが、そんなムードも最初だけで、途中から善悪入り乱れての一大冒険活劇となります。その目まぐるしさ、破天荒さは横溝ジュヴナイルの中でも一、二を争うもので、モンゴルの奥地で大団円を迎えるラストまで力技で一気に読ませます(笑)角川文庫には昭和56年(1981年)に収録されました。 画像は昭和59年(1984年)に角川書店より刊行された「角川文庫 幽霊鉄仮面」です。つばの広い帽子を目深に被った鉄仮面の怪人。まさに劇中に登場する鉄仮面を描いた表紙画ですね。物語中盤の見せ場に登場する、鉄仮面の軽気球が効いていますね。 #横溝正史 #杉本一文 #山村正夫 #由利麟太郎 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #ジュヴナイル #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 白蠟仮面
昭和五十六年九月十日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和28年(1951年)に雑誌「野球少年」に連載された横溝正史の長編小説「白蠟仮面」。 五月半ばの、妙にむしむしする夕方、数寄屋橋付近で怪しげな石膏像を積んだトラックと郵便車が衝突した現場に居合わせた“探偵小僧”の御子柴進少年。その際、現場にダイヤモンドのようなものが落ちていたことから御子柴少年はダイヤ密輸を疑い、トラックを追跡する。やがて、麻布のさびしい大邸宅に着いたトラックは、例の石膏像が入った棺桶のような箱を邸内に運び入れるが、その様子を覗いていた御子柴少年は箱の中からムクムクと、石膏像が起き上がるのを目の当たりにする... 横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。御子柴少年がトラックの衝突事故に遭遇する導入部分が「蠟面博士」を彷彿とさせますが、御子柴少年、そして新日報社の敏腕記者、三津木俊助のコンビが今回対峙するのは同じ“蠟”の文字が入っているキャラクターでも、変装術を駆使して自由自在に他人に成りすますことが出来る怪盗“白蠟仮面”。他のいくつかの作品にも登場する、この横溝版“怪人二十面相”とでもいうべき“白蠟仮面”は、“怪獣男爵”と並ぶ横溝ジュヴナイルワールドを代表するキャラクターの一人なのですが...、“まぼろしの怪人”を始め、変装を得意とする怪盗キャラは他にもいるせいか、今一つインパクトに欠ける、というのが正直なところです。本書には表題作の他に「バラの怪盗」「『螢の光』事件」の短編2編が併録されています。いずれも少年少女向け雑誌に掲載されたものですが、個人的にはタイトルにも入っている“螢の光”の使い方が絶妙な「『螢の光』事件」が面白かったです。角川文庫には昭和56年(1981年)に収録されました。 画像は昭和56年(1981年)に角川書店より刊行された「角川文庫 白蠟仮面」です。劇中で「そいつはまるで、顔そのものが白蠟でできているみたいに、自由自在にかわるのである」と描写されている怪盗“白蠟仮面”を中心に、彼が変装する人物や、物語に登場するサーカスのピエロやライオンなどを配した表紙画ですね。どこか悪夢を見せられているような感じの構図が素晴らしいです。 #横溝正史 #杉本一文 #山村正夫 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #ジュヴナイル #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 真珠塔・獣人魔島
昭和五十六年九月十日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和13年(1938年)から昭和14年(1939年)にかけて雑誌「新少年」に連載された「深夜の魔術師」を改稿し、昭和25年(1950年)に雑誌「少年少女王冠」に連載するも中断、その後、昭和30年(1955年)に改題・改稿されてポプラ社から刊行された横溝正史の中編小説「真珠塔」。 翼から鬼火のような青白い光を放ち、夜空に舞う不気味な金色の蝙蝠。この金色の蝙蝠が現れるところ髑髏の仮面をつけた怪人・金コウモリが現れるという。その金コウモリが真珠王・柚木老人が所有する真珠塔に目を付けた。妖しい催眠術を駆使する怪人・金コウモリに、新日報社の敏腕記者・三津木俊助と“探偵小僧”御子柴進少年が挑む。 昭和29年(1954年)から昭和30年(1955年)にかけて雑誌「冒険王」に連載された横溝正史の中編小説「獣人魔島」。 小菅刑務所に捕らえられていた死刑囚・梶原一彦が脱獄した。生まれながらの悪事の天才である梶原は世界的な医学者・鬼頭博士によってその脳をゴリラに移植され、恐るべき“獣人魔”として甦った。悪党集団・骸骨団の首領となり、次々と悪事を働く“獣人魔”に、新日報社の敏腕記者・三津木俊助と“探偵小僧”御子柴進少年が挑む。 どちらも横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。ダブルタイトルでの表記だけにどちらもそれなりに読み応えのある中編作品ですが、個人的には「怪獣男爵」の焼き直しかと思わせつつ、ラストにどんでん返しを持ってきて、「怪獣男爵」とはまたひと味違うモノに仕上がっている「獣人魔島」が興味深かったですね。角川文庫には昭和56年(1981年)に収録されました。 画像は昭和56年(1981年)に角川書店より刊行された「角川文庫 真珠塔・獣人魔島」です。こちらを指差す、不気味な髑髏の仮面をつけた怪人。まさに「真珠塔」に登場する怪人・金コウモリを描いた表紙画ですね。まるで杉本版“黄金バット”のような趣が感じられる画ですが、怪人の背後に事件の黒幕と思しき人物をちゃんと描いているのが流石、杉本画伯だと思います。 #横溝正史 #杉本一文 #山村正夫 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #ジュヴナイル #小説 #装画
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