角川書店 角川文庫 八つ墓村 第2.5期

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昭和四十六年四月三十日 初版発行
昭和四十八年二月二十五日 十一版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和24年(1949年)から昭和25年(1950年)にかけて雑誌「新青年」に連載されるも、途中で作者の急病や「新青年」の休刊もあり、その後は雑誌「宝石」に掲載誌を変え、昭和26年(1951年)まで連載された横溝正史の長編小説「八つ墓村」。
鳥取と岡山の県境にある八つ墓村。戦国時代、この地に黄金三千両と共に逃げ延びてきた落武者8人を、欲に目が眩んだ村人たちが惨殺したという忌まわしい伝説が残るこの村で、大正×年、村の有力者・田治見家の当主・要蔵が狂気の果てに村人32人を虐殺するという事件が起きた。要蔵は落武者殺しの首謀者・庄左衛門の末裔であった。それから二十数年後、要蔵の子・辰弥が村に帰郷することになり、それと前後して奇怪な連続殺人が次々と起こる...
血塗られた落ち武者伝説が残る寒村を舞台に繰り広げられる奇怪な連続殺人を描いた、横溝正史の代表作の一つですね。本格ミステリーであり、伝奇ロマンであり、冒険譚でもある、まさに横溝正史のサービス精神が横溢するエンターテインメント巨編ですが、角川文庫には昭和46年(1971年)、横溝正史作品の第1号として収録され、昭和50年代初頭に日本中を席巻することになる横溝正史ブームの礎となりました。
そして、角川文庫の横溝正史作品といえば切っても切れない関係にあるのが名イラストレーター、杉本一文氏による表紙画です。第1期(初版のみ)こそ河野通泰氏の手掛けたものでしたが、第2期(再版~)からは杉本氏が手掛け、横溝正史の作品世界と見事に合致した氏の表紙画は引き続き他作品でも採用され、多くの読者の支持を集めました(ちなみに、杉本氏の起用を決めたのは若き日の角川春樹氏で、自費出版された杉本氏の画集を見て気に入ったからだそうです)。
画像は昭和48年(1973年)に角川書店より刊行された「角川文庫 八つ墓村 第2.5期」です。鬼火・狐火・人魂などの類いを連想させる怪火の群れ。記念すべき杉本表紙画の第一弾ですが、サイケでアーティスティックな雰囲気でのちの作風とはだいぶ趣が異なりますね。しかしこの怪火には、過去に落武者殺しや32人殺しが起きた血塗られた八つ墓村に渦巻く怨念や情念といったものが込められている印象もあり、そうした不穏な気配が満ち満ちている辺りに杉本氏らしさを感じます。なお、このバージョンは当初は背表紙が白でしたが(白背)、途中から黒(黒背)に変更されました。なので当該バージョンを“2.5期”と呼称しています。

#横溝正史 #杉本一文 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画

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    tanupon

    2024/03/15 - 編集済み

    かなり昔に読みました。

    年月が経ち過ぎて
    祟りぢゃーーーッの「映画1977年版」と「名探偵・金田一耕助シリーズ・八つ墓村」の印象と
    ごちゃ混ぜになってしまい、
    「竜のあぎと」あたりからどれが原作か忘れてしまいました(^^;)

    ただ、辰弥と典子の結婚ハッピーエンドは原作以外には描かれてませんね。

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    • B6cf967ebcafa336fe0b5e970ad6d9c2

      dape_man

      2024/03/16

      里村典子は「八つ墓村」の“真ヒロイン”なんですが、映像化されると省略されてしまうことが多いのが残念ですね。これまで10回映像化されてきて、出てきたのは1971年NHKドラマ版、1996年市川監督映画版、2019年NHKドラマ版ぐらいでしょうか。1971年版は視聴不可能なので何ともいえませんが、最終的に辰弥と結ばれる予感で締め括った2019年版が一番原作に近い感じになるのかな。2019年版は短い尺にもかかわらず、原作のポイントを上手く押さえていたと思います。

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