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角川書店 角川文庫 青髪鬼
昭和五十六年九月三十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店
昭和28年(1953年)に雑誌「少年俱楽部」に連載された「大宝窟」を改題し、昭和29年に偕成社から刊行された横溝正史の長編小説「青髪鬼」。
ある日、東京の大新聞に一斉に掲載された三人の死亡広告。ところが当の三人は全員生きていて、質の悪い悪戯と思われたが、それから二週間が過ぎ、三人の内の一人、宝石王・古家万造の秘書が殺されるという事件が発生した。しかも、それはどうやら例の死亡広告の件と関わっているらしい。死亡広告を出した「髪の毛が秋の空よりもまっさお」な怪人・青髪鬼と、事件を引っ掻き回すかのように現れる怪盗・白蠟仮面、そして新日報社の“敏腕記者”三津木俊助と“探偵小僧”御子柴進少年のコンビ、三つ巴の闘いの幕が切って落とされた。
横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。題名からしてマリー・コレリの「ヴェンデッタ」を翻案した黒岩涙香の「白髪鬼」、更にそれを翻案した江戸川乱歩の同名作品を想起せずにはいられませんが、本作は確かにそうした「白髪鬼」の復讐譚的な要素もありつつ、主体となるのは如何にもジュヴナイルな冒険活劇。他作品で主役を張った“白蠟仮面”を投入し、更には直径1メートルもある“おばけグモ”まで登場してしまう荒唐無稽さがむしろ楽しい一編です。本書には表題作の他に「廃屋の少女」「バラの呪い」「真夜中の口笛」の短編3編が併録されています。いずれも少年少女向け雑誌に掲載されたものですが、「真夜中の口笛」のオチはまんまシャーロック・ホームズシリーズの某短編でした...。角川文庫には昭和56年(1981年)に収録されました。
画像は昭和56年(1981年)に角川書店より刊行された「角川文庫 青髪鬼」です。ニヤリと笑みを浮かべ、こちらを見ている不気味な男。まさに劇中で「目が鬼火のようにギラギラひかり、鼻がとがって、かっと大きくさけた口、ミイラのようにかさかさとして、しわのよった灰色のはだ」と描写されている怪人・青髪鬼を描いた表紙画ですね。しかしこの表紙画では、「髪の毛が秋の空よりもまっさお」と描写されている怪人の髪そのものよりも、顔に当てた原色の光の加減で青髪鬼を表現してしまうところに杉本画伯ならではのセンスを感じます。
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