角川書店 角川文庫 風船魔人・黄金魔人

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昭和六十年七月十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和31年(1956年)から昭和32年(1957年)にかけて雑誌「小学五年生」に連載された横溝正史の中編小説「風船魔人」。
桜の花も満開の四月半ば。産業博覧会で賑わう上野公園で、呼び物のサーカス団の楽屋から、7つの風船が結わえ付けられた一頭の馬が空に舞い上がった。それは超高度な浮遊力を持つガス体を発明した“風船魔人”の実験の始まりだった。空魔団を組織し、悪事を企む“風船魔人”に新日報社の“敏腕記者”三津木俊助と“探偵小僧”御子柴進少年が挑む。
昭和32年(1957年)に雑誌「おもしろブック」に連載された横溝正史の中編小説「黄金魔人」。
木枯らしの吹きすさぶ十二月以来、東京では16歳の少女たちが次々と世にも奇妙な黄金人間に狙われるという事件が発生していた。少女たちはいずれも苗字と名前が同じ音節から始まり、しかもイロハ順に狙われていった。ピストルの弾丸も跳ね返すほどの堅牢な金色の金属に身を包んだ黄金人間“黄金魔人”の目的は何か?不可解な事件に新日報社の“敏腕記者”三津木俊助と“探偵小僧”御子柴進少年が挑む。
どちらも横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。超強力なガス体を用いて悪事を企む“風船魔人”、全身金ピカで16歳の少女ばかり狙う“黄金魔人”、どちらも一風変わった怪人ですが、個人的には「ワタシ、黄金人間デス。面白イモノ見セテアゲル」などといって少女たちに近づく変質者チックな姿を想像すると面白い“黄金魔人”がツボでした(笑)本書には表題作の他に座談会「横溝正史の思い出を語る(二)」と「横溝正史少年少女小説著書・作品目録」、「雑誌・新聞掲載作品リスト」が併録されています。「横溝正史の思い出を語る(二)」は「角川文庫 姿なき怪人」に掲載された山村正夫氏司会による座談会の続きで、今回も横溝正史夫人・孝子さんと長男の亮一氏が横溝正史の興味深いエピソードを語っています。また、山村氏が作成された「横溝正史少年少女小説著書・作品目録」「雑誌・新聞掲載作品リスト」は当時としては資料性が高く、大いに参考になりました。角川文庫には昭和60年(1985年)に収録されました。
画像は昭和60年(1985年)に角川書店より刊行された「角川文庫 風船魔人・黄金魔人」です。真っ黒なトンガリ頭巾をすっぽり被った怪しい人物や、サーカスの団員のような面々。まさに劇中に登場する“風船魔人”や、天馬サーカス団の面々を描いた表紙画ですね。“風船魔人”の最初の実験で空に飛ばされた馬の“プリンス号”が劇中での描写通り、どこか悲しげに見えるのが印象的です。

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