ジネット・ヌヴ― 40e生誕記念 ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77

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ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.77
第1楽章 アレグロ ノン トロッポ:22.04
第2楽章 アダージオ       :09.04
第3楽章 アレグロ ジョコーゾ、マ ノン トロッポ ヴィヴァーチェ:07.55

ハンブルグ・ラジオ交響楽団
指揮:ハンス・シュミット・イッセルシュテット
Vn. ジネット・ヌヴ―
1948年ラジオ放送ライヴ録音 モノラル

NHKのFMでこの演奏をはじめて聴いた時、鳥肌が立った。
オーケストラの緊迫した序奏の後、高く飛翔するように舞い上がるヴァイオリンのその純粋で熱く光の仄白いひらめきのようなボウイング。女流でこの衝撃はチェリストであったデュ=プレのエルガー以来だった。
30歳で不慮の飛行機事故で亡くなったヌヴーの数少ない録音の中でも、ラジオ・オーケストラであったため、モノーラルながら非常にクオリティの高いものです。
1948年だから彼女が亡くなる1年前のライヴ録音になります。
ボクはヌヴーという名前をこの時刷り込まれ、片っ端から聴いたけれど、録音状態はこれが一番みたいですね。圧倒されました。
ジャケットの写真やネットでの古いポートレートをのぞくと、背は高く、バレリーナのように首が伸び、ピアニストのような、長く逞しい指と意志的な太く黒い眉をした、男性と見まがうような女性に見えます。
でも、その演奏には驚くほどの自己抑制と正反対の感情の奔流があり、絶妙のバランスと優美なフレージングがあります。
ブラームスに力負けしない男性的アプローチでありながら、そこには柔美といえる情感や凛とした気品がある。
カデンツァの強靱な意志と力強さそして青白い炎が揺らめくような瑞々しさ。
歌う楽器としてのヴァイオリンが汲み尽くされて歌いきっているようです。
ヴィニアフスキー国際ヴァイオリンコンクールで彼女が優勝したとき、その後塵を拝したのは後に20世紀最大の巨匠といわれたダヴィド・オイストラフでした。
早逝する芸術家は長く生きて完成される芸術家と同じレベルに若くして到達するかに思えますが、もし、彼女が50歳までの命を許されていたなら、オイストラフと彼女のコンクールで生じていた差は永遠に埋まらなかったかも知れないし、少なくともオイストラフと異質の評価のもとに二つそびえる孤高の存在として評価されたのではないかと思うのです。
こういう状態のいいモノーラルは歓迎します。
ボクは専門家ではないので雑音の中から演奏の真髄を拾い上げるほどの耳は持っていません。
楽しみが苦痛になるような聴き方はしたくないのです。
今、もう一度聴き直して、立て続けに聴いてしまいましたが、あの時受けたこのヴァイオリニストへの印象は今も間違っていなかったと思えました。

オーケストラにも弱さは感じませんでした。
イッセルシュテットは出来たばかりの手勢を非常に高いレベルに引き上げているようです。
こんな演奏をされたらオーケストラにもSomethingが生まれるものです。

YouTubeに音源がありましたが、1946年のものもあります。異なる音源です。手元の生誕記念CDは1948となっていますが、オケの名前は手元の音源の方が当時の名称を使用しているようです。
お勧めは1948年5月3日のこの最後のブラームスです。

https://youtu.be/729L0ke5Lxs

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