第四次発行5銭褐色:定常変種「右額面"銭”の下横棒落ち」【追記版】/ 4th Issue 5 Sen Brown: variety - right value inscription "Sen" one stroke missing [amendment]

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第四次発行5銭褐色印紙の定常変種で、右額面"銭”の旁の下の横棒が欠落している忘彫エラー。
このエラーは古屋カタログ(2011)には未収録であるが、長谷川カタログ(2016)に変種番号22-2として新たに収録された。

ここで示した個体は、第四次発行5銭褐色がなんと35枚も貼られたえげつない証書(おまけに第五次発行1銭黒が5枚と同10銭青が2枚貼られている!)の中から発見したもの。

印面の特徴を精査したところ、なんと第三次発行5銭茶褐色の第6版の定常変種と同一ポジションであることがわかった。画像2枚目で、第三次と第四次の2枚を比較してみたが、細かい紋様の特徴を含めて完全一致=同一ポジションであることがわかる。ちなみに長谷川カタログ(2016)に収録されている第三次と第四次のエラー印紙の画像(それぞれとp.161の変種番号17-6とp.166の変種番号22-2)でも完全一致することが確認できた。

すなわち、この第四次発行5銭エラー印紙(版別不明)は、第三次発行5銭の第6版エラー印紙と共通の原版を用いて印刷されたものであり、第三次発行と第四次発行との関係性を立証する、手彫印紙研究の上で貴重な実例であると考えられる。

貴重な出会いであるので、星5つとしてみた。本当に手彫印紙は深い!

======== 2023/10/15 追記:2枚目の発見、他 ==============================================

第四次発行5銭褐色印紙が4枚(横ベア+単片2枚で、見かけは田型)貼られた証書(追加:画像3枚目)の版別を行なっていたところ、田型に貼られている4枚の印紙(画像4枚目)の上にある横ペアの右側の印紙がこの定常変種(画像5枚目)であることを発見した。2枚目の発見となる。

さらに、古屋カタログ(2011)p.29に掲載されている第二次発行5銭の第6版・右"銭"下横棒落ちエラー印紙が、この第四次発行5銭の定常変種と全く同一のポジションであることが分かった!

すなわち、この第四次発行5銭エラー印紙の発見によって、第二次-第三次-第四次で同一の原版が流用されたということが実証されたことになる。

(ここに至った経緯については改めて小生のLabノート「手彫証券印紙ノート」にまとめる予定です)。
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-----(以下、少々ややこしい説明ですみませんが、備忘録として記載いたします。詳しくは改めて小生のLabノート「手彫証券印紙ノート」にまとめます)

第三次発行5銭印紙については、古屋(2011)は、その前のシリーズである第二次発行5銭印紙(以下「ルーレット目打」)との関係として、

「ルーレット目打の褐色5銭と同様に14版まで存在する。また、次の版はルーレット目打の版を和紙目打(注:第三次発行)に流用したことが確認されている。すなわち第1版、第7版、第8版、第9版、第10版、第14版の6つの版である。」

と述べている。また、長谷川(2016)では、

「5銭の多くはルーレットと同じ版を用いているが、流用されたことが確実な版と、不詳の版があり研究課題となっている。」

とある。さらに、長谷川(2022)では、

「ルーレットが14版であったので、目打の5銭も14版が確認されている。全てが同一版の流用である。」

とある。

一方で、第四次発行5銭印紙については、

古屋(2011)では「第1版は改色(和紙・ルーレット)5銭第1版の流用で、第2版も同じく第2版の流用である」とあり、

長谷川(2016)では古屋(2011)と同じ記述で、

長谷川(2022)では「134頁(註;129頁の誤り)には、ルーレットで使用した第3版に(註:「3版」=第1版、第2版、第3版の誤り)...」とあって、129頁に第二次発行(和紙ルーレット)と第四次発行(洋紙目打)の同一ポジション2枚組が第1版から第3版でそれぞれ示されている。

これらの記述をつなぎ合わせると、第三次発行5銭と第四次発行5銭との間では、少なくとも第1版から第3版の3つの版は、第二次発行5銭の原版を流用/再流用した和紙ルーレット-和紙目打-洋紙目打の共通版ということになる。

以上のことから、今回の共通版エラー印紙については、カタログなどでの版別を信じるとしたら第三次発行5銭の第6版なので、従前の3つの版以外での第三次-第四次共通版の(再)発見となる。今後はこの印紙の第四次での版別について詳細に分析する必要がある。

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