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非常階段 “蔵六の奇病”
当時、誰もが恐れた関西のノイズ・バンド、非常階段のフルでのファースト・アルバム”蔵六の奇病 (別名”2nd Damascus!”)を、今回は紹介します。非常階段については、もうバイオグラフィーを私が紹介するまでもなく、本まで出ているので、詳しくはそちらの本等を参照して下さい。でも、ちょっとだけ紹介しておきます。先ず、非常階段の前進は螺旋階段であり、1979年に、JOJO広重と頭士奈生樹の即興デュオで始まり、その後、Idiotこと高山謙一が加わります。後に高山が「これは螺旋階段ではない!非常階段だ!」と言ったとか。このトリオでの非常階段は2回ライブをやって、スタジオでの録音もしていますが、このトリオは「プレ非常階段」とか「オリジナル非常階段」とも呼ばれています。しかしながら、同年末に、頭士が脱退したことで、JOJO広重は当時やっていたバンド(非常階段、螺旋階段、ウルトラ・ビデ)をやめています。それで、1980年春に、広重は腐食のマリィ(Corroded Marie)と言う、Hawkwindみたいな曲を演奏する為のグループを立ち上げます。その時のメンバーは、広重の他に、岡俊行, ZukeことKatsuhiro Nakajima, マコことMasako Shigesugi, 市口章と美川俊治であり、スタジオで音出しすると、即興ノイズになってしまったことから、広重はこのバンドは一度やめようと考えていたらしいです。ただ、岡とZukeと市口は面白いと思っていたようで、バンドは存続します。そして、1980年6月に、新宿ACBホールでライブイベント「天国注射の夜」が開催される時に、工藤冬里が間違って、彼等のバンド名を「非常階段」と紹介してしまったのですが、広重はそれを暖簾に腕押しで、バンド名はそのまま「非常階段」で通すことになります。広重はHawkwindっぽくならない、この非常階段を壊そうと考えながら、その時のライブ音源を聴いていて、これは何らかの形でリリースしても良いんじゃないかと思えるようになります。そして、広重は、同年8月に、丁度、大阪で自主制作レーベルUnbalance Recordsを立ち上げた林直人に会う機会がありました。林は、岡とZukeにコンタクトを取り、ライブを観に行くことに。同年11月3日に、再度編成し直した非常階段は、大阪の創造道場で、Faustの”It’s A Rainy Day, Sunshine Girl”のカバーを演奏し始めてましたが、やはりフリーフォームなノイズになってしまい、また、Zukeがたこ焼きを客席にばら撒く等、パフォーマンス・アート的側面が前面に出始めたライブとなります。そうして、林のUnbalance Recordsから、非常階段、NG、Jurajiumの3組のノイズ・バンドのスプリット・アルバム”終末処理場”が、1980年12月にリリースされ、その中には、新宿ACBホールでの非常階段のライブ音源が、”腐食のマリィ”と言うタイトルで収められることになります。その後、非常階段のパフォーマンスは過激になっていき、ライブの時もメンバーが替わったりして(勿論、コアメンバーは替わりません)、不定形のノイズ・バンドとして活動して行くことになります。ライブで、納豆、ペンキ、放尿、何らかの液体、生魚、ゴカイやミミズ、使用済み生理用品などなどを暴力的に撒き散らすようになります。そして、音の方も、グチャグチャの即興ノイズの塊になっていきます。まあ当然、ライブハウスからは出禁になったりもしましたが、1980年〜1981年のライブ音源を厳選して集めたのが、今回のアルバムとなります。あと、付属のフォトブックや裏ジャケを観てもらえると分かるのですが、ステージ上はグチャグチャのドロドロになっています。それで、写真家の八木康夫が当時、とあるメジャー系の音楽雑誌に連載コーナーを持っていたのですが、ある時、彼が非常階段とほぶらきんとグンジョーガクレヨンの園田游の記事を写真付きで書いた所、いきなり掲載不可!のみならず、その連載コーナー自体も中止になると言う事件が起こり、その掲載予定だった記事と写真の一部が本アルバムの裏ジャケになっています。あともう一つ、慶應大学日吉校舎での非常階段のライブでは、消火器を撒き散らし、ガラスと言うガラス、蛍光灯も全て割ってしまい、それを観た灰野敬二が「これが君たちの表現か‼️」と劇オコだったとか。そんなことは、当時のFridayなんかでも変態バンドとして紹介されたりして、ちょっとだけお茶の間でも知られるようになったかも。そんな中で、音楽指向組とパフォーマンス組に何となく分かれ、後者は一度やったことは2回も3回もやっても意味が無いとして、段々と離れていき、1984年にセカンド・アルバム”Viva Angel”を出す頃には、録音参加メンバーも5人だけグッと少なくなり、ライブもビデオを投影しながらの演奏であったようです。その際に、広重は自身のレーベルAlchemy Recordsを設立して、現在も活動しています、勿論、非常階段も!その後、非常階段はKing of Noiseとして、JOJO広重 (G), Junko (Vo), T.美川 (Electronics), 岡野太 (Drs)から成る基本メンバーで、現在も活動しています。バイオグラフィーはここら辺までとします。 それで、本作品についてご紹介します。このアルバムのジャケの絵は、異形の漫画家 日野日出志が描いており、そのタイトルが「蔵六の奇病」であったことから、このアルバムはそう呼ばれるようになります。また、レコードが入っていたビニール袋には”2nd Damascus!”とも記載がありますが、これには「このアルバムが、セカンド・アルバムであるかのように騙すことはカス野郎である」と言うダブル・ミーニングがあったようで、何だか、Smegmaの”Glamour Girl”みたいですね。また、このアルバムの曲には、曲名は無く、演奏場所と演奏日時が記載されているだけで、A面4曲/B面2曲が収録されています。あと、白黒のライブ写真がブックレット風に付属しているのですが、この写真を見ながら聴くことをお勧めします。では、各曲を紹介していきます。 A1 “マントヒヒ(大阪) 1981/4/26”では、いきなり「嘔吐」する音だけが収録されています。これは、当時、ちょっとショッキングでしたね。 A2 “磔磔 (京都) 1981/4/19”では、美川俊治の電子音と市口章のSaxにオルガン(これはセミ丸がオルガンに乗っかってお尻で弾いている)とが中心となり、即興的な音の塊がノイズ化していき、後半にはDrsも入ってきます。因みに、市口はSaxに黒いビニール袋を被せて吹いています。 A3 “創造道場 (大阪) 1980/11/3”では、先述のFaustのカバーが聴けますが、フリーキーなSaxやG等が入ってきて、グチャグチャになっていきます。 A4 “新宿ロフト(東京) 1981/8/29”でも塊のような様々な音(=ノイズ)が、圧倒的パワーで放出されています。叫び声とオルガンが狂気の様です。 B1 “慶応大学日吉315教室 (神奈川) 1981/6/27”では、咆哮とSaxから始まり、更にフィードバック音や何か分からない音も混在して、カオスへと向かいます。後半ではDrsらしき音も入っています。 B2 “同志社大学至誠館24教室 (京都) 1981/11/27”でも、フリーに叩くDrsとフィードバック音や咆哮、Saxが入り乱れていきますが、途中でDrsとSaxだけになり、再び、Gなどの音も入ってきます。また、途中で観客が「怖いわ、これ、怖いぃ!」と言っている声が入っているので、何が起きているかが分かりそうですね。 ドキュメント的性格が濃厚なアルバムですが、当時の非常階段の「暴れっぷり」を知るには最適な作品ですね。しかしながら、そう言ったパフォーマンス的な面を想像するだけではなく、音自体も集団即興による「ノイズ化」も感受できる作品だと思います❗️何度もリマスターや再発されていますが、是非とも爆音で聴きたい1枚ですね❗️ A1 “マントヒヒ(大阪) 1981/4/26” A2 “磔磔 (京都) 1981/4/19” A3 “創造道場 (大阪) 1980/11/3” A4 “新宿ロフト(東京) 1981/8/29” B1 “慶応大学日吉315教室 (神奈川) 1981/6/27” B2 “同志社大学至誠館24教室 (京都) 1981/11/27” [full album] https://youtu.be/JPgGcMDt5lQ?si=oVMed9rRc4bNVtE5 #非常階段 #HijoKaidan #蔵六の奇病 #Zouroku-No-Kibyo #2ndDamascus! #UnbalanceRecords #FirstAlbum #Noise #Improvisation #LivePerformance #LivePhotoBooklet #凶悪 #Osaka #JOJO広重 #JojoHiroshige #谷口守 #岡俊行 #美川俊治 #ToshijiMikawa #Zuke #セミ丸 #Woo #上幸一郎 #市口章 #夕刊五郎 #すみれまん #林直人 #狩野由可子 #野生の驚異 #向井千恵 #山崎正太郎 #Geso #八木康夫 #日野日出志 #白石民夫 #古賀正恭 #早川光 #あらいりょうすけ #桑本正士 #西川義昌 #EU #守部立人 #みちろう #しんたろう #じゅん #たむ #堀井津矢子 #坂口倫靖 #武藤むねひろ #赤坂博 #広田ルーメン #石橋正二郎 #科伏 #Dr坂中 #中島・北島(マントヒヒ) #かがわ(キャリー・リー) #Bide #一生非常階段 #頭士奈生樹 #高山謙一 #螺旋階段
Noise / Improvisation / Performance Art Unbalance Records 2000円Dr K2
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非常階段 “Viva Angel”
今回は、最凶/最強のノイズ・バンド非常階段のセカンド・アルバム”Viva Angel”を紹介します。このアルバムは1984年に、自身のレーベルAlchemy Recordsからリリースされていますが、この頃になると、ファースト・アルバムのような「キワモノ」扱いはすっかり下火になり、ノイズを単なる騒音パフォーマンスから音楽としてのノイズへとシフトしていってます。その為か、このセカンド・アルバムは余り評価されていないようにも思えます。実際、私もこのアルバムに関しては、リリース当時は某友人から聴かせてもらったけれども、最初は琴線に触れなかった位ですから。既にパフォーマンス組は離脱しており、音楽組だけが残り、非常階段を続けていたようです。この時のメンバーは、JOJO広重 (G), Junko N. (Vo), 林直人 (B), 横山Sakevi (Others), T.美川 (Electronics, Vo)の5人でした。また、このアルバムは、ライブ録音では無く、1984年9月にAlchemy Studioでのスタジオ録音であったことも大きいようです。 それでは、ピュアにノイズ・ミュージックをやり始めた非常階段のセカンド・アルバムを紹介していきましょう。先ず、ジャケのデザインはFaustの”So Far”のオマージュでかつアルバム・タイトルはLa Düsseldorfのアルバム”Viva”から来ているようです。そんなプログレ好きな非常階段のアイデアが詰まっています。内容もA面6曲/B面1曲と言うアシンメトリーな構成になっています。それでは、各曲を紹介していきます。 ★A1 “Seeds Rock 'N Roll”では、呪文のようなVoと電子音と単調なスネアの反復打撃音から成り、一応、リズムらしき構造は聴取出来ます。 ★A2 “Hellthy Girl”は、分厚い電子音とGノイズが暴れる上に、Junkoと思われるVoiceが聴こえる曲です。フィードバック音がノイズだなあと思わせます。 ★A3 “Secret Desire”は、浮遊する電子音とGらしきノイズ音から成る曲で、引いた感じがまた良い。スタジオ録音らしい出来映えで、新境地ですね。 ★A4 “Twilight Guitar”は、空間を切り裂くGノイズが前面に、そしてバックには電子音が聴取できる曲です。JOJOさんのG、凄いですね。 ★A5 “Viva Angel”は、ビートを叩き出すDrsとBの上に、Gノイズ(と電子音?)が乗ると言った元祖ノイズ・ロック的な曲で、Voiceすら聴くことが可能で、異色なチューンで、カッコ良いです! ★A6 “Broken Young Bud”は再び、電子音とGノイズのテンションの高い絡みから成る曲で、複数のVoiceと言うか咆哮から成る曲です。これらのバックに通奏低音のような持続電子音が流れています。 ★B “Bad Character, But Great Sounds”は、A面とは異なり、Gノイズと電子音とBらしき低音等がかなりの音圧で収められており、ここら辺から、ノイズ・バンドとして自覚的に曲を録音するようになったのではないかと思われます。A5と共に、B面一杯使ったこの曲も、本アルバムのハイライトでしょう。個人的には、この曲が一番のお気に入りです。それにしても、曲名の「性格悪いが、音凄い」とは誰のことでしょう? スタジオを使っての録音と言うこともあって、各音が比較的分離して良く聴こえます。それが良い悪いは別として、「音楽」としては聴き易くなっていますし、それでも、B面一杯を使っての曲などは、強靭な音(=ノイズ)を放射しており、その後の非常階段の音楽性を示唆する出来映えだと思います。また、A5のようなロック的アプローチも興味深いですが、確か、多重録音で録ったとか(間違っていたら、ごめんなさい!)で、当時はそんな音楽を欲していたので、良く覚えていましたね。きっとJOJOさんのロックへの偏愛なのでしょう! 非常階段がプログレから始まったのを確認出来る一枚となっています。なので、そのルーツとその後の発展性を知るには重要なアルバムだと思いますので、ノイズ偏愛者のリスナーさんはマストなアルバムですよ‼️ A1 “Seeds Rock 'N Roll” A2 “Hellthy Girl” A3 “Secret Desire” A4 “Twilight Guitar” A5 “Viva Angel” A6 “Broken Young Bud” B “Bad Character, But Great Sounds” https://youtu.be/bgi_TeuhGLc?si=wU5FD2XqR6Jd3Whj #Hijokaidan #非常階段 #VivaAngel #AlchemyRecords #Noise #NoiseMusic #StudioAlbum #SecondAlbum #JOJO広重 #JOJOHiroshige #JunkoN. #NaotoHayashi #林直人 #Sakevi #横山Sakevi #美川俊治 #T.Mikawa
Noise / Noise Rock Alchemy Records 不明Dr K2
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陰猟腐厭 “s/t”
日本地下音楽界の最後の謎、陰猟腐厭 (インリョウフエンと読む)のファーストアルバムが登場です。このバンドは自動書記としての即興演奏をコンセプトに活動しているからか、作品名や曲名は一切付けず、また、その読みにくいバンド名も人が忌み嫌う漢字を4つ選んで、それで語呂の良いように並べたと言う徹底した無意味主義を押し通しています。メンバーは増田直行 (G), 大山正道 (Kbd)と原田淳 (Dr)の3人組で、結成は1978年,横浜で。3人は、高校生の時に,シュールレアリズム研究会に属しており、何の取り決めもなく、その場で演奏するバンドとして活動。初のレコードが、「妥協せず」と言うソノシートで、執拗に同じフレーズを繰り返す演奏の途中に,活動家がマイク・ジャックし、演説を始めたけれど、PAの人が、面白がって、エフェクトかけて、変調したりしたにも関わらず、そのまま演奏は続けられたと言うハプニング的な「事故演奏」がそのまま収められてると言う代物でした。それがCragale Records (クラゲイル)の一枚目のリリースになります。そんな得体の知れないバンド(バンドと言っていいのかな?)は当時の東京や横浜にはいなかったですし、勿体ぶった即興演奏とも関係が無かったと思います。その後、数十年経って、漸く、時代が追いついたのか、過去の演奏からのベスト盤的アルバムもリリースされました(初めて,曲名が記載されていた!)。 それで、本作品ですが、このアルバムには当初、真っ白なジャケとラベルで、何のクレジットも情報もない状態でリリース予定でしたが、これでは流通できないとの批判を受け、メンバーらがマジックの手書きでバンド名を書いたと言う逸話があります。A面と思しき片面にはドラムとキーボードとギターが中を浮く雲のように絡んだり、離れたりする即興演奏が刻まれており、もう片面にはリコーダーとオモチャのピアノ及び鉄琴(?)のポツポツした調べの小曲とダイナミックなドラムが曲を先導する讃美歌のようなちょっと長目の曲が刻まれている。当然、タイトルとかクレジットとか録音などに関する情報等は一切無いのですよ。しかしながらB面と思わしき曲はドラムが凄くて、私のタイプですね。本来なら、A面の演奏が現場の音に近いとは思いますが。決して緩い訳ではなく、剥き出しの音楽の「意味性」を軽々と超えているところが凄いです。そんな音楽の無意味性を聴いてみてください。難解な音楽ではないので。 A “Untitled” B1 “Untitled” B2 “Untitled” [別のアルバム”初期作品集 = Early Works 1980-82”] https://youtu.be/o2YD2PH4N_s?si=g5Klypvo8DKxPzBY #陰猟腐厭 #Inryo-Fuen #CragaleRecords #即興 #Improvisation #増田直行 #大山正道 #原田淳 #横浜
Improvisation Cragale Records 不明Dr K2
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細野晴臣 (Haruomi Hosono) “フィルハーモニー (Philharmony”
やっと入手しました!細野晴臣氏のソロアルバム”フィルハーモニー (Philharmony)”で、純粋なソロアルバムとしては5作目になります。このアルバムはヤフオクでも高値で取引されていて、中々、入手困難でしたが、やっと落札出来ました。私は、YMOはそれ程好きではないですが、唯一好きなアルバム”BGM”の中でも、細野晴臣氏の曲(“Rap Phenomenon [ラップ現象]”と”マス [Mass]”)が大好きだったので、多分、私の中で細野晴臣氏は別格化されたのかも知れませんね。それで、今回は、ゲストに、Hajime Tachibana (立花ハジメ), Kazuhiko Katoh (加藤和彦), Keiko Shinozaki, Koji Ueno (上野耕路), Masayoshi Sukita, Moro, Namu, Ume, Yukihiro Takahashi (高橋幸宏), Yukimasa Okumuraを迎えて制作されていますが、誰がどの曲で何を担当していたのか詳細は不明です。 と言う訳で、本作品の内容について紹介していきます。 ★A1 “Picnic (ピクニック)”は、不明瞭なシンセの調べから始まるワルツのリズムの曲で、サンプリングした声をリズムに乗せたり、シンセと重ねたりと色々試しています。 ★A2 “Funiculi Funicula (フニクリ, フニクラ)”は、童謡をテクノでやったと言う曲ですが、歌詞は日本語で、結構、シーケンスが1980年代的で懐かしい感じです。 ★A3 “Luminescent / Hotaru (ホタル)”は、ガムランっぽい打楽器音をシンセで作って、簡素なシンセとヴォイスが色を付けると言った曲で、ミニマルですね。 ★A4 “Platonic (プラトニック)”は、ドラムが入って、多層的なシーケンスとサンプリングVoから成るミニマルな曲ですが、ガヤガヤした人の声がVo代わりに使われています。 ★A5 “In Limbo (リンボ)”では、多層的シーケンスによるミニマルな曲で、ドラムは使われていません。若干、ワールド・ミュージックっぽい雰囲気を感受出来ます。 ★B1 “Living-Dining-Kitchen (L.D.K.)”は、YMO的なドラムとシーケンスと英語Voの入った曲ですが、まあ可もなく不可もなくと言った印象です。 ★B2 “Birthday Party (お誕生会)”は、金属製の打楽器らしき音と合成音から作られた不思議なリズムの曲で、女性Vo/語りが薄ら乗った実験性を感じられます。 ★B3 “Sports Men (スポーツマン)”では、ドラムとベース・シーケンスと英語Voから成る曲で、ややハツラツとしていますが、何となく陰キャな(?)曲です。 ★B4 “Philharmony (フィルハーモニー)”は、多層的なシンセの小気味良いリズミックなシーケンスから成る曲ですね。ある種の実験性を感じます。 ★B5 “Air-Condition (エア・コン)”では、シンセによる波状の音を中心に、不明瞭なメロディが壮厳に鳴り響きます。バックには微かなパルス音も! と言う訳で、聴いてみて、如何にもYMO的な曲も多少混ざってはいますが、殆どの曲にマテリアリズムとミニマリズムなどの先見性/実験性を受け取ることが出来て、充分に楽しめました。 この頃に、既にミニマルなコード進行を持って、ポップミュージックの範囲内で曲を構築することを実践していたのは凄いですね。それと、シンセとコンピュータの可能性を追求していたのも先見の明があると思います。なので、ポップ・ミュージックの辺境まで行ってしまった細野晴臣氏の心意気を感じ取って下さい❗️ A2 “Funiculi Funicula (フニクリ, フニクラ)” https://youtu.be/d-Huc4cXz-E?si=dz3VEy93ENwluu9q [full album] https://youtube.com/playlist?list=PL4NXUZspQ7Bx_wqpSolNJhigWew9f4icA&si=YcazPPHsHC11oSk8 #細野晴臣 #HaruomiHosono #フィルハーモニー #Philharmony #YenRecords #AlfaRecords #SoloAlbum #5ThAlbum #ElectroPop #Experimental #YellowMagicOrchestra #HajimeTachibana #KazuhikoKatoh #KeikoShinozaki #KojiUeno #MasayoshiSukita #Moro #Namu #Ume #YukihiroTakahashi #YukimasaOkumura
Electro Pop / Experimental Yen Records (Alfa Records) 5775円Dr K2
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白石隆之 “d^b”
またまた、白石隆之さんの本名名義の作品”d^b(ダブ)”です。今回は、今までの過去音源の紹介とは違って、新録と言うことと7㌅シングルにブックレットが付いているのでご紹介します。盤はクリア盤で、3〜4分程度の曲”Zanzo”と”Zankyo”からなります。両曲とも打ち込みによる電子音楽で、頭の中をちょっとシェイクするかのようなアブストラクト・テクノな内容となっています。まあ,踊れない電子音楽ですね。これに対応して、ブックレットの方も,白石さん撮影の多露光撮影の写真のカラー印刷が納められており,こちらもアブストラクトな内容となっています。この二つの媒体を取り出し、プレーヤーにかけたり、裏返したり、ブックレットをめくって見たりする行為にフィジカルな意味合いがあるように思え、一種の謎解きがあるようにも感じられます。また,白石さんはこの作品を自身のプライベート・レーベルHERE.から出しており、ちょっとした実験的音源を軽いフットワークでリリースすることができるアウトプットが欲しかったと言っています。丁寧に作られていますので、もし、現在進行形の白石さんの音に興味が有れば、聴いてみて下さい。恐らくそんなにはプレスしてないと思われますので、このシングル&ブックレットが欲しい方は急いで下さい❗️ A “Zanzo” B “Zankyo” B “Zankyo” https://youtu.be/h0sDQKbdNiU?si=AbbbahLKPdEXRN8E [白石さんの2011年のライブ音源も] https://youtu.be/xADFQDzzOrQ #ShiraishiTakayuki #Zankyo #Zanzo #HERE. #PostRock #AbstractTechno #Booklet
Experimental techno HERE. 1000円Dr K2
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武満徹 “武満徹の音楽-3(Work of Toru Takemitsu)”
波瀾万丈の幼少期を過ごした、日本を代表する作曲家の一人である武満徹氏の登場です。もう皆さんの中にも私より詳し方もいらっしゃるとは思いますが、なるべく簡単に書きたいと思います。先ず、両親のことですが、父親は帝国海上保険に勤めていましたが、会社には余り行かず、ビリヤードやダンスに明け暮れたらしいです。母親は祖父が漢学者で厳格な家に育ちましたが、女学生の時にはコレスポンデンス・クラブに入って、外国人と文通したり、軍部批判を声高に喋ったりする不良少女でした。小学生までは満州の大連にいましたが、入学する時には東京の叔母の家に単身預けられました。その時に従兄が4人いて、内の下の2人からは影響を受けていたようです。従兄は、ベートーヴェンなんかのまさしくポピュラーなクラシック音楽が好きでさたが、その一方で1948年に行われた「新作曲派協会」第2回作品発表会に足を運び、後に作曲を師事する清瀬保二の「ヴァイオリンソナタ第1番」のような、当時としては新しい音楽に感動していたとされています。中学生になって在学中に埼玉県の陸軍食糧基地に勤労動員されます。軍の宿舎で、同室の下士官が隠れて聴いていたLucienne Boyer(リュシエンヌ・ボワイエ)が歌うシャンソン”聴かせてよ、愛のことばを(Parlez-moi d'amour)”を耳にして衝撃を受けたそうです。これらの体験から武満は音楽の道を進もうと決心しました。終戦後、清瀬保二に作曲を師事しましたが、ほとんど独学であったそうです。京華中学校卒業後、1949年に東京音楽学校(この年の5月から東京芸術大学)作曲科を受験していますが、その時知り合った天才少年と話していて「作曲をするのに学校だの教育だの無関係だろう」と言う結論に達して、 受験2日目は欠席しています。当時はピアノを買うお金もなく、知らない家からピアノの音が聞こえてくるとそこの家に行って弾かせてもらっていたそうです。その為か、黛敏郎は、武満と面識はなかったにも関わらず、妻のピアノをプレゼントしています。1950年に、作曲の師である清瀬保二らが開催した「新作曲派協会」第7回作品発表会において、ピアノ曲”2つのレント”を発表して作曲家デビューしていますが、音楽評論家の山根銀二に酷評され、泣いていたそうです。この頃、詩人の瀧口修造と知り合い、次作となるヴァイオリンとピアノのための作品”妖精の距離”(1951年)のタイトルを彼の同名の詩から取っています。同年、瀧口の下に多方面の芸術家が参集して結成された芸術集団「実験工房」の結成メンバーとして、作曲家の湯浅譲二らとともに参加、バレエ”生きる悦び”で音楽(鈴木博義と共作)と指揮を担当したほか、ピアノ曲”遮られない休息I”(1952年)などの作品を発表しています。この最初期の作風はOlivier MessiaenとArnold Schoenbergに強い影響を受けています。「実験工房」内での同人活動として、上述の湯浅譲二や鈴木博義、佐藤慶次郎、福島和夫、ピアニストの園田高弘らと共に、Olivier Messiaenの研究と広義の電子音楽(主にテープ音楽)を手がけています。また武満はテープ音楽(ミュジーク・コンクレート)として、”Vocalism A.I”(1956年), “木・空・鳥”(同年)などを製作し、音楽を楽音のみならず具体音からなる要素として捉える意識を身につけていったとのことです。「実験工房」に参加した頃より、映画、舞台、ラジオ、テレビなど幅広いジャンルにおいて創作活動を開始しており、日活映画”狂った果実”の音楽(1956年、佐藤勝との共作), 橘バレエ団のためのバレエ音楽”銀河鉄道の旅”(1953年), 劇団文学座のための劇音楽”夏と煙”(1954年), 劇団四季のための”野性の女”(1955年), 森永チョコレートのコマーシャル(1954年)などを手がけた。これらの作品には、ミュジーク・コンクレートの手法が生かされている他、実験的な楽器の組み合わせが試みられています。また作風においても、前衛的な手法から、ポップなもの、後に”うた”としてシリーズ化される”さようなら”(1954年), “うたうだけ”(1958年)のような分かりやすいものまで幅が広がっています。1957年、早坂文雄に献呈された”弦楽のためのレクイエム”を発表し、この作品のテープを、1959年に来日していたIgor Stravinskyが偶然NHKで聴き、絶賛し、後の世界的評価の契機となったそうです。ここら辺から作風も和楽器を取り入れたものも作曲するようになり、「世界の武満」として知られるようになります。バイオグラフィーは一旦、ここら辺で辞めておきます。 それで、本作品「孤(Arc)」ですが、副題通り、オケとピアノの為の協奏曲で、ピアノは一柳慧が、指揮は若杉弘(Part 1)と岩城宏之(Part 2)が、オケは読売日本交響楽団が担当しています。A面はPart 1と題され、1. Pile, 2. Solitude, 3. Your Love and the Crossingから成り、B面はPart 2と題され、4. Textures, 5. Reflection, 6. Coda…Shall Begin from the Endから成ります。とにかく、ダイナミックな曲で、振幅の幅が半端無いです。特に一柳氏のピアノはトーン・クラスターも交えて、正しく「ピアノ・フォルテ」ですね。私のような素人にも、この曲に込められた意志を感じ取ることができます。この曲は半分が1963年に作曲され、残り半分が1976年に作曲され、完結した曲のようです。しかし、そのような時間の隔たりを感じさせない程の完成度が聴いて取れます。次回は武満徹のミュージック・コンクレートが聴きたいですね。音楽教育が無くても、このような素晴らしい音楽を作れるのは、やはり天才だったのでしょう。皆さんも一度でもは聴いてみてください! “Part 1” https://youtu.be/s39EZanjU-Y “Part 2” https://youtu.be/C7hWFLrMU_w #武満徹 #孤 #Victor #ToruTakemitsu #Arc #ModernClassic #ConcertoForPianoAndOrchestra #Composer #ToshiIchiyanagi
現代音楽 Victor 不明Dr K2
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招き猫カゲキ団 “第一歌曲集”
以前に、日本のインディーズ出自のバンドとして、恐らく一番成功したのが、Zeldaではないか?と言って、Zeldaのアルバムを紹介していたと思うのですが、今回は、そのZeldaのVoの高橋小夜子とBの小嶋さちほから成るスピンオフ・ユニット招き猫カゲキ団の10㌅EP”第一歌曲集”を紹介します。どこかで読んだと記憶しているのですが、レーベルのTelegraph Recordsが方向性か金銭面かで行き詰まっていた時に、このEPを出したら、何とかレーベル存続が出来て、うまくいったとのことで、正にTelegraph Recordsにとって救世主であったようです。メンバーは先述の高橋小夜子と小嶋さちほの2人ですが、このEPでは、他に、鈴木ヨーコ(G), 渡邉雅美(Drs)が参加しており、また、小山まさのり (Bell, Back-Vo), 小貫隆信 (Cymbal), 小西造次 (泣きG), 小杉均 (Hihat), 地引雄一 (オルゴール)もゲスト参加しています。曲によって演奏する楽器も代えているので、それらも含めて、各曲を紹介していきますね。 ★A1 “人形” (3:48)では、オルゴールに導かれて、やがてオムニコードの調べに乗せて、Voが静かに、そしてハキハキと歌っており、2人のコーラスワークも冴えています。 [小嶋さちほ(Vo, オムニコード), 高橋小夜子(Vo, オムニハープ)] ★A2 “砂漠のマリアンヌ” (3:42)では、民族音楽調のタムを多用したDrsとピアノに、小夜子のVoのちょい一生懸命なVoが切羽詰まって歌っていますが、サビ以降は素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれます。 [高橋小夜子(Vo, Drs, Piano), 小嶋さちほ(B, Vo, Piano), 鈴木ヨーコ(G), 渡邉雅美 (Drs)] ★B1 “森のおくりもの” (2:20)は、アコーディオンとDrsとClarinetによるワルツで、サビのコーラス部分は秀逸です。時にファルセット気味なVoも良い塩梅! [高橋小夜子(Vo, Clarinet), 小嶋さちほ(B, Vo, オムニコード&ハープ), 鈴木ヨーコ(G, B, Vo), 渡邉雅美(Drs, B, Vo, アコーディオン)] ★B2 “幻夜” (4:43)は、落ち着いたゆったりした曲ですが、Drsとオムニコードに合わせて歌う小夜子のVoとさちほのコーラスが心地よいです。バックの演奏も良くアレンジされています。 [高橋小夜子(Vo, オムニコード), 小嶋さちほ(B, Vo, オムニコード&ハープ), 鈴木ヨーコ(G), 渡邉雅美(Drs)] 久しぶりに聴いてみたのですが、やっぱりに「歌もの」にフォーカスしている点で、内省的で感受性豊かな音楽だなぁと感心しました。このユニットが、この1枚しか録音物を残さなかったのは残念です。Zeldaとは方向性は違いますが、こう言う「遊び心」のある音楽は、大切に聴いていきたいと、改めて思いました。10㌅、45回転、全4曲入りなので、聴き終わっても、またすぐに聴きたくなりますね。耳が疲れた時には、この作品を聴いてみて下さい!また、おまけに彼女らのライブ音源も貼っておきますので、聴いてみて下さい。 [full EP] https://youtu.be/IQcXTOh7IRw?si=UjTSAYqnfbHjn-md [おまけ: Live at Four Vally on Sep. 4, 1983] https://youtu.be/iXk3ruxoZaE?si=9LGKzPSJX4rQFA1Z #招き猫カゲキ団 #第一歌曲集 #TelegraphRecords #JapaneseUnderground #Spin-OffUnit #Zelda #WorldMusic #Folk #Acoustic #歌謡 #10inchEP #高橋小夜子 #小嶋さちほ #鈴木ヨーコ #渡邉雅美 #Guests #小山まさのり #小貫隆信 #小西造次 #小杉均 #地引雄一
Post Punk / Folk / World Telegraph Records 不明Dr K2
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巻上公一 “民族の祭典”
今回は、ヒカシューでもお馴染みの巻上公一さんのソロアルバム「民族の祭典」を紹介します。この作品はソロとしてはファースト・アルバムになります。1978年にヒカシューを結成し、独特のヴォーカル・スタイルで異色の「テクノ御三家」の一つとなっています。その時は、巻上さんはベースも弾いており、時にはトランペットも吹いていました。その後、ヒカシューはサード・アルバム「噂の人類」にて脱テクノ化をはかり、メンバーチェンジを経て、現在は即興と楽曲の間を行き来する特異なポジショニングを得て、世界中でフェスなどに参加、好評を得ています。そんなヒカシューのメイン・ヴォーカルの巻上さんですが、現在は、口琴やテルミンも演奏しており、トゥパホーメイの日本支部にも携わっている活動家でもあります。それで、今回、ご紹介するのは、巻上さんのファースト・ソロ・アルバム「民族の祭典」です。参加者は、巻上公一 (Vo, B, Trumpet), 泉水敏郎 (Drs), 立花ハジメ (G, Alto-Sax[B3, B5]), 海琳正道 (G), 板倉文明 (特殊チューンドG [A4,B3]), 上野耕路 (A-Piano [A5], Synth [A3, B1]), 柿崎譲二 (A-Piano, Accordion [A2]), 山下康 {Piano, Vibraphone, Perc, Alto-Sax), 井上誠 (Synth), 戸川純 (Vo [B2])で、アレンジは巻上さんが、プロデュースは巻上さんと海琳でやっています。まあ選んだ曲もヴァラエティに富んでおり、民族音楽から民謡や古い歌謡曲、更にはヒカシューの曲の別アレンジまで含んでいます。A1 「森の小人」ではエセ民族音楽風のシンセや途中にフリーな部分も含みます。A2「国境の町」やA3「桑港のチャイナ街」は古い歌謡曲ですが、巻上さんのヴォーカルが良く合っています。A4「アルタネイティヴ・サン」はヒカシューのセカンドアルバム「夏」に収録されてた曲をアコースティックかつスローかつインド音楽風にアレンジし直した曲。A5「私の青空」は米国音楽家Walter DonaldsonとGeorge Whitingと”My Blue Heaven”をアレンジしたシャレ乙な曲ですが、最後にパンク調に。B1「イヨマンテ(熊祭)の夜」は巻上さんのヴォーカリゼーションが最もマッチした民謡。B2「おおブリネリ」では戸川さんと巻上さんのVoのせめぎ合いとそのバックの即興演奏が如何にもな出来です。B3「マヴォの歌」は民謡(?)をアレンジした曲で少しコミカルにアレンジしてあります。B4 「赤い靴」は民謡ですが、かなり不気味にアレンジされてます。B5「不滅のスタイル」はこの頃のヒカシューとしても良い曲で、これで締めています。もし、巻上さん初期の活動に興味がある方は、是非とも押さえておくべき作品だと思いますよ。 https://youtu.be/DZFDF1XmPjU #巻上公一 #民族の祭典 #Eastworld #東芝EMI #SoloAlbum #First #ヒカシュー #Vocalist #民謡 #民族音楽 #WorldMusic #Folk #歌謡曲 #Self-Arranged #泉水敏郎 #立花ハジメ #海琳正道 #板倉文明 #上野耕路 #柿崎譲二 #山下康 #井上誠 #戸川純
Experimental Pop / Vocalization Eastworld (東芝EMI) 2500円位?Dr K2
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坂本龍一 “B-2 Unit”
まあ、皆さん、坂本龍一氏のことは良くご存知だとは思いますが、私は今まで何故かYMOも含めた、彼のアルバムを避けてきました。YMOも”BGM”しか聴いてませんし。それで、多くのリスナーが”BGM”と本作”B-2 Unit”は良いとの感想を聞いてきましたので、それなら、聴いてみようとなった訳です。坂本龍一氏のキャリアについては、多分、皆さんの方が詳しいとは思いますが、本作までの経緯を簡単に。1979年代に彼は活動を開始していますが、当時は、日本芸術大学の作曲科の学生で、修士まで取得しています。それで、彼は1978年に、細野晴臣氏と高橋幸宏氏とYMOを結成し、その後、破竹の勢いで、テクノポップの王道を作りあげます。また、同時にソロ作もコンスタントに出しており、その一つが、本作”B-2 Unit”です。それ以降の活動については、ここでは控え、本作について述べたいと思います。本作は1980年と言う、特異な年に発表されています。セルフ・プロデュースですが、参加アーティストとして、XTCのAndy Partridge, グンジョウガクレヨンの組原正、大村健司も協力しており、更にはエンジニアにはダブの達人Dennis Bovellの名前もあります。あと、YMOのタンスを操っていた松武秀樹もプログラミングで参加しています。この事からも分かるように、坂本氏は、ダブやその当時出てきたAlternative Musicのコンテンツを、自身の電子音楽のフィルターで解釈しようとしたのではないでしょうか?それ程、ダブの影響は強くはありませんが、それを想起させる瞬間はあります。また、リズムを強調した音処理も同時代性を感じさせます。個人的にはB面最後の曲”the end of europe”のヘビネスが好みです。クラシックの素養のある坂本氏がこのようなロック或いはポップミュージックのフィールドでやっていたことにどのような意味があるのかな?と勘ぐってしまいますが、早々、彼は様々なフィールドで活躍していくのを見て、本作は正しく「1980年の音楽」であったと言えましょう。それにしてもジャケは「ん〜」です。 A1 “Differencia” (2:04) A2 “Thatness And Thereness” (3:27) A3 “Participation Mystique” (6:41) A4 “E-3A” (4:45) B1 “Iconic Storage” (4:43) B2 “Riot In Lagos” (5:40) B3 “Not The 6 O'Clock News” (5:02) B4 “The End Of Europe” (4:57) https://youtu.be/UPcz-XTvigE?si=1QoEItY54tfAw9cN #RyuichiSakamoto #坂本龍一 #B-2Unit #AlfaRecords #Dub #Experimental #AlternativeMusic #1980年 #Engineer #DennisBovell #Guests #AndyPartridge #KenjiOmura #TadashiKumihara #ComputerProgramming #HidekiMatsutake
Experimental Music / Dub Alpha Records 1200円Dr K2
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四人囃子 “NEO-N”
意外かと思われますが、今回は日本のプログレ・バンド四人囃子をご紹介します。四人囃子と言えば「一触即発」が有名ですが、(日本の)プログレに余り詳しくない私にとっては、この7枚目のアルバム「NEO-N」がお気に入りです。メンバーチェンジを繰り返していましたが、この時のメンバーは佐久間正英(B, G), 岡井大二 (Dr), 佐藤ミツル (Vo, G)で、ヘルプに茂木由多加 (Kbd)が加わっています。後期の作品なので、あのPlasticsのメンバーでもあった佐久間氏のテクノ/エレクトロニカのテイストが前面に出ています。プログレとしては何か妙に明るく、超絶技巧は余りありませんが、変拍子の多用やシンセのフィーチャーがやはり、プログレっぽいかな?と思います。それでバンドの変遷なのですが、元々、1969年、森園勝敏と岡井大二が高校在学時に出会い、彼らと中村真一を加えた「ザ・サンニン」として活動を開始。その後、坂下秀実が加入し「四人囃子」となりました。1973年に邦画のサウンド・トラック「ある青春/二十歳の原点」を発売し、プレ・デビューし、1974年に東宝レコードから『一触即発』を発売して本格的にメジャー・デビューを果たしました。ファーストアルバムの発売後、茂木由多加氏 (Kbd)が参加。1975年、脱退した中村氏(B)に代わって、のちに名プロデューサーとして名を馳せることになる佐久間正英 (B)が加入し、5人体制となりますが、茂木氏が脱退した後、1976年にセカンド・アルバム「ゴールデン・ピクニックス」を発売します。しかし、この後にフロントマンだった森園氏が脱退してしまいます。1977年に佐藤ミツル氏がVo/Gとして加入し、新体制で活動継続しますが、段々とポップス/New Wave志向になり、脱退した坂下氏の代わりに茂木氏が再加入して、1979年に 本作品”NEO-N”を発表します。その後は余り詳しくは書きませんが、再結成やメンバーチェンジを繰り返し、一時期の活動停止などを挟んで活動を継続していきます。そして、2003年に茂木由多加が逝去、2011年に中村真一が逝去、そして2014年には佐久間正英も逝去してしまいます。今、現在は活動しているかどうかは不明です。 それで本作品”NEO-N”についてですが、前述のようにプログレと言うよりも技巧派ニューウェーブと言いたくなる音楽性で、曲調、特にシンセの多用と音色が、キッチュな感じを出しています。ヴォコーダーの使用もあり。歌詞やタイトル或いはジャケ写もニューウェーブっぽいですね。これも当時、プロデューサー業もやっていた佐久間氏の影響なのでしょう。それでも変拍子は上手く使われており、それ程、違和感はないです。しかも初期のプログレ感満載からここまで音が変わるのかとビックリしましたね。もう少しニューウェーブ寄りなら、Mandrake〜P-Modelになれたかも?そんなプログレとニューウェーブとミッシング・リンクである四人囃子の、このアルバムを聴いてみてください。因みに、本作品でのメンバーと担当は、Masahide Sakuma (B, Synth [Roland, Yamaha, Roland MC-8], Vocoder, A-G, Recorders. Vo), Daiji Okai (Drs, Perc, E-Perc, Vo), Mitsuru Sato (G, 12弦G, A-G, Vo)., Yutaka Mogi (Piano, Synth [Yamaha CP-70, CS-80], Kbd [Solina])です。 A1 “Nocto-Vision For You” (4:08) A2 “Nameless” (3:02) A3 “Nervous Narration” (5:05) A4 “Notion-Noise” (4:42) B1 “9th Night” (3:25) B2 “Neo Polis” (3:35) B3 “Nile Green” (2:54) B4 “N・P・K (4:4:2)” (4:38) B5 “♮(Natural)” (4:31) B6 “Neo Nature∴450” (0:52) https://youtu.be/P8R_WPyUc8w?si=D9qVCBeTzTCPKpqa [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_nOtPYQITWBX2ZqA9UurcxSaalJuQK_DiE&si=MedF_zFjlQHZyv8n #YoninBayashi #四人囃子 #Neo-N #SeeSaw #Viento #ProgressiveRock #NewWave #佐久間正英 #MasahideSakuma #茂木由多加 #YutakaMogi #佐藤ミツル #MitsuruSato #岡井大二 #DaijiOkai
Progressive Rock / New Wave ポニーキャニオン(See・Saw, Viento” 870円Dr K2
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モリモト アリオミ “ソニック”
アナログ縛りの本美術館ですが、今回はモリモト・アリオミ氏のカセット作品を紹介したいと思います。モリモト氏は東京で活動する多彩なミュージシャンで、多くのバンドにギターやベースで参加したりしています。そんなモリモト氏が、「テクノポップ」を作ったと聞いたのは一昨年位でしょうか。その作品は”ピクニック”と題されており、すぐさま入手して聴きました。その作品は、モデュラーシンセとヴォーカルだけで作ったとのことで、それだけでも驚きなんですが,そこに封じ込められた音楽は、テクノポップの仮面を付けた「昭和な」フォーク・ミュージックではないのだろうかと確信しました。その後、モリモト氏はその路線で”クリニック”をカセットで出しております。その時に、モデュラーで弾き語りをやって貰えないだろうか?と企画を立てたのですが、丁度、コロナ禍が厳しい状態であった為、実現はしませんでした。それから、暫く、かの「ニック」シリーズはご無沙汰だったのですが、漸く第三弾”ソニック”が2021年11月にリリースされました。本作品も、インスト曲を含む15曲が丁寧な装丁で包まれています。今回は一部、ハードシンセも使ったとの事ですが、基本、モデュラーシンセとヴォーカルだけです。多くのモデュラー使いのアーティストがクラブ寄りでガンガン行くか電子音楽寄りでゴニョゴニョ行くのに対して、モリモト氏はあくまでメロディとハーモニー、そして小音量で録音されたモデュラーのリズムから成っており、モデュラーシンセの違った可能性を示してくれています。以前、尋ねたら、「ヴォーカルは一発録りです」とのことで、その不安定なVoと簡素な電子音からは、四畳半フォークの流れを感じてしまいます。その柔軟さ、危うさ、心地よさはモリモト氏の「ニック」シリーズの最大の特徴だと思います。十年後位にこれら3部作がレコード・リイシューされることを願って、今は大切に聴いてみたいと思います。 A1 “ソニック” (3:53) A2 “シネマの夜” (3:56) A3 “窓拭きのアルバイト” (4:44) A4 “假想通貨” (3:10) A5 “シネマの昼” (3:38) A6 “マネキン” (3:24) A7 “エレメント” (4:47) A8 “シネマの朝” (2:14) B1 “地方銀行“ (3:07) B2 “都市銀行” (4:13) B3 “潰れたスーパーマーケット” (4:13) B4 “あの頃のバンドマン” (4:11) B5 “毎日が行き止まり” (3:22) B6 “ルイルイ2” (4:32) B7 “救世主” (6:12) [モリモト氏の”ピクニック”収録曲のエレキギター弾き語り] https://youtu.be/cqHj8tJKwJo?si=D0Gg7geQMfRr7cKO #モリモトアリオミ #ソニック #カセット #ニック3部作 #モデュラーシンセ #四畳半 #フォークミュージック #テクノポップ
テクノポップ レコードの目 不明Dr K2
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ヒカシュー(Hikashu) “夏 (Summer)”
このアルバム、と言うかこのグループも私のルーツの一つですね。ファースト・アルバム”ヒカシュー”も高校生時代に毎朝聴いていましたし、当然、このアルバムも高校生と時にはヘビロテしてました。大学生になって市川市に住むことになった時は何度かライブを観に行ったものですよ、はい。バイオグラフィーは日本語のWikiで直ぐに出てくるので、そちらを参照した方が良いかも。と言っても、まあ息の長いバンドですので、ザックリと、初期の活動とかを紹介しておきますね。1973年に巻上公一と井上誠は東京キッドブラザーズに席を置き、巻上さんは海外公演に参加するも、公演自体が途中で空中分解してしまい、巻上さんは路頭に迷います。その時に、前衛演劇団ルミュエール&サンに参加。無事帰国後、巻上さんはミスタースリムカンパニーに加入。1977年に巻上さんが、自分のプロデュースする演劇「コレクティング・ネット」の劇の音楽を井上さんと山下康のデュオに依頼したことから全ては始まりました。そのデュオは今では「プレ・ヒカシュー」と言われており、インド音楽に影響を受けた音楽をやっています(CD発売されている)。その依頼がキッカケで、巻上さんが、自分と海琳正道(現在は三田超人と呼ぶ)と戸辺哲でやっていたル・インチと言うバンドで、そのまま、井上さんと山下さんのグループに参加し、5人体制になって、ヒカシューが生まれたと言う訳です。因みに、井上さんは、週間プレイボーイで、冨田勲監修のシンセ・ミュージック・コンクールに応募して入賞しています。この入賞者の曲はレコード化されていますが、それにはP-Modelの平沢進の作品も入っているとか。入賞者にはレコード化以外にシンセも貰えたらしいです。それで話しをヒカシューに戻すと、「ヒカシュー」と言うバンド名の由来は色々あるみたいですが、Wikiを読んでみて下さい。そして、その活動が始まったのが1978年頃です。メンバーにシンセ奏者が2人もいて、しかもリズムマシンを使っていると言うスタイルだったこともあり、また、当時出てきたP-ModelやPlasticsと共に「テクノ御三家」と呼ばれて、ニューウェーブ・バンドとかテクノポップ・バンドのイメージが強かったですね。しかしながら、結成当初から演劇、フリーインプロヴィゼーション、民族音楽を取り入れたアプローチを続けていましたし、その後もジャズ、クラシック、雅楽など幅広い要素を取り込みながら活動を続け、現在はインプロヴィゼーションを演奏の根幹に取り込みながら、即興と作曲が共存するノンジャンルの音楽を志向しています。なので、基本は、奔放なインプロビゼーションと巻上さんの独特のヴォーカリゼーションからなる楽曲の二本柱で構成されており、井上さんと山下さんがイノヤマ・ランドに集中する為に脱退すると、メンバーの変遷は多数ありましたが、段々とインプロを中心に種々な民族音楽やジャズなどを雑食した独特の音楽を演奏するバンドになっていきます。まあ、ここら辺は後期のアルバムを聴くと分かると思います(と言いながら私は未聴、すまん!)。なので、ここでは敢えて「テクノ御三家」時代の彼等の音楽について紹介しますね。 それで、彼等ののセカンド・アルバム「夏」です。いきなり、カッコいいビートが鳴り響くA1 ”オルタネイティヴ・サン”で幕を開けます。更に、この時期、The Venturesとも競演し、また映画「チェンジリング」のテーマ曲にもなったA3 ”Pike”、B面の曲は割とシニカルな歌詞のものが多く、ついつい深読みしてしまいます。B5 “Bino-Pike”は山下さん渾身の曲で、リズムボックスを使いながらも7/4拍子と言うインストものなんですが、ノリが良くてビックリしました。最後は、B6 “瞳の歌”で希望を予感させて締めてます。と言いながら、ドラムもゲストでJuicy Fruitsの高木利夫が参加しています。「夏」と言うと解放感とか陽気とかを思い出しがちですが、このアルバムの2/3は「夏故に憎む」と言うシニカルな曲から構成されており、エアコンの切れた部屋の中で考え込んでいるような気分です。まあ、兎に角、ヒカシューの「悪意」を聴いてみて下さい。ハマるかもしれませんね。 https://youtu.be/2cdJG0fe5s0 #Hikashu #Summer #ヒカシュー #夏 #NewWave #TechnoPop #Pike #巻上公一 #海琳正道 #井上誠 #山下康 #戸辺哲 #Vocalization #Synthesizer #SecondAlbum
Techno pop, New Wave Eastworld 2500円Dr K2
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ヒカシュー(Hikashu) “うわさの人類 (The Human Being)”
前回、紹介したヒカシューのサード・アルバムが、この”うわさの人類”です。ここで、ヒカシューは「テクノ御三家」から逸脱し、即興演奏などを取り入れ、ドラマーとして泉水敏郎を正式なメンバーに加えて、大きく音楽性が変わります。また、この作品は、当時、流行っていたサブカルの内、フリークスをテーマにした、一種のコンセプト・アルバムになっています。それは元々、巻上公一が、Tod Browning監督作品”Freaks”に感銘を受けて作られたことも大きいと思います。その流れでか、ジャケも太田螢一の書き下ろしを使っており、タイトル通りの一大コンセプト・アルバムになっています。なお、この作品の録音風景が、NHK教育TV番組「若い広場」でドキュメンタリーとして放送されています(勿論、私も観ています)。メンツは巻上公一 (Vo, B), 海琳正道(G, side Vo: 現:三田超人), 井上誠 (Synth), 山下康 (Kbd), 戸辺哲 (Alto Sax, G), 泉水敏郎 (Dr, Perc)と言う、当時は鉄壁な編成となっています。内容もすこぶる良く、歌詞は仄かにフリークスのことを歌っているのだろうなと思わせぶりなギリギリのところで抑えている感じで、音の方も、泉水さんが正式ドラマーになったことで、より深く、より激しいサウンドになっており、同時にかなりインプロビゼーション的演奏も加えられており、唯一無比のサウンドになっています。もうA1 “ト・アイスクロン”で「産まれてきてしまった運命」を悲しげに呪い、A2 “うわさの人類”では人であることを逆に誇らしく考えると言う心境をバップ調の曲に繋いでいます。また、A5 “新しい部族”で巻上さんの朗々と歌う、その声が世界に木霊し、A6 “予期せぬ結合”で激しいリズムと効果的なピアノ演奏が聴く者を圧倒します。B1 “アウトキャスト”では「自分はいつも外される」と言う感覚を巻上さんが叫び、B4 “小人のハンス”では見せ物としてしか世に出せない切なさを歌っています。この曲は本当に大好きな曲で巻上さんの独白調の歌とサビのシンセのメロディがもう最高です❗️私は当時、この一曲の為にこのアルバムを買っても良い位、ヘビロテしていましたね。最後はB6 ”匂い”で大人しく締めます。ドキュメンタリーの方では、海琳さんが、猿の真似をしながらピアノ・ソロを出鱈目に弾いているのが印象的でした。観るのも怖い、観ないのも怖い、聴くのも怖い、聴かないのも怖いと言ったアルバムだと思います。そんなヘビーでデリケートな内容ですが、未聴の方は是非とも‼️特に”小人のハンス”だけでも聴いてちょ‼️ https://youtu.be/_MMdQL8O3Dshttps://youtu.be/_MMdQL8O3Ds #ヒカシュー #うわさの人類 #Hikashu #TheHumanBeing #Eastworld #Freaks #Improvisation #脱テクノ #巻上公一 #海琳正道 #井上誠 #山下康 #戸辺哲 #泉水敏郎 #小人のハンス #Drums
New Wave , Alternative Pop Eastworld 2500円?Dr K2
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ヒカシュー “s/t”
これはこれは、危うく忘れそうになってしまうところでした。ヒカシューのファースト・アルバムです。当時は、P-ModelとPlasticsと共に「テクノ御三家」と呼ばれてましたね。そのバンドの成り立ちについては以前に書いてありますので、そちらをご参考にして下さい。ただ一つだけエピソードを。まあヒカシューはキーボード2人にル・インチの3人が合体して出来たバンドですが、彼等が活動していて、少し認知度が上がった頃、何と大阪Vanity Recordsからアルバムを出さないか?と(故)阿木譲さんより声がかかったらしいのですが、良く考えたら、機材を持って行く手段が無いことに気付いて、結局、断ったとのこと。もし、それが実現していたら、また変わったのかもしれませんね。それで、当時、イケイケだった(?)近田春夫さんにプロデュースしてもらって、このデビュー・アルバムが出来上がったと言う訳です。それで、当時、田舎の高校生だった私は、このアルバムを早速購入し、当時はヘビロテしてましたね。特にA6 “プヨプヨ”とB6 “幼虫の危機” (この曲はヒカシュー結成前に巻上さんがディレクションした演劇の劇中歌からきています)は、毎日聴いてから登校してました。まあ、今から思うと、彼等の「変態性」に陶酔していた、遅れてきた厨二病だったのでしょう。まあ裏ジャケは、如何にも「テクノポップ」と言う感じで、そそりましたが、、、。この時期のメンバーは、巻上公一 (Vo, B, Trumpet), 海琳正道 (G, Vo), 戸辺哲 (Sax, Clarinet, G, Vo), 井上誠 (Mellotron, Synth), 山下康 (Synth, Rhythm-Box)でしたが、アルバムの録音には、ゲストとして、高木利夫 (Drs). 泉水敏郎 (Drs), 若林忠宏 (Sitar, Tabla), 菅谷憲 (Chorus), 森勉 (Chorus), そしてPhewことモリタニ・ヒトミ (Voice)も参加しています。ある意味、象徴的だったのが、Kraftwerkの”The Model”の日本語カバー(A2)を演っていることですね。また、戸辺さんのフリーキーなSaxや海琳の巧みなギター、そして変態的な曲を作る山下さん(ひょっとしたら「プヨプヨ」は独逸Clusterの”Zuckerzeit”A1からヒントを得たのかな?)も凄かったです。決して、それまでのロックとかポップとかの様に「カッコつけた」ところが無く、どちらかと言うと「ダサい」んですよ。まあそれは近田さんのプロデュースもあったのかなあと想像しますが、意外と本人達のキャラなのかもしれませんね。そんな彼等の出発点を聴いておいても良いのではないでしょうか? https://youtu.be/ua1BN8w6Iik #ヒカシュー #FirstAlbum #Eastworld #TechnoPop #NewWave #テクノ御三家 #Synthesizers #Sax #Mellotron #RhythmBox #Guitar #Bass #Vocal #巻上公一, #海琳正道 #戸辺哲 #井上誠 #山下康 #プヨプヨ #幼虫の危機 #モデル
Techno Pop / New Wave Eastworld ¥2500Dr K2
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ばねとりこ (Banetoriko) “片の轍 (Kata No Wadachi)
以前は米国LAで活動していたばねとりこ(Banetoriko)こと植田珠來さんが大阪に帰郷して、日本の地で新たに活動を始めたことは、ご存知の方もいるだろう。実は、私は、ばねとりこの大ファンで、コロナ禍直前にLAでThe HaterことG.X. Jupitter-Larsenと一緒に3人で会っています。その前後頃から、ばねとりこさんのことはジワジワと日本のノイズ・リスナーの耳には入っていたと思われます。実際、私がばねとりこさんの音を聴いたのは、2014年に岐阜のお化け工房から出たSalmonellaくんとのスプリットCD “Kagefumi”だったと記憶しています。それから、リリースの度に買ったり、交換したりして、ばねとりこさんの「妖怪ノイズ」を楽しんできました。しかしながら、実際にばねとりこさんのライブ・サウンドを生で体験したのは、2022年5月21日に落合Soupで対バンした時でした。ばねとりこさんは、通常、Banetekと言うリールが付いた、金属の摩擦音或いは軋み音を発する自作楽器を使っているのですが、実際のライブでは意外とマルチエフェクターのようなゴツい機材やその他小物等も交えて演奏するのに、ちょっと驚いたものでした。更にばねとりこさんの演奏や曲には、モチーフになる妖怪があり、特に生で観た演奏では、正に妖怪が「憑依」しているかのようなパフォーマンス性もあって、大変驚かされました。そんなばねとりこさんのLPが、親日の仏レーベルAn’archives出たとのことで、早速、入手しました。と、その前に、ばねとりこさんのバイオグラフィーを少し書いておきます。植田さんが、ばねとりこを名乗って、LAで活動し始めたのが2011年で、ずっとLAを中心に活動しています。その後、家庭の事情などで、2021年に日本(多分、生まれ故郷は奈良だと思いました)に帰国して、大阪を中心に活動をしています。そして、日本でも、マイペースながらも、類を見ない演奏で、ファンを増やしていきます。今回は初のVinylでのリリースとなりましたが、そのまえにも、2017年に、坂口卓也氏のレーベルNeurecより”Beside the Sluice”を、2022年より”Yorioto Hogiokuri ”等をリリースしています。他にも、カセット作品やCDR作品も出していますが、どの作品も1曲に1ついての「妖怪 (この概念は海外では分かり難いかも?)」をモチーフとして、自作楽器を中心に様々な「背景」の音を混ぜ込み、作品化してきています。ばねとりこさんの音は、海外アーティストと比較すると、The New Blockaders, Organum, Ferial Confine等に近いかも知れませんし、音の使い方は1980年代のHands ToやJohn Hudakなんかも想起するかも知れませんが、そのコアな部分は大きく異なります。それは、ばねとりこさんが日本人であること、「妖怪」と言う極めて日本的な存在を知っていることと関係しているのかもしれませんが、金属質な音自体の即物性よりも、そんな音を通して現前化する「何か」に焦点を当てていることの違いかも知れないですね。また、ここら辺のコンセプトについては、ばねとりこさんから直接聞いてみたいです。 それで、本作品”片の轍”では、片輪車と輪入道と言う2人の妖怪がそれぞれ取り上げられており、A面には、片輪車の懸け歌(A1)と返し歌(A2)の2曲が、B面には輪入道の1曲が収められています。これらの妖怪のことを知らなくても、充分に「ばねとりこ」ワールドに没入できますので、ご安心を!また、本作品の制作には2022年〜2023年と時間を充分に掛けていますので、正に精魂込めた力作と言って良いでしょう。それでは、本作品の各曲をご紹介していきますね。 ★A1 “片輪車の懸け歌/Katawaguruma Kakeuta”は、不気味な重低音に金属質な軋み音と柔らかな打撃音が絡む曲で、反復する歌の一節(!)も入っており、やがてBenetekの軋み音が多層化しつつ空間を支配していきます。と思っていたら、いきなり終わります。 ★A2 “片輪車の返し歌/Katawaguruma Kaeshiuta”は、Banetekの独特の錆びついたような金属質の軋みを中心に奥張った通奏低音も聴取されます。その後、再び静謐な金属質な軋み音が微音から始まり、微音の歌も入ってきて、多層化していき、またフェイドアウトしていきます。 ★B “輪入道/Wanyudo”は、地響きのような音と低音摩擦音のループらしき音から始まり、段々と後者が空間を支配していき、そこに言葉にならない声が、、、まるで頭の中を掻き乱すようですが、この曲では、更にBanetekの摩擦音の逆回転のような音も入ってきて締めてくれます。 妖怪とは、幽霊や悪霊とも違って、元から異形の存在であり、それぞれに異なる異能力を持っている訳ですが、ばねとりこさんの音楽は、主にBanetekによる異形の摩擦音を組合せることによって、様々な音形態を紡ぎ出していく作業である訳で、向かうベクトルが異なるようにも思えますが、いわゆる「ばねとりこ節」とも言える自作楽器Banetekの金属質の軋み音から様々な表現を可能にしている所に、ばねとりこさんの異能力があるのでは?と思わざるを得ないんです。それによって(特にライブでは)、ある一つの妖怪をモチーフとして多彩な表現を可能にしているのではないかと思います。後、今回、初めて気付いたのですが、ばねとりこさんの歌(と言っても鼻歌のような微かな声?)を聴けたと言うこと。これはライブの時の小物の微音に繋がるような気がしました。また、個人的には、第二期K2時代に散々メタル・ジャンクの演奏(これには、摩擦音も含む)をやってきたことからも、ばねとりこさんの音が私の好みの音でもあると言うことで、全面的に応援したいと思う訳です!そして、ばねとりさんの本領はやはりライブを体験するのが最も良いとも思いますので、一度は観ておいた方がよいですよ。勿論、帯付きのこのアルバムもマスト・アイテムです! [本作品はYouTubeに上がっていないので、落合Soupでのライブ動画を貼っておきます] https://youtu.be/ISkq4oPUk1c?si=vMIPFHjRO-kHs8sb [BandcampのURLは貼っておきます] https://anarchiveslabel.bandcamp.com/album/kata-no-wadachi #Banetoriko #ばねとりこ #KataNoWadachi #片の轍 #An’archives #FirstVinylAlbum #LA-Osaka #Experimental #Yokai-Noise #妖怪ノイズ #Banetek #Self-BuildInstruments #MetalScratch #摩擦音 #軋み音 #歌 #憑依 #TamakiUeda
Experimental / Yokai-Noise An’archives 不明Dr K2