Esplendor Geométrico “Fungus Cerebri: Selected Tracks From Cassettes 1981-1989”

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久しぶりに出ました!スペインの至宝Esplendor Geométrico (以下EGと表記)の1980年代初期音源からのトラックをコンパイルした2枚組アルバム”Fungus Cerebri (「真菌[カビ]の生えた脳」の意味ですね)”です。しかも、元音源は1981年〜1989年に作製されたカセットとしてリリースされていた作品からのセレクトになっています。なので、レアトラックも含まれています。また、私の持っているのは黒盤なのですが、灰盤と赤盤とから成るスペシャル・エディションが100部の超限定でもあります。EGのバイオグラフィーは、以前に一部は書いてありますが、まだまだ未完なので、先ずはそちらから紹介しておきます。1980年に、スペインMadridのシンセ・ポップ・バンドEl Aviador Dro y sus Obreros Especializados (「Aviator Droと彼の特殊な職人達」の意で、同級生だったArturo LanzとServando CarballarがThe ResidentsやT.G.に影響を受けて1979年に結成)のメンバーであったArturo Lanz, Gabriel Riaza, Juan Carlos Sastreによって結成されたGeometric SplendorがEGの母体になっています。このネーミングは伊の未来派F. T. Marinettiの文章”Geometric and Mechanical Splendor and the Numerical Sensibility (原文では、Lo splendore geometrico e meccanico e la sensibilità numerica)”から取られたとのこと。それで、彼等は最初のシングル"Necrosis en la Poya"を1981年にスペインの自主制作レーベルTic Tacからリリースし、続いてデビューアルバム”Héroe del Trabajo / El Acero del Partido”を1982年にリリースしています。これらを配給していた英国インダストリアル・レーベルSterile Recordsでは「スペインの機械偏執狂」と広告されており、また、EG自身も1980年初期の国際的カセット・テープ・シーンで活発に活動しており、特に独Datenverarbeitungからリリースされたカセット・アルバム”Eg1”で、国際的にも高評価されます。彼等の音楽は、リズミックな電子音から成る実験的なもので、その10数年以上後に、雨後の筍のように現れるテクノイズを先取りしていました。1982年に、Juan Carlos SastreはEGを脱退していますが、アートワークなどで、EGと関わっています。1985年には、彼等自身のレーベルDiscos Esplendor GeométricoをAndrés NoarbeとGabriel Riazaが運営開始し、セカンド・アルバム”Comisario de la Luz / Blanco de Fuerza”をリリースしています。その後、1989年に、Riazaはレーベルを去り、1995年にはEGも脱退して、音楽界からも足を洗って、イスラム教に改宗して、名前もGabriel-Jairodínに改名してしまいます。その代わりに、1990年に、Romaでのライブにヘルプで出演したSaverio Evangelistaが新メンバーとなって、Lanzとのデュオ体制でEGを現在まで継続しています。なお、Lanzは現在、パートナーの関係で、上海に住んでいます。1991年に、彼等のレーベルは、Discos Esplendor GeométricoからGeometrikに改名し、現在に至ります。その間も、EGはコンスタントに作品を出してはいますが、活動が鈍っていた時期もあります。しかし、1997年にアルバム”Polyglophone” で復活し、翌年には、CoilやChris & CoseyらによるEGの曲のリミックス・アルバム”EN-CO-D-Esplendor”もリリースされます。その後、2002年には新録アルバム”Compuesto de Hierro”がリリースされ、2005年には、過去作をセルフ・コンピ2枚組CD”Anthology 1981-2003”もリリースされ、インディー・シーンでヒットしています。現在も新譜”Cinética”(2020年)を出したり、過去のカセット音源をリマスターしたCDやLPで再発していたりと活発に活動を続けています。ザックリとEGの流れは上記のようになります。
それで、今回、ご紹介する”Fungus Cerebri”は、EGの初期の音源から選出されたトラックをコンパイルした2枚組アルバムで、2016年にリリースされています。それで、この時期のメンバーは、Arturo Lanz, Gabriel Riaza (1980-1989年), Juan Carlos Sastre (1980年-1981年)となっています。各曲についてですが、各面4曲ずつ収録されてします。A1 “2-TI-2”, A4 “Comisario De La Luz VI”, B1 “Llamada Del Afropoder”, B2 “Bleno Boca”, B3 “Tarikat”, C3 “El Resto Atrás”, C4 “Uasat”, D2 “Celda De Agua”, D3 “Autolesión”は 1991年にスペインのLinea Alternativaからリリースされた2本組カセット”Diez Años De Esplendor”から、A2 “Cuarenta Años Nos Iluminan”とA3 “Fungus Cerebri”は、1982年に、西独のDatenverarbeitungからリリースされた国際コンピ・カセット”Sinn & Form”収録曲で、B4 “Allo Terre?”は1987年のライブ録音で、同年に、自身のカセットレーベルEGKからリリースされた”En Directo: Madrid Y Tolosa”から、C1 “Trans-Umma”とC2 “Atlas-Yも1989年のライブ録音で1990年にLinea Alternativaからリリースされた”Madrid Mayo'89”から、D1 “Neuridina”も1986年のライブ録音で、1996年にEGKからリリースされた”En Roma”からセレクトされています。内容なんですが、EGの音楽は、基本的にリズムマシンの進化に伴って変わっていったと言う感じなので、この1980年代はアナログのリズムマシンが主たる楽器として使われており、それに同期したり或いは非同期のシーケンスやシンセ(Korg MS-20など)による電子音とテープ音やヴォイス(D3 “Autolesión) などを最小限に散りばめた音楽形態を取っています。なので、余り、どの曲にも大きな変化はありません。基本、エフェクトなどを掛けられたリズムマシンがドコドコと鳴っています。あとスネアの音とかをシンセのホワイト・ノイズで付け加えており、それが誇張されて、レッドゾーンを越えて録音されているので、かなり暴力的な音楽に聴こえますね。そんなところも、初期EGの特徴だと思います。多分、エフェクトも単純なディレイとかアンプのリバーブとかで、あとはシンセの外部入力にリズムマシンの出力を直接入れて変調していたり、リング・モデュレーターを掛けたりもしてます。まあ、リズムマシンで有りとあらゆる実験をしていると言っても良いでしよう。個人的には、コンピ・カセット”Sinn & Form”をリアルタイムで聴いていたので、A2 “Cuarenta Años Nos Iluminan”とA3 “Fungus Cerebri”と、カセット作品”En Roma”に入っていたD1 “Neuridina”なんかは懐かしかったですね。それにしても、この頃のEGの音楽はパワフルで、駆動力があって、凄まじいです。それを再認識しました。この後、アラビックな方向へと行き、音自体は洗練されていきます。まあ、それらについてはまたの機会にして、この作品は、初期EGの実験性・機械性・駆動力・野蛮さなどが詰まった良質のセルフ・コンピですし、収録曲も殆どが再発されていないレアトラックなので、彼等の音楽を語る上でも重要な資料でもあります。なので、インダストリアルに興味のある方は是非とも体験してみて下さい‼️

A2 “Cuarenta Años Nos Iluminan”
https://youtu.be/3gRe2RJvWEk

[full album]
https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_lPqFxulOi8-pFstYSTL9cXC_Qn_oC24LY

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