マルサン アリブンタ

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靴屋で働いている知人に教えてもらった言葉が忘れられない。

「靴は買うものではなく、出会うものである。」
意味はそのまま、靴はただお金で買う「もの」ではなくて、運命的に出会う相棒だということだ。
この類の言葉はあらゆるものに言えるが、我々怪獣オタクにとっては玩具やフィギュアがそれに当てはまる。
昭和40年代に発売されたソフビは現在うん万円もする値段で流通している。
劣化が激しいビニール人形を綺麗な形で半世紀近く保存しているが故の希少価値と言える。
どんなに怪獣が好きだろうと、相当な富豪でない限りうん万円もする高価な品をそうポンポンと手に入れることはできないだろう。
しかし、生まれつき持った怪獣オタクのサガに抗うことはできない。
中にはどうしても手に入れたいものがある。
そして人々は多少の犠牲を払ってでもフィギュアをお迎えするのだ。

私にとってのそれはアリブンタだった。

今回ご紹介するアリブンタに出会えたことも私は運命だと思う。

出会った時は震えが止まらなかったのを覚えている。
このアリブンタと出会う数日前、毎月参加している怪獣酒場での定期会議にて今年の目標はマルサンのアリブンタを手に入れることだと公言していたこともありタイミングは完璧だった。
まさに運命の出会い。アリブンタの神に選ばれた気がした。
ネットの画像で夢にまでみた美しきアリブンタ。
その姿を初めて拝んだ時、僅か14cmのボディがとても大きく見えたのを思い出す。

我がアリブンタ祭壇の御神体
GOD OF ARIBUNTA

ライトに照らされて黄色のボディは蛍光色さながらに鮮やかな光を放ち、ターンテーブルによってクルクル回転する様は思わず手を合わせたくなるような神々しさだ。
古代の人が見たらまさに神の化身だと思うに違いない。
こうして神話は作られていったのだろう。

ここからは詳しく見ていこう。
アリブンコンピューター、チェック!

前回紹介した大怪獣シリーズのリアルなアリブンタと比較すると全く別の生物と言っていいほどデフォルメされている。
最たる特徴はその目だ。
猫のようにぱっちりとした銀色の目の中には大きな黒目があるではないか。
その様はまるで哺乳類か爬虫類のよう。
もう昆虫という縛りには囚われないぞという強い気概が伝わってくる。
ぽっこりお腹も可愛い。
アリブンタのフィギュアはボテ腹のものが多いが、このアリブンタはボテまでいかない幼児のようなぽっこりお腹をしている。
可愛いぱちくりとした目に頭でっかちの幼児体型が加わり、なんだか某マヨネーズのキャラクターを連想させる。
回ると尚更だ。
マルサンアリブンタで初めてアリブンタを知った人に「この超獣は地下鉄を襲い、視聴者にトラウマを植え付けた超獣なんだよ」と言っても信じてはもらえないだろう。
背中にも特徴がある。
凹凸がある水色のグラデーションが綺麗な背中だが、脇から生えている羽と一体化しているのが珍しい。
正面から見ると、きちんとしたアリブンタの造形に倣っているが、後ろから見るとゼットンの背中のようでかっこいい。甲羅のようにも見える。
頭と背中から生える角は竹の子というよりはカエンタケのような形状だ。
子供が遊ぶのを配慮してか全体的に角ばったり尖ったりしている部分がない。
そのため、可愛さにより拍車がかかっているように感じられる。
サメクジラもペガッサ星人もマスコット化される時代だ。
次に流行るのはリムアリブンタと見てまず間違い無いだろう。

全体的にお洒落な雰囲気が漂い、さらに黄色のボディにメタリックな塗装が施され、高級感も感じられる。
怪獣オタクの部屋にあるというよりは高級ビンテージなどと共にお洒落な喫茶店に置いてありそうな、そういう独特な存在感を放っている。

運命の出会い。
スピリチュアルな話をしてしまったが、生まれてから今までのあらゆる体験やその時の状況が全て「出会い」に収束していると考えれば、それは偶然ではなく必然的な出会いだったのではないかとも思えてくる。
今回のアリブンタだけでなく、アリブンタ祭壇に祀られている全てのアリブンタがそういう経験を経て運命的に出会うことができたフィギュアたちだ。
彼らとの出会いが運命なのだとしたら、それを一生大切にするというのも私の義務である。

アリブンタたちとの出会いを大切に、これからもまだ見ぬアリブンタたちと出会う運命を信じ続ける。

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