角川書店 角川文庫 死仮面

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昭和五十九年七月十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和24年(1949年)に雑誌「物語」に連載された横溝正史の長編小説「死仮面」。
昭和23年秋、「八つ墓村」事件を解決した名探偵・金田一耕助は、挨拶に立ち寄った岡山県警で磯川警部から不気味なデス・マスクにまつわる話を聞かされる。それは東京で人を殺し、岡山に逃亡してきた山口アケミという女が腐爛死体で発見され、その現場にはデス・マスクが残されていたという事件だった。帰京した金田一は女の異父姉・上野里枝の訪問を受け、女の本名が山内君子で複雑な家庭環境で育ったことを知る。事件に強い興味をそそられた金田一は調査に乗り出すが、君子の一番上の異父姉・川島夏代が校長を務める学園で次々と奇怪な事件が起こる...
「八つ墓村」と同時期に雑誌連載されながらも、その後長らく陽の目を見ることが無かった“幻の作品”ですね。横溝正史の逝去直後に角川ノベルスから新書版が刊行された際は“幻の作品”ということが大きく謳われ、書店でも目立つ位置に置かれていた記憶があります。雑誌連載後、一度も書籍化されなかったのは横溝正史自身がこの物語の陰惨さを嫌っていた為ともいわれていますが、なるほど、確かに家族間の陰鬱な確執や虐待、ネクロフィリアなどの描写が強すぎるきらいはあるものの、女子学園を舞台にした構成は横溝作品としては斬新で、個人的にはかなり楽しく読めました。金田一に協力する女学生・白井澄子のキャラクターが実に良いと思います。本書には表題作の他に「上海氏の収集品」が併録されています。こちらは横溝正史逝去前年に雑誌「野性時代」に分載された作品で、逝去時はこれが絶筆とされましたが、実際には昭和40年頃に書かれた未発表作品でした。前述のように昭和57年(1982年)に角川ノベルスから新書版が刊行されたのち、角川文庫には昭和59年(1984年)に収録されました。
画像は昭和59年(1984年)に角川書店より刊行された「角川文庫 死仮面」です。紅蓮の炎の中に浮かぶ妖しいデス・マスク。まさに「死仮面」事件の山内君子のデス・マスクを描いた表紙画ですね。やや薄目を開け、口も半開き気味になっているところが妙にリアルで、悍ましいです。ちなみにこの「死仮面」、角川ノベルス版・角川文庫版共に途中の欠落部分を評論家の中島河太郎氏が補筆したものであり、のちに発見された欠落部分を収めたオリジナル版は、平成に入ってから春陽文庫から刊行されました。

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