角川書店 角川文庫 病院坂の首縊りの家 ―金田一耕助最後の事件―(上)

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昭和五十三年十二月二十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和50年(1975年)から昭和52年(1977年)にかけて雑誌「野性時代」に連載された横溝正史の長編小説「病院坂の首縊りの家」。
東京・高輪にある“病院坂”。その名の由来となった旧法眼病院、そして隣接する旧法眼邸は、戦禍により廃屋と化していた。昭和22年に薄倖の女が首を縊るという忌まわしい出来事があったその旧法眼邸で、昭和28年、今度は鮮血を滴らせた男の生首が、天井から風鈴のようにぶら下がっているのが発見された。しかもその男は、数日前に廃屋のはずの旧法眼邸で、世にも奇妙な結婚式を挙げた新郎だった。結婚式の記念写真を撮らされた本條写真館の息子・直吉から調査依頼を受けていた名探偵・金田一耕助が事件に挑む。
“金田一耕助最後の事件”として知られる、横溝正史晩期の超大作ですね。元々は昭和29年(1954年)に雑誌連載されるも未完に終わった「病院横丁の首縊りの家」という原形作品を構想も新たに甦らせた作品で、昭和28年(1953年)の事件と昭和48年(1973年)の事件の2部構成となっているのが特徴です。この上巻では昭和28年に起きた生首風鈴殺人事件が描かれているのですが、ハッキリいって、事件が起きるまでがとにかく長いです。唯でさえ人間関係が複雑過ぎるといわれることが多い横溝正史の小説の中でも一番ではなかろうか、というぐらい血縁関係・人間関係が入り組んでいて、そこの説明にかなりのページを割いているからなのですが、とはいえ、そこはある意味、横溝正史の真骨頂ともいえる部分。複雑な血縁関係・人間関係の縺れが引き起こした事件の陰鬱さはこれぞまさに“横溝ワールド”という感じで、グイグイと引き込まれます。角川文庫には昭和53年(1978年)に収録されました。
画像は昭和53年(1978年)に角川書店より刊行された「角川文庫 病院坂の首縊りの家 ―金田一耕助最後の事件―(上)」です。顔が風鈴になっている男と白無垢姿の花嫁の不気味な婚礼写真。まさに本條直吉が旧法眼邸で撮らされた、世にも奇妙な婚礼写真をモチーフにした表紙画ですね。全体的に暗いトーンの中で、赤い血痕の鮮烈さが効いています。
表面に「金田一耕助最後の事件!」の惹句、裏面に東映映画『悪魔が来りて笛を吹く』の公開告知が入った宣伝帯付きです。

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