角川書店 角川文庫 殺人鬼

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昭和五十一年十一月十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和22年(1947年)から昭和23年(1948年)にかけて雑誌「りべらる」に分載された横溝正史の短編小説「殺人鬼」。
四月初めのうすら寒い晩に探偵作家の八代竜介が吉祥寺駅からの帰り道に出会った美しい人妻・加奈子は、戦争中に一晩だけ過ごしただけの戸籍上の夫・亀井淳吉につけ回されていた。現在は亀井の従兄弟の賀川達哉と事実上の夫婦になった加奈子は、黒帽子・黒眼鏡に義足といういで立ちで自分をつけ回す亀井に怯えるが、そんなある日、達哉が鈍器で撲殺され、加奈子は首を絞められ、失神した状態で発見されるという事件が起こる。周辺では亀井らしき義足の男の姿が目撃されるが、果たして犯人は...?
戦後間もない頃の吉祥寺を舞台に、怪しい義足の男が暗躍する殺人事件を描いた作品ですね。初めは今でいうストーカー事件を思わせる雰囲気で物語は進行しますが、金田一耕助が登場してからの展開が面白く、最後にまたどんでん返しがあります。横溝正史のストーリーテラーぶりが遺憾なく発揮されている作品の一つだと思います。本書には表題作の他に「黒蘭姫」「香水心中」「百日紅の下にて」の短編3編が併録されています。いずれも優れた短編ですが、中でも「百日紅の下にて」はあの「獄門島」の前日譚にあたる短編で、地味ながらも横溝ファンには人気の高い一編です。金田一が自分の名を明かし、「獄門島」へと繋がってゆくラスト3行がファンには堪りません。角川文庫には昭和51年(1976年)に収録されました。
画像は昭和51年(1976年)に角川書店より刊行された「角川文庫 殺人鬼」です。黒帽子を被り、黒眼鏡をかけた半男半女の怪人。尋常ではない血走り方をしている真っ赤な眼から、何ともいえない禍々しさが横溢していますね。厳密にはネタバレしているのですが、この表紙画も実にインパクトがありました。

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