角川書店 角川文庫 びっくり箱殺人事件

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昭和五十年一月十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和23年(1948年)に雑誌「月刊読売」に連載された横溝正史の長編小説「びっくり箱殺人事件」。
東京・丸の内にある小劇場、梟座で行われた軽演劇「パンドーラの匣」の舞台中に起こった殺人事件を描いた、横溝正史の異色作ですね。金田一耕助も由利先生も出てこないノンシリーズもので、作者にしては珍しい喜劇色が強い作品ですが、あの大傑作「獄門島」とほぼ同時期に書かれただけあって、本格ミステリーの骨格はちゃんと備わっています。ストーリーテラーとしての横溝正史の上手さ、引き出しの多さを改めて実感します。
本書には表題作の他に“金田一耕助シリーズ”の短編「蜃気楼島の情熱」が併録されています。小品ですが、「本陣殺人事件」に登場した金田一耕助のパトロンの一人、久保銀造の再登場、そして、お馴染みの磯川警部が登場することもあってファンの間では人気が高い作品です。角川文庫には昭和50年(1975年)に収録されました。
画像は昭和50年(1975年)に角川書店より刊行された「角川文庫 びっくり箱殺人事件」です。箱から飛び出している、両手に短刀を持った目玉の大きな道化人形。片方の短刀には血が付着しているのが何とも不気味ですね。実は劇中に登場する「殺人びっくり箱」の仕掛けは強力なスプリングに短刀が付いただけのものでしたが、これに道化人形を介在させたのは杉本氏のナイスアレンジだと思います。

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