黒曜石製 槍先尖頭器

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【推定年代】
旧石器時代後期(20,000〜15,000年前)
【産地など】
伝・北海道

【解説】
湧別技法と言われる石器群の一つで、旧石器時代後期後半の北海道北部に見られる剝片石器である。
旧石器時代〜縄文時代の移行期に見られるもので、いずれも北海道十勝地方産と推定される黒曜石製である。

最大長9cm〜15cm前後と大きい一方で、厚みは1cm以下で、非常に軽量である。
特に画像1〜3枚目の尖頭器は、重要文化財に指定されていてもおかしく無い程度の保存率であり、2023年に遠軽町の白滝遺跡群で出土した尖頭器資料一括が国宝に指定されているが、クオリティとしてはそれに追随するレベル。
槍先に付けて大型獣(ヘラジカ、ナウマンゾウ、ヒグマ等)の狩猟に利用されたもので、さらに当時の北海道にはマンモスも居たので、これも狩猟対象だった可能性もある。

黒曜石は北海道から九州の限られた地域で産出するが、産地によって違いがあり、特に北海道の十勝地方産黒曜石(通称十勝石)は黒地に赤いまだら状の流紋が見られる事があるのが特徴となる。(実際、本資料にも一部見られる。)
国内他産地の黒曜石ではこの特徴は見られないが、南米の一部産地では類例がある。

このような大型尖頭器は各遺跡でも数点しか出土せず、制作途中品(厚みのある原石)は大量に出土する。
また旧石器人の洗練された技巧により非常に繊細に整形されており、下手に現代人が再現しても真似できず、ある種のロストテクノロジーと言えるだろう。

手持ちの考古資料の中では、縄文中期翡翠大珠に次ぐ希少性と考えている。

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