Person2 ジャン・クラ 海軍提督の音楽

初版 2023/08/09 12:13

改訂 2023/08/12 14:42

ジャン・クラ/弦楽三重曲 1926年


第1楽章 不明(記述無しとされるCDもある。)
第2楽章 レント
第3楽章 アニメ=活き活きと
第4楽章 トレ アニメ=とても活き活きと

ボクの手元にあるCDソースにはない。以前カセットテープにdbxダビングを行ったものがあるだけ。

ジャン・エミール・ポール・クラは、第1次世界大戦期『紅の豚』が飛んだアドリア海戦の司令官として名をあげた。

軍人という立場と軍医の家に生まれた数学的知識と創造力は、『クラーズ』(クラ式)と呼ばれる海図用分度器を中心とした海図装置の設計などにも名を残している。

生粋の軍人で、例えばロシアで言えばミャスコフスキーを思い浮かべる。
余技が専門的というと医者であったボロディン。どちらも寒い国の住人。

この人はフランス人で若いときの写真はかなりのイケメンである。
生涯友人であり続けたアンリ・デュパルクは彼のことを『精神的息子』と呼んだ。

この人は職業軍人が本職で、音楽はその余技にあたるのだろうけれど、その余技がかなりのレベルであり、自国での評価や現在の音楽出版業界でも、新たに取り上げ始めた人でもある。
この弦楽三重奏曲は室内楽において、この人のスタイルを知る上で避けて通れない傑作。

弦楽三重奏曲という分野はシューベルトやベートーヴェンやレーガーなど扱った作曲家は多いけれど、あまり演奏する機会に恵まれない。常時トリオを組むには曲数に限りがあるのではないかとも思う。ピアノを兼ねる構成員が一人いればレパートリーはずっと広がる。

そんな曲種の中にあってこの作品は、様々な国の音楽に触れる機会があった海軍軍人としての彼の経験と自分の生まれ故郷のブルターニュの伝統音楽を精緻に編みあわせた完成品という独特の評価がある。

でも、それはボクにはわからない。
大体ブルターニュの伝統音楽がどんなものか、アフリカの旋律パターンがどんなものかよくわからないのだ。

わが耳が頼り。
第1楽章に聞こえてくる旋律の中に東洋的でありながら閉じない抒情が繰り返される部分は、ハイブリッドでありながら安定した美しさをもち、形が変わってゆく第2楽章にあっても、やはり同じ感覚で安らげるものをもたらす。ロマン派とも言えない。印象派とも違う音彩。

第1楽章は速度指定がわからない。
演奏で採られているテンポはアレグロか。
チェロの撥音の上をテーマが滑ってゆく。
現代的な響きを持ちながら全方位的な光の中に曖昧に揺れ動く香気ではなく、クッキリとした靱さが立つ。
ヴァイオリンとアルトヴァイオリン(ヴィオラ)の滑らかな交感が美しい。

第2楽章の冒頭3つの楽器が弱音で奏する、さほど高くない山の上から麓にかけて吹き下ろすような風を感じる旋律は多分作曲者には具体的なイメージがあったのだろうと想像させる。
とても微妙に仕組まれたアンサンブルの均衡は少しでもタイミングが狂うと美が一転醜になる。

第3楽章はローカリティを感じる舞曲。ヴァイオリンはほとんどピチカート。ヴィオラが主旋律を弾くがこれがディキシーっぽい。ファンキーな音楽のやりとりが面白くて、20世紀の音楽だね。やっぱり。チェロのピチカートにもかなり即興的な間が必要であわせるのが難しそうな音楽です。

第4楽章、 引き続きだんだん早くなるのですが、楽章を分ける必要はあるのかなぁ。無弓動的なチェロの動きにヴァイオリンとヴィオラが重なってゆく。これはもうダンスですね。織り込まれた静の中にあるセンチメンタルな数瞬が非常に人間的な間合いの動きを感じさせます。

19世紀にはできない音楽だね。

YouTubeではいくつかのライブとCD録音の音源がありましたが、ミリエル弦楽三重奏団の演奏が唯一の全曲演奏でした。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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