Rerson5-2 フランク・ブリッジ  嬰ヘ短調の幻想

初版 2023/10/02 16:16

改訂 2023/10/02 16:18

フランク・ブリッジ/ピアノ四重奏曲嬰ヘ短調

この作曲家には現代音楽的な実験性の高いものもあるけれど、室内楽の落ち着いた作品のレベルはどれも高い。
ピアノ五重奏曲やこれを編曲した室内協奏曲、チェロ・ソナタ、どれも個性的で腰の据わった聴き応えのある作品が多くて、これからのシーズン向きになってくる。

このピアノ四重奏曲もまた素晴らしい。
単一楽章。
いくつかの演奏ではどれも12-13分前後。
多少ニュアンスには欠けるけれど、テーマが明快なのはCDの方で展示した演奏。

ここで聴くのは同じ曲だけど、ライブ.レコーディングされているもの。彼の愛弟子であったベンジャミン・ブリテンがピアノを担当している。指揮者でピアノを弾いていたのはアンドレ・プレヴィン、ピアニストが指揮者になったのは多いね。作曲家は…モーツァルトの時代から元々はピアノが弾けるのが前提みたいなところがある。

今は生成AI の発達で、ソフトも充実し、鼻歌でも立派な編曲を行ってびっくりするような音楽になる。いいのか悪いのか…

さて、この曲だけれど、

音質についてはライブであることも考慮しなければならないだろうけど、音楽に対する共感が半端ない。

うつむいたまま悲痛の故を声に出して自問しているように総奏されるテーマ。導入の旋律の後、ピアノがそこで取り残された哀しみの中から言葉を拾ってゆく。
音と音の間の絶妙の間に最初は薄く、やがて強く弦楽が編み込まれてゆく。
最初の軽妙なスケルツォがくる前のピアノと弦楽はお互いの音の中に溶け込みながら抒情的な歌を紡ぐ。
舞踏の数瞬の後、ヴァイオリンが奏でるメロディがチェロに移ってゆく頃から最良のカルテットが香気を振りまきつつ、再びスケルツァンドの軽妙さが音楽に遠近を付ける。
そしてチェロに最初の主題が帰ってくる頃から音楽はフランク特有の旋律が重層的な厚みを帯びてくる。
ピアノはここでは伴奏ではなく、弦楽と対置する個性的な楽器である。

ピアノにほんの少し悪戯っぽい舞踏の足踏みが顕れながら弦楽はそれを追いかけることなく、愁いに沈んでゆく。
非常にわかりやすくて、繊細な作品です。
この辺のブリッジの作品はいいなあ。


余談だけど。ベンジャミン・ブリテンは師のこういった側面のみに惹かれたわけではないだろうけどね。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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