哀しき妄想

初版 2023/12/21 16:12

ヤナーチェク/弦楽四重奏曲第2番『内緒の手紙』

第1楽章 アンダンテ・コン・モート~アレグロ・モルト・メノ・モッソ
第2楽章 アダージオ~ヴィヴァーチェ
第3楽章 モデラート~アダージォ~アレグロ
第4楽章 アレグロ~アンダンテ~アダージォ

第1番の『クロイツェルソナタ』とセットでボヘミア弦楽四重奏団からの委嘱により作曲されている。

第1番はベートーヴェンのクロイツェルソナタに強いインスピレーションを与えられたとして副題にもその名を付しているが、この第2番もヤナーチェク自身が副題を付けている。

副題を付けると言うことはいい意味もあるだろうけれど、音楽のテーマがそれによって方向付けられ、聴く方のイマジネーションもこれに縛られてしまって自由な飛躍が出来ない。

でも、この作品はそんなことはどうでもいいようで、きわめて私的なラヴ・レターである。

40歳年下のカミラ・ストスロヴァーへの老いらくの恋。精神的な親交は一方的な妄想へと発展してゆく。
曰く『ボクの音符の全てが君の全てにくちづけしている…』
なんちゅう困った爺様だろう。
全楽章を通じて突出するヴィオラはカミラそのものを表していて、第2楽章では精神的な愛情はなまなましい妄想に取って代わられる。


弦楽の形式にとらわれぬ構成と鋭い擦過音が生む緊張は、音楽に内蔵された作曲者の不純を知らなければ非常に先鋭的で情念に充ちたユニークな旋律に耳を奪われるかもしれない。


曲自体は難解であり、晦渋であり、取っつきにくさも持っている。
それでも、第2楽章のアダージオにはヤナーチェクの巧まない美質が結晶化している。
とはいえこれは、深々と椅子に腰掛け、コーヒーを啜りながら本を開きその背後に聞こえて欲しい音楽ではない。
一端聴き始めると踏ん切りが付かず通して聴いてしまうけれど、ボクはいつも後悔する。
このヴァイオリンの鋭すぎる高音は寝不足の疼く頭にはきわめて害のあるものだ。
『ああここで止めちまおう』とリモコンのスイッチを構えると何となくやさしげな歌が混じる。
つい油断すると、第1ヴァイオリンが高く鋭いリズムを声高に叫ぶ。
700通に及ぶ一方的なラヴレターはついにカミラの気持ちを変えさせることはできなかった(フツー40歳も年の差がある爺様が真剣に書いた恋文を700通も貰ったらドン引きするぞ)。

ところがこの女性、ヤナーチェクから離れる気持ちはなかったらしいこの女性もボクにはよくわからん。


あ、終わった。


結局今回も最後まで聴いてしまった。

CDはスメタナSQで持っているけど、アルバンベルクSQもいい。

**♪ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第2番 「ないしょの手紙」 JW VII/13 / アルバン・ベルク四重奏団 - YouTube

♪ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第2番 「ないしょの手紙」 JW VII/13 / アルバン・ベルク四重奏団Janacek : String Quartet No. 2, JW VII/13, "Listy duverne" (Intimate Letters) / Alban Berg Quartetアルバン・ベル...

https://www.youtube.com/watch?si=hIfjNlPrJwEbubJ2&v=94I2GtzIrDs&feature=youtu.be

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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