Person-20-1 サン=サーンス 保守的なるものとの苦闘

初版 2024/09/22 22:10

改訂 2024/09/22 23:04

サン=サーンス/ピアノ協奏曲第1番ニ長調OP.17

第1楽章 アンダンテ-アレグロ・アッサイ
第2楽章 アンダンテ・ソステヌート・クワジ・アダージォ
第3楽章 アレグロ・コン・フォーコ

有名な写真だね。このまま千円札かなんかの印刷に使いたい御尊顔です。

いつの頃からサン=サーンスは保守的な作曲家と言われはじめたのだろう。
現代にあって、ボクはそれに異を唱えるつもりはないけれど、23才で書いたのピアノ協奏曲第1番などは、演奏家としての高い評価とは裏腹に当時の19世紀フランスの保守的音楽界の中で作曲家としての評価はあまり高いものであったとはいえない。
彼はこの作品によってフランスにおいて本格的なピアノ協奏曲を書いた最初の作曲家となったのでした。
そのことひとつをとっても、批判はするが実践はしないフランスのがちがちの非保守的情況を垣間見るようなものである。
自国の芸術に対して痛烈な批判を行うフランス人の気質というのだろうか。
ワインひとつをとってもそうだけれど、最もフランスのワインを理解している国は英国であるといわれて久しい。

ちょっとさみしいね。

横道にそれかけたけれど、

この曲の第1楽章は緩やかな序奏から始まり、全体を統一するホルンの動機が第1主題で通される。
全体を通じたバランスがよく、整理されていて近代フランスの室内楽を聞くような馥郁たる香気は漂ってはこない。
純粋に伝統的3楽章形式で作られた極めてノーマルな作風でしょう。
ただ、ここにあるのは、ショパンのような暗くロマンティックで個性的なフレージングはなくて、もっと陽の光の下にある音楽です。
ピアノパートは素晴らしい。
サン=サーンスの精神的な一面を見せるのは第2楽章の沈潜した気分でしょう。
ブリリアントな第1楽章第3楽章の華々しく華麗でピアニスティックな魅力に溢れた楽章とは異なり、ト短調の言葉少なく、心の内側に向いたロマンティックでちょっと深みのある音楽になっています。

オーケストレーションの巧みさは特筆ですね。オルガン風の通奏が暗く重く、時折浮き上がってくるヴァイオリンの風鳴りのような高音を美しく際だたせ、ピアノの音色を浮き上がらせます。
東洋風の趣は後の第5番のエジプト風を彷彿とさせます。
サン=サーンスの書いたピアノ協奏曲の中でこの楽章がもっとも美しい落ち着きを持っています。
ノリは僕がもっとも好きなベートーヴェンの第4協奏曲の第2楽章でしょうか。

最終楽章は一転した二つの主題が交差しつつスピーディに盛り上がって行きます。
華麗なピアノのテクニックがやや曲全体を水っぽくしますが、これがサン=サーンスの持ち味なのですね。
いい曲です。
今ではすっかり保守的な作曲家と評価されているサン=サーンスですが、当時はそのレッテルよりも遙かに先を走っていて、闘うべき相手であったといわれていますが…

ビデオは私のCDと同じ。指揮者はシャルル・デュトワ オケはフィルハーモニア管弦楽団 ピアノは当時のフランスの気鋭パスカル・ロジェです。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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