Person19 フルッチョ・ブゾーニ 超弩級桁外れの協奏曲

初版 2024/09/19 22:49

イタリアの変人(ご免なさい。)その名もダンテ・ミケランジェロ・ベンヴェヌート・フェルッチョ・ブゾーニ やっぱり長い。
だいたいイタリアの現代に近い芸術家はピアニストのミケランジェリも同じだけれど、過去の芸術家の歴史を名前で辿るような名付け方をされることがよくある。
この人の名前なんかその典型だね。
イタリア出身だけれど、主にドイツで活躍した作曲家兼ピアニスト。新古典主義音楽からエレクトリカルな近未来的音楽まで幅広い造形をもっていた。
ブゾーニの国際ピアノ・コンクールは彼の名前を冠した音楽コンクールとして古くから有名だけど、クライバーンと違って本人の功績が音楽コンクールの価値を決めている。
でも、最近はコンクールが激増したためにピアニストの質を絞るためか2年に一度になっているようだ。1年目に予選をやって、次の年に本選を行うというスタイルが定着した。
編曲や校訂でもかなりなことをやっていて、最も有名なのはバッハのシャコンヌでしょうね。
このトランスクリプションはピアニストにとってバッハの最も完璧な音楽をピアノで弾くことが出来るのだから。
でも、この人はピアニストでもあったから自分で作った協奏曲も残している。
それがこの曲なんだけど、これは作品としては空前絶後のとんでもない傑物だ。

第1楽章 アレグロ ドルチェ エ ソレーネ(プロローグ)
第2楽章 ヴィヴァーチェメンテ マ センツァ フレッタ(ペッツォ・グラツィオーソ)
第3楽章 アンダンテ ソステヌート ペンソーソ(ペッッォ・セリオーソ)
第4楽章 ヴィヴァーチェ イン ウン テンポ(アレ・イタリアーナ)
第5楽章 合唱 ラルガメンテ

さて、このとんでもないピアノ協奏曲は全部で上記5楽章からなる。
第5楽章
には男声合唱が登場する。
その合唱の歌詞がどうやらアラーの神をあがめるものらしく、イタリアの音楽家にあるまじき所業だね。
A・エーレンシュレーヤーの戯曲『アラジン』をモチーフとした総合芸術構想は幻に終わったけれど、残滓が第5楽章に残ったのだと言える。ひどい言い方かも知れないけれど、楽章間の有機的関連性はあまりないのだから。
第2楽章
第4楽章にはイタリア民謡がテーマになっているし、全体としては後期ドイツロマン主義的な印象がある。(この点で彼のヴァイオリン・ソナタはいわゆる新古典主義とかに分類されるブラームスと一緒に演奏される
これではイタリアからもドイツからも批判されそうだね。
第3楽章
は非常に重厚でワグナーを思わせる。その中でピアノは両手に均等なエネルギーを必要とし、ここで力尽きそうな感じがする。
この楽章はブゾーニの才能の大きさがよく出ていて凄いアンダンテです。
このまま行けばいいのにね。
意地悪くいえばドイツ後期ロマン派の重厚さとイタリア民謡のカンタービレ、アラーへの祈りとなにやらごった煮風ヴィルトゥオーソ的協奏曲とでもいおうか。
マーラーもかくやという長さにはとてもじゃないがボクとしては付き合いきれるものではなくて、何度となく、挫折した。
最近漸く全曲を聴き通す機会があり、なんとか記事にしてみようかという気力も生まれた。
全曲通奏すると1時間20分に達する。
この間ピアニストは緊張と集中力を持続しなければならない。
とてもではないが、そんな芸当は何度もできるものではないと思う。
第1楽章はブラームスだって辟易しそうなほど長い導入部があり、ピアノ協奏曲か交響曲か、タイトルを知らずに聴いていたらきっと後者だろうと思うに違いない。
それがいい加減な作り方ではなく、構築的で堂々として重量感のある作品なのです。
力の抜きようがないんだろうね。
あ、イタリア民謡が使われているといっても、軽くないよ。
もの凄い和音のエネルギーが音楽を支配する。
彼が世界に紹介したマックス・レーガーやニールセンの晦渋なものを含んでいる。決してイタリアンではない。
ジャーマンステーキの大盛りを喰ってるみたいで、ここら辺で腹一杯だな。
カデンツァはリストを唸らせた正確な技巧の持ち主が作ったと思い知らされる。
でも、あんまり重厚で高い山が並ぶのでどこが尻やら頭やらはっきりしなくなる。
楽章が進むにつれて次第に曲は近代的になってくる。ワルツにはマーラーが好みそうな皮肉が現れる。
第5楽章を除いて、どの楽章も結構な長さなのでそれぞれを単独でピアノと管弦楽のための第○○楽章とか言って演奏しても良さそうに思う。
ああ、終わった。お疲れ様。も、今日はいいや。
 
まさかと思ったけれど、YouTubeは凄いね。あるんだ、しかもアムランのライブがよく弾くねこんなの。CDは意外に多く出ていて驚いた。ピアニストが潜在的に持っているかもしれないアスリートの血が騒ぐのかしらん。

全曲聴いてみるかい。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

Default