大胆不敵
初版 2023/11/19 13:29
改訂 2023/11/19 13:29
ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調OP.67(リスト編曲版)
第1楽章 アレグロ コン ブリオ
第2楽章 アンダンテ コン モート
第3楽章 スケルツォ:アレグロ
第4楽章 アレグロ
何ともこの曲に関しては大いに敬しまくって遠ざけていたのだけれど、決して嫌いなわけではない。
あまりに作品自体の主張と創造性が一致しているので分析的な解説以外に素人が書くことにあまり意味がないように思える。
同時期のピアノソナタ、例の熱情ソナタにも同じことが言える。
ただ、違うのはこの第5交響曲はのっぴきならない機会があれば聴くだけの集中力はある。
ワインガルトナーでフルトヴェングラーでピエール・モントゥーで、トスカニーニで、ブレーズで、エーリッヒとカルロスのクライバー親子で、クレンペラー、ベーム、カラヤン、マズア、クリュイタンス等々、昔からいろんな指揮者で聴いた。
今ボクが知っている世界の指揮者を知る上でもっとも簡便な指標になってきたのはこの第5交響曲とショスタコーヴィチの第5交響曲だった。
どの演奏にも想い出があるが、不思議と棚から引っ張り出すのはオーケストラ版ではなく、シプリアン・カツァリスとグレン・グールドの二人が録音しているリストのピアノ編曲版だ。
ここで彼らが弾いているのはあくまでもリストのピアノ曲であって、ベートーヴェンそのものではない。
それは重々承知しているのだけれど、この作品にはベートーヴェンが目指した精緻な動機の統一性や、わかりやすい暗から明への展開が堅持されており、オーケストラの中でこの曲がきっかけとなって使用され始めたピッコロ、コントラファゴット、トロンボーンなどの音色の根源が映し出される。
何よりも、ベートーヴェン。これ以前の交響曲製作技法について革新的であり、これ以後の交響曲作成のメルクマールとなった交響曲史上の大胆不敵。一つの主題だけで交響曲なんか誰が作るか?
そして、これらのプロットを苦もなく有機的な流れにまとめ上げるフランツ・リストという怪物。
作曲者の偉大さを熟知しつつ、作曲者が当時のピアノフォルテのスケールいっぱいに広げたオーケストレーションをもう一度ピアノの上に描き直す編曲史上の大胆不敵。
初見で交響曲をすべて逆さまに弾けるという異能(人間じゃないね。)
しかも、このピアノの魔神。盤面をまったく見ずにピアノを弾いていたという弟子達の証言はどうやら事実であったようだ。
ピアノを弾いている彼のポートレートは様々な画家が描いているが、鍵盤に目を落としている絵をまだボクは見たことがない。。
ボクはリスト自身のピアノ曲は晩年の一部を除いてあんまり好きではないのだけれど、個性派揃いの大ピアニストを弟子に従えていたにも拘わらず、彼らの誰一人から師匠の演奏上の欠点が指摘されることなく、異口同音にその鬼神ぶりに対する賞賛が絶えないことなど、人間としての側面(人間だったと仮定?しての話だが)からおおいに興味をそそられている。
そしてその再現を現代に行おうとするピアニスト。
弾いている方も大胆不敵で天才的閃きに満ちている。作曲家の霊感をかぎ分ける脳と再現する指先に趨る純粋な小脳の指令の速さ。とくにグールドは凄い。
第3楽章の一部なんかまるでバッハだね。
旋律線が中心に出てくるピアノ演奏で40分間を押し通し、黙らせる演奏史上の大胆不敵。
大胆不敵のかッたまりである。
ホントにただ、呆れかえるばかりであるね。
全曲聴いて呆気にとられてほしいけどダメなら第3楽章。
ソニーさん他のこの演奏のアルバムはたくさんいろんな組み合わせで出ているけど、ボクはLPのジャケットと同じこのCDのカバーが気に入っていました。シルエット(上:グレングールド、中:ベートーヴェン。下:リスト)
Mineosaurus
古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。
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