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- 3F 昭和のレコード 邦楽編
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山崎ハコ「人間まがい」
山崎ハコさんの5枚目のオリジナルアルバム
この時代にはいわゆるフォークソング出身の
暗い唄が持ち味というシンガーソングライターが多くいらっしゃって
その中で最も有名で成功したのはご存じ中島みゆきさんですよね
何度もここでも書いていますが
ズドーンと暗い唄や哀しい唄大好きな私もちろん好きなのですが
それ以上に後年はまったのがハコさんです。
特に比較的初期のハコさんの唄は単に暗い、哀しいだけではなくて
おどろおどろしさや怖さ、不気味さも併せ持っていました
その怖い部分がピークに達したのが
この「人間まがい」だと個人的に思っています。
ざっくり順に紹介していきたいのですが
オープニングの「誰が呼ぶ」は、まだ比較的軽めでですが
これも結構情念どろどろの内容で
深読みしていけば結構怖い部分がありますがまだまだ軽いジャブです。
でも相変わらずのパワフルな歌いっぷりで
いきなり引き込まれます。
で、2曲目は「きょうだい心中」
きました!いわくつきで「放送禁止歌」ともなってしまった曲ですね。
元々は西日本に伝わる伝承歌をモチーフにした歌ですが
兄妹の近親姦と心中を歌った問題作です。
兄に迫られた妹が「私には男がいます。その男を殺してくれれば女房にでも何でもなります」と約束をし
妹はその男に変装し兄に殺されてしまうという
もはやどろどろでどうにもならない物語です。
この曲、1979年の映画『地獄』の挿入歌としても使われます。
(主題歌はB-5「心だけ愛して」)
またこの映画が不倫(当時的に言えば姦通)の果てに
生まれて捨てられた娘が20年後に生まれた村に戻ってきて
腹違いの兄と近親相姦に陥るというこれがまたどろどろな物語なのです…
いろんな意味で現代ではアウトだろうなぁ…
A-3の「ムラサキの花」で小休止して
続くはA-5の「からす」
個人的にはこの曲が一番怖いと思っているのですが…
ハコさんの力なく切ない「かぁ~」という鳴きまねも怖いですが
泣く子はさらっていくぞという内容の歌詞で
これ…いわゆる口減らしや間引きのことですよねぇ…
ハコさんはこの頃、こういう地方の伝承歌を基にした作品も多く
それが結構また怖い内容のものも多いのです。
歌詞の内容も深読みすれば十分に怖いSですが
基本的にギター1本の弾き語りですが
結構、細かく効果音がバックに入れられていて
これがまた何とも不気味です。
極めつけはラストの赤ん坊の笑い声…かな…
で、さらにB-1は木槌で何かを打ちつける効果音から
あの有名な「呪い」から始まります。
そんな明るいトーンで「コーンコン♪コーンコン♪くぎを刺す~」と歌われると
逆に恐怖マシマシです!
延々とシンプルな歌詞とメロディーが続くところも
非常に効果的です。
もうこれはまず聴いて堪能していただければと思います!
畳みかけるようにタイトル曲の「人間まがい」です。
。。。「まがい」っていうことはもはや人間ではないってことですよね?
この世と別れてみたのはいいけれど
空の上の扉は固く他の人は入れるのに私は入れない!っていう曲です
要は浮遊霊になってしまう唄ですね
なかなかこんなテーマの曲ないと思います。もう最高です!
B-3の「暗闇」もこれも直接的な表現こそないけれど
「もはや現世に戻れない」という内容の曲ですね
そして続いて「三つの花」短い曲で
ほぼハコさんのスキャットで進みます…
歌詞は…
「白い花…生まれた
赤い花…咲いた
黒い花……落ちた」で最後ほぼぶつ切りで終わります
いや本当に怖いから!
ラストは先述した「地獄」の主題歌でもある
「心だけ愛して」
もう映画の内容通り
情欲に溺れてどこまでも堕ちていく曲です
…というわけでハコワールド全開で最後まで突っ走る作品です。
この迷いなく突き抜けた感は本当に最高です。
私、映画もいわゆるドロドロしたジャパンホラーが好きなのですが
「伽椰子」や「貞子」の世界観に近いものを
このアルバムから感じてしまってもうたまりません!
私と同じような趣味の方は絶対このアルバム、ハマると思います!
無性に夜中に一人っきりで聴きたくなる1枚です!
1979年5月21日リリース